読書

慶長16年の地震による被害範囲と諸藩の復興事業:蝦名裕一「慶長奥州地震津波の歴史学的分析」(2013)

著者より抜刷をいただきました。ありがとうございます。以下、まとめを。 蝦名裕一「慶長奥州地震津波の歴史学的分析」『宮城考古学』15、2013年、1–17頁。 本論文は、「慶長三陸地震」として知られている慶長16(1611)年の地震について、後年の編纂物など…

牛痘法前後における村の疱瘡対策の変化:東昇「近世肥後国天草における疱瘡対策」(2009)

東昇「近世肥後国天草における疱瘡対策――山小屋と他国養生」『京都府立大学学術報告(人文)』61、2009年、143–160年。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110008138630 ※ 上記リンクより無料閲覧・DL可能 これまで疱瘡に注目した歴史研究は、1849(嘉永2)年に牛痘…

疱瘡患者に対する宗教・医療行為:佐藤文子「近世都市生活における疱瘡神まつり」(2000)

佐藤文子「近世都市生活における疱瘡神まつり――「田中兼頼日記」を素材として」『史窓』57、2000年、119–130頁。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000413826 ※ 上記リンクより無料閲覧・DL可能 宝暦4–5(1754–1755)年に京都で疱瘡が流行した。一ノ宮下鴨神社の…

江戸時代の佐渡における医療環境:田中圭一『病いの世相史』(2003)

田中圭一『病いの世相史――江戸の医療事情』ちくま新書、2003年。病いの世相史―江戸の医療事情作者: 田中圭一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2003/11メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る 本書の著者は、佐渡金銀山の歴史など、主として新潟を…

蝦夷地への感染症襲来とアイヌ医療文化の取り込み:ウォーカー『蝦夷地の征服 1590-1800』(2007)

ブレット・ウォーカー「第七章 蝦夷地の伝染病・医療と変わりゆく生態系」『蝦夷地の征服 1590-1800――日本の領土拡張にみる生態学と文化』秋月俊幸訳、北海道大学出版会、2007年、227–261頁。蝦夷地の征服1590‐1800―日本の領土拡張にみる生態学と文化作者: …

情報化・目録化の整備による博物館へのアクセス保証:水嶋英治「歴史博物館の存在証明」(2007)

AC修了論文用参考文献のメモです。 水嶋英治「歴史博物館の存在証明――欧米に学ぶ管理運営・保存哲学」『歴史評論』683、2007年、19–31頁。 本論文では、今後の博物館やアーカイブズのあるべき姿として、それへのアクセシビリティを保証することに重きが置か…

歴史資料を現代の政策に役立てる?:Johnson & Williams "Using Archives to Inform Contemporary Policy Debates"(2011)

AC修了論文用参考文献のメモです。 Valerie Johnson and Caroline Williams, "Using Archives to Inform Contemporary Policy Debates: History into Policy?" Journal of the Society of Archivists, 32(1), 2011, pp. 287-303. http://www.tandfonline.com…

医学図書館の患者への公開とEBMという考えの浸透:諏訪部直子「医学情報専門家としての医学図書館員の新しい役割」(2005)

AC修了論文用参考文献のメモです。 諏訪部直子「医学情報専門家としての医学図書館員の新しい役割」『情報の科学と技術』55(9)、2005年、369–374頁。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110002829880 ※ 無料閲覧・DL可能 かつての医学図書館は医療専門家に対してのみ…

1960年代アメリカにおける医学史アーカイブズの状況:Blake "Medical Records and History"(1964)

AC修了論文用参考文献のメモです。 John B. Blake "Medical Records and History," American Archivist, 27(2), 1964, pp. 229-235. http://archivists.metapress.com/content/d54gn70748865222/ ※ 無料閲覧・DL可能 本論文は、1963年10月3日に開催された、…

地域の情報センターと生涯学習施設としての公文書館:井上麻依子「市民に向けた文書館普及活動の提案(2007)

アーカイブズ・カレッジの修了論文を執筆していくにあたって、過去の受講生による修了論文で、それがのちに学術誌に掲載されているものを読んでいます。本論文は2005(平成17)年度の修了論文を元にして書かれたものだそうです。こちらも、AC修了論文用参考…

