k_医学史

ハンセン病・被爆者・キリスト教:風見治「鼻の周辺」(1987)

本日、今回で2回目となるハンセン病文学読書会に参加してきました。今回は風見治さんによる「鼻の周辺」(1987)という短編小説を読みました。 著者の風見治さんは、1932年に長崎市に生まれ、1934年にハンセン病を発症しています。その後、1952年から熊本県…

売春婦の自由から市民の病気からの自由へ:田村俊行「一九世紀イギリスの売春統制」(2012)

来週金曜日に迫りました駒場科学史研究会では、立教大学博士課程の田村俊行さんに「19世紀英国における伝染病法」とタイトルで報告をお願いしています。その予習もかねて、関連する文献を読みました。なお、研究会はどなたでも参加可能ですので、関心があれ…

日本科学史学会生物学史分科会・STS Network Japan共催シンポジウム「生物学史と生物教育」(2013年6月30日、於エル・おおさか)

生物学史分科会のシンポジウム「生物学史と生物教育」に参加してきましたので、簡単にその参加記を。 日本科学史学会生物学史分科会・STS Network Japan共催シンポジウム「生物学史と生物教育」(2013年6月30日、於エル・おおさか) http://www.ns.kogakuin.…

報告:藤本大士「近世日本における鉱山労働者の生命と医療政策――産業政策の一環か、領主の慈悲か」「生のガバナンス」研究会・第9回研究会(2013年6月28日、於:京都大学吉田泉殿)

2013–2014年度・科研費挑戦的萌芽研究「生に関するゆるやかなガバナンスのあり方」(研究代表:吉澤剛;KAKENページはコチラ)の活動母体である「生のガバナンス」研究会において、発表させていただきました。以下、簡単にその報告を。 藤本大士「近世日本に…

オーストラリアにおける鉱山労働者の珪肺への補償:Kippen "The social and political meaning of the silent epidemic of miners' phthisis, Bendigo 1860–1960"(1995)

Sandra Kippen, "The social and political meaning of the silent epidemic of miners' phthisis, Bendigo 1860–1960," Social Science & Medicine, 41(4), 1995, pp. 491–499. オーストラリアのヴィクトリア州ベンディゴの金山では、1860年代から1960年代…

医療活動を「副業」としてはