読書

静岡・満州・熊本におけるハンセン病者とキリスト教者:杉山博昭『キリスト教ハンセン病救済運動の軌跡』(2009)#2

杉山博昭『キリスト教ハンセン病救済運動の軌跡』大学教育出版、2009年、83–142頁。キリスト教ハンセン病救済運動の軌跡作者: 杉山博昭出版社/メーカー: 大学教育出版発売日: 2009/08/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 「第二章 飯野十…

自然史系資料の保存は誰が担っているか:佐久間大輔「自然史系資料の文化財的価値」(2011)

今年7月に、日本科学史学会生物学史分科会・夏の学校において、「科学史・医学史をめぐる資料とアーカイブズ」といったテーマでのシンポジウム開催を予定しています。そこで、この主題に関連する文献を今後は読み進めていこうと思います。 佐久間大輔「自然…

初期近代における馬のための医療:Curth "The Care of the Brute Beast"(2002)

新年あけましておめでとうございます。2014年は午年ということにちなんで、初期近代における馬への医学に関する論文を読みました。これは10年程前に著されたものですが、著者はこのテーマについて最近単著を出したので、そちらもあわせて読んでおきたいもの…

戦前におけるハンセン病療養所の設置運動とキリスト教者:杉山博昭『キリスト教ハンセン病救済運動の軌跡』(2009)#1

杉山博昭『キリスト教ハンセン病救済運動の軌跡』大学教育出版、2009年、1–82頁。キリスト教ハンセン病救済運動の軌跡作者: 杉山博昭出版社/メーカー: 大学教育出版発売日: 2009/08/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 本書は戦前のハンセ…

ドイツ医学史とナチズム:Rütten "Karl Sudhoff and 'the Fall' of German Medical History"(2004)

Thomas Rütten, "Karl Sudhoff and 'the Fall' of German Medical History," Frank Huisman and John Harley Warner, eds., Locating Medical History: The Stories and their Meanings, Baltimore and London: Johns Hopkins University Press, 2004, pp. 9…

目が見えなくなること、人間であり続けること:足立貴美子「なぜ彼は」(1961)

第4回ハンセン病文学読書会に参加しました。今回は足立貴美子さんによる「なぜ彼は」(1961年)という短編小説を読みました。著者の足立さんは、本作品の舞台である栗生楽泉園(くりゅうらくせんえん;群馬県吾妻郡草津町)の入所者の方でしたが、それ以外の…

人類史のための科学史・医学史:Sarton "Second Preface to Volume XXIII"(1935)

サートンが1935年におこなった医学史に対する批判を読みました。最近、サートンの文明史(あるいは人類史)の構想についての研究論文をいくつか読みましたが、それを踏まえると、サートンのやや単純にも思える図式が理解出来る気がします。 George Sarton, "…

サートンの「科学史」構想と20世紀初頭のベルギーにおける知的ネットワーク:Pyenson & Verbruggen "Ego and the International"(2009)

Lewis Pyenson and Christophe Verbruggen, "Ego and the International: The Modernist Circle of George Sarton," Isis, 100(1), 2009, pp. 60–78. http://www.jstor.org/stable/10.1086/597572 ※ 上記URLから無料閲覧・DL可能 サートン(George Sarton, 1…

19世紀から20世紀初頭における「狂気=神経」の治療:ショーター『精神医学の歴史』(1999)

エドワード・ショーター「第四章 神経」『精神医学の歴史――隔離の時代から薬物治療の時代まで』木村定訳、青土社、1999年、145–181頁。精神医学の歴史―隔離の時代から薬物治療の時代まで作者: エドワードショーター,Edward Shorter,木村定出版社/メーカー: …

19世紀ドイツを中心とした生物学的精神医学の登場とその終焉:ショーター『精神医学の歴史』(1999)

エドワード・ショーター「第三章 初期の生物学的精神医学」『精神医学の歴史――隔離の時代から薬物治療の時代まで』木村定訳、青土社、1999年、93–143頁。精神医学の歴史―隔離の時代から薬物治療の時代まで作者: エドワードショーター,Edward Shorter,木村定…