美術館アーカイブズにおける展覧会記録と作品記録の保存・整理:川口雅子「美術館アーカイブズが守るべき記録とは何か」(2012)

アーカイブズ・カレッジ受講のまっただ中ですが、そろそろ修了論文を執筆していかないといけないので、過去の受講生による修了論文で、それがのちに学術誌に掲載されているものを読んでいます。本論文は、国立西洋美術館・情報資料室の川口さんによるもので…

医学史におけるオーラル・ヒストリー研究のサーヴェイ:Tomes "Oral history and the history of medicine"(1991)

Nancy Tomes, "Oral history and the history of medicine," The Journal of American history, 78(2), 1991, pp. 607-617. 医学史という分野におけるオーラル・ヒストリー(以下、OH)は、Peter Olchという先駆者により1960年代より研究が進められてきた。…

科学史におけるオーラル・ヒストリー研究のサーヴェイ:Doel "Oral History of American Science"(2003)

Ronald E. Doel, "Oral History of American Science: A Forty-year Review," History of Science, 41, 2003, pp. 349-378. http://adsabs.harvard.edu/full/2003HisSc..41..349D ※ 上記リンクから無料閲覧・DL可能 科学史という分野では、1950年代後半より…

鉱石をめぐるグローバル・ヒストリー:竹田和夫(編)『歴史のなかの金・銀・銅』(2013)

寄稿者の一人である仲野義文氏(石見銀山資料館・館長)より御恵投いただきました。ありがとうございます。以下、簡単に紹介を。 竹田和夫(編)『歴史のなかの金・銀・銅――鉱山文化の所産』勉誠出版、2013年。歴史のなかの金・銀・銅 -鉱山文化の所産- (ア…

中国地方の歴史を広く知ってもらうために:公益社団法人中国地方総合研究センター(編)『「海」の交流』(2012)

寄稿者の一人である仲野義文氏(石見銀山資料館・館長)より御恵投いただきました。ありがとうございます。以下、簡単に紹介を。 公益社団法人中国地方総合研究センター(編)『「海」の交流――古代から近世までの瀬戸内海・日本海』中国地方総合研究センター…

オーラル・ヒストリーが明らかにする科学コミュニティのみえざるメンバーたち:Chowdhury "A Historian among Scientists"(2013)

8月23日(金)に迫ったIsis Focus読書会に向けて、自分の担当箇所のレジュメをつくりました。今回の特集は「科学、歴史、そして近代インド」です。なお、読書会はどなたでも、(Google+を通じて)どこからでも参加可能ですので、参加希望の方は藤本にまでお…

土地を所有しない身分集団・生業集団への注目:横田冬彦「生業論から見た日本近世史」(2008)

引き続き、とある勉強会で読んでいる近世日本の環境史に関する文献をまとめました。こちらも第一回目の勉強会のアサインメントです。なお、本論文では「環境史」と呼びうる事例(山村や漁村の生業に関する研究)が紹介されていますが、それほど「環境史」と…

人間史と自然史の相互作用への着目:水本邦彦『環境の日本史 4 人々の営みと近世の自然』(2013)

とある勉強会で、近世日本の環境史に関する文献を読んでいます。第一回目は、吉川弘文館から全五巻本として刊行された『環境の日本史』シリーズから、近世史に関連した第四巻の編者の総論などを読みました。 水本邦彦「人々の営みと近世の自然――総論」、「1 …

病者を癒やすという「奇跡」をめぐるイエズス会と中国社会:Laven "The Role of Healing in the Jesuit Mission to China, 1582-1610"(2013)

今週の金曜日に迫った、平岡隆二さんによる駒場科学史講演会「科学伝来――南蛮系宇宙論と近世日本」に少し関連させて、マテオ・リッチによる16–17世紀の中国へのミッションについて論じた文献を読みました。 ・駒場科学史講演会 「科学伝来 南蛮系宇宙論と近…

生活が苦しい女性労働者たちが余儀なくされる売春:メイヒュー『ヴィクトリア朝ロンドンの下層社会』(2009)