「国立」の上野動物園における戦利動物のディスプレイ:木下直之「展示される戦利動物」(2009)

木下直之「展示される戦利動物」川口幸也(編)『展示の政治学』水声社、2009年、83–102頁。展示の政治学作者: 宮下規久朗,川口幸也出版社/メーカー: 水声社発売日: 2009/09メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (3件) を見る 今日の日本には…

日本医学図書館と明治期神田の医師・政治家・キリスト教者:堀江幸司「「日本医学図書館」と金杉英五郎」、「「日本医学図書館」」(1985)

明治30(1897)年に設立された日本医学図書館の歴史に関する論文を読みました。日本医学図書館は関東大震災によって幕を閉じることになりますが、その施設は当時の医学者や政治家、キリスト教者と関係のなかで生まれたものであり、非常に興味深い研究対象で…

デカルトにおける形而上学と医学の関係:山田弘明「デカルトと医学」(2004)

とある初期近代医学思想史の授業のアサインメントとして、「デカルト医学」について論じた文献を読みました。なお、デカルトの医学思想の集大成として、『人体の記述 La description du corps humaine』(1648年)がその晩年に記されていますが、本論文には…

アーカイブズ学におけるいくつかの変革と科学アーカイブズ:Anderson "The Organization and Description of Science Archives in America"(2013)

12月6日(金)に迫ったIsis Focus読書会に向けて、自分の担当箇所のレジュメをつくりました。今回の特集は"Ordering the Discipline"です。なお、読書会はどなたでも、(Google+を通じて)どこからでも参加可能ですので、参加希望の方は藤本にまでお気軽にご…

医療宣教における朝鮮人「伝導婦人」の活用:入江友佳子「1910年代朝鮮のセブランス病院における出産・育児に関する医療宣教活動」(2010)

入江友佳子「1910年代朝鮮のセブランス病院における出産・育児に関する医療宣教活動――「伝道婦人」の存在に着目して」『日本の教育史学 教育史学会紀要』53、2010年、69–81頁。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110009554133 ※ 上記リンクより無料閲覧・DL可能 192…

16世紀イタリアの大学における医学と哲学の関係:Schmitt "Aristotle among the physicians" (1985)

とある初期近代医学思想史の授業のアサインメントとして、アリストテレス研究の泰斗チャールズ・シュミットがルネサンス期の医学と哲学の関係について論じた文献を読みました。 Charles B. Schmitt, "Aristotle among the physicians," in A. Wear, R.K. Fre…

ハーヴィにおけるアナトミアの伝統の継承と新たな学知としてのアナトミア:月澤美代子「W・ハーヴィのアナトミアと方法」(2001)

とある初期近代医学史のゼミで、ハーヴィに関する研究文献を読んでいます。第二回目のアサインメントは、月澤美代子先生によるいくつかの論考です。 月澤美代子「W・ハーヴィのアナトミアと方法」『日本医史学雑誌』47(1)、2001年、33–81頁。 ウィリアム・ハ…

疱瘡神祭りにみる信仰の商品化:香川雅信「疱瘡神祭りと玩具」(1996)

香川雅信「疱瘡神祭りと玩具――近世都市における民間信仰の一側面」『大阪大学日本学報』15、1996年、19–45頁。 近世日本の民衆たちがもっていた疱瘡信仰に関する研究は多くあるが、それらは民俗資料を用いたものであっても、歴史資料を用いたものであっても…

非人をめぐる医療文化と近世大坂の社会構造:高岡弘幸「都市と疫病」(1988)

高岡弘幸「都市と疫病――近世大坂の風の神送り」『日本民俗学』175、1988年、20–37頁。 本論文は、近世大坂の非人をめぐる医療文化について、民俗学的な観点に留まらず、当時の社会構造と関連づけることでそれを検討している。具体的に検討されるのは、安永元…

1990年代の医療史研究のサーヴェイ:鈴木晃仁「医学と医療の歴史」(2002)

鈴木晃仁「医学と医療の歴史」社会経済史学会(編)『社会経済史学の課題と展望――社会経済史学会創立70周年記念』有斐閣、2002年、426–439頁。社会経済史学の課題と展望―社会経済史学会創立70周年記念作者: 社会経済史学会出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 20…