明日の駒場科学史研究会では、立教大学博士課程の田村俊行さんに「19世紀英国における伝染病法」とタイトルで報告をお願いしています。その予習もかねて、19世紀半ばのイギリスの下層民に関するルポルタージュを読みました。以下では、特に研究会テーマに関…

ハンセン病・被爆者・キリスト教:風見治「鼻の周辺」(1987)

本日、今回で2回目となるハンセン病文学読書会に参加してきました。今回は風見治さんによる「鼻の周辺」(1987)という短編小説を読みました。 著者の風見治さんは、1932年に長崎市に生まれ、1934年にハンセン病を発症しています。その後、1952年から熊本県…

売春婦の自由から市民の病気からの自由へ:田村俊行「一九世紀イギリスの売春統制」(2012)

来週金曜日に迫りました駒場科学史研究会では、立教大学博士課程の田村俊行さんに「19世紀英国における伝染病法」とタイトルで報告をお願いしています。その予習もかねて、関連する文献を読みました。なお、研究会はどなたでも参加可能ですので、関心があれ…

「国民皆兵主義」という理念と一部の貧者だけの徴兵という実態:一ノ瀬俊也「軍隊と社会」(2012)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、『講座 明治維新』より明治期の徴兵制によって変容する社会の様子を描いた文献を読みました。 一ノ瀬俊也「6 軍隊と社会」明治維新学会(編)『講座 明治維新 5 立憲制と帝国への道』有志舎、2012年、176–200頁…

日清戦争研究のこれまでと新潮流:大谷正「日清戦争」(2012)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、『講座 明治維新』より日清戦争に関する文献を読みました。本講座所収の他の論文に比べて、本論文は研究動向という色合いが強くなっていますので、以下の要約では研究史でキーとなっている文献の紹介と、最近の…

刑罰執行において公儀の慈悲深さを維持する方法:ボツマン『血塗られた慈悲、笞打つ帝国。』(2009)#1

ダニエル・ボツマン氏の著作『血塗られた慈悲、笞打つ帝国。』(原題:Punishment and power in the making of modern Japan)より、邦題の前半部に関連する第2章の部分を読みました。 ダニエル・V・ボツマン「第2章 血塗られた慈悲――幕府のふたつの顔と被差…

イギリスとアメリカにおける博物館のマネジメントとアドミニストレーション:佐々木亨・亀井修(編)『博物館経営論』(2013)

放送大学の博物館経営論の教科書から、イギリスとアメリカにおけるアートマネジメント、アートアドミニストレーションについて紹介した部分を読みました。 竹内有理「事例紹介1:海外の博物館経営(イギリス)」、鈴木一彦「事例紹介2:海外の博物館経営(…

軍拡費捻出をめぐる政府の対応:池田憲輶「松方財政から軍拡財政へ」(2012)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、『講座 明治維新』より松方財政に関する文献を読みました。 池田憲輶「3 松方財政から軍拡財政へ」明治維新学会(編)『講座 明治維新 5 立憲制と帝国への道』有志舎、2012年、87–112頁。講座 明治維新5 立憲制…

教師のための収蔵品活用資料の提供:田尻信壹「イギリスにおける博物館教育」(2010)

田尻信壹「イギリスにおける博物館教育――ロンドン帝国戦争博物館を事例として『富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 教育実践研究』4、2010年、51–64頁。 http://utomir.lib.u-toyama.ac.jp/dspace/handle/10110/3261 ※ 上記リンクから無料閲覧・D…

地方都市の美術館と地域社会との密着化:佐々木宰「イギリスの美術館における教育普及活動(2)」(2010)

佐々木宰「イギリスの美術館における教育普及活動(2)――リバプール、オックスフォード、ケンブリッジの美術館及び博物館、アートギャラリーの事例」『北海道教育大学紀要(教育科学編)』61(1)、2010年、291–302頁。 http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspa…

ナショナル・カリキュラムに準拠した美術館の教育活動:佐々木宰「イギリスの美術館における教育普及活動(1)」(2010)

佐々木宰「イギリスの美術館における教育普及活動(1)――ロンドンの美術館及び博物館、アートギャラリーの事例」『北海道教育大学紀要(教育科学編)』60(2)、2010年、157–171頁。 http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1106 ※ 上記リ…