ウィリアム・ハーヴィ研究と機械論的科学観・科学革命論:中村禎里『近代生物学史論集』(2004)

とある初期近代医学史のゼミで、ハーヴィに関する研究文献を読んでいます。第一回目は、日本において最も早い時期にハーヴィ研究をおこなった中村禎里氏の本を講読しました。 中村禎里「III ハーヴィをめぐる人たち」『近代生物学史論集』みすず書房、2004年…

対ロシア関係史から見る日本開国史研究の新たな視角:平川新『開国への道』(2008)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、日本開国史をロシアとの対外交渉および当時の日本の政治状況と関連づけて論じた文献を読みました。なお、ロシアの日本進出の背景にあった北太平洋交易ネットワークについては、同じく本書の要約を書いているid:…

北方情報を得るために幕府が利用した情報ネットワーク:浅倉有子『北方史と近世社会』(1999)

浅倉有子「第二章 寛政改革期における北方情報と政策決定」『北方史と近世社会』清文堂出版、1999年、39–76頁。北方史と近世社会作者: 浅倉有子出版社/メーカー: 清文堂出版発売日: 1999/02/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 寛政期の蝦夷地政…

対ロ交渉過程にみる鎖国祖法観の形成:藤田覚『近世後期政治史と対外関係』(2005)

藤田覚「第I部第1章 鎖国祖法観の成立過程」『近世後期政治史と対外関係』東京大学出版会、2005年、3–20頁。近世後期政治史と対外関係作者: 藤田覚出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2005/12メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (2件)…

明治期に西欧に留学した医師たちのプロソポグラフィー:Donzé "Studies Abroad by Japanese Doctors"(2010)

Pierre-Yves Donzé, "Studies Abroad by Japanese Doctors: A Prosopographic Analysis of the Nameless Practitioners, 1862–1912," Social History of Medicine, 23(2), 2010, pp. 244–260. 本論文は、1862年から1912年にかけて、医学を学ぶために海外留学…

蘭方医学と神職の共存:長田直子「幕末期の宗教者と医師」(2012)

長田直子「幕末期の宗教者と医師――府中六所宮神職にみる医師・蘭学・種痘の一考察」関東近世史研究会(編)『関東近世史研究論集 2 宗教・芸能・医療』岩田書院、2012年、307–328頁。関東近世史研究論集 2 宗教・芸能・医療作者: 関東近世史研究会出版社/メーカ…

医療マーケット上での競争力向上を目指す在村医:Burns "Nanayama Jundô at Work"(2008)

Susan Burns, "Nanayama Jundô at Work: A Village Doctor and Medical Knowledge in Nineteenth Century Japan," East Asian Science, Medicine, and Technology, 29, 2008, pp. 62–83. http://home.uchicago.edu/~slburns/page1/page1.html 上記著者HPより…

藩による自然資源の利用と地域住民:町田哲「近世後期における徳島藩の御林と請負」(2013)

とある研究会の参考文献として、近世日本の環境史・地域史に関する文献を読みました。 町田哲「近世後期における徳島藩の御林と請負――那賀川中流域を事例に」『鳴門史学』26、2013年、49–83頁。 昨今の環境史的アプローチの広がりもあり、近世日本史研究では…

幕末における庶民から為政者への情報提供:守友隆「幕末期の国内政治情報と北部九州」(2010)

とある研究会の参考文献として、近世日本の政治史に関する文献を読みました。 守友隆「幕末期の国内政治情報と北部九州――筑前国黒崎桜屋・豊前国小倉村屋の「注進」行為について」『交通史研究』72、2010年、25–53頁。 近世期に庶民がおこなっていた情報活動…

18世紀初頭における唐船対策の転換点:松尾晋一「幕府対外政策における「唐人」「唐船」問題の推移」(2010)

とある研究会の参考文献として、近世日本の対外政策に関する文献を読みました。 松尾晋一「第7章 幕府対外政策における「唐人」「唐船」問題の推移――「宥和」政策から「強硬」政策への転換過程とその論理」『江戸幕府の対外政策と沿岸警備』校倉書房、2010年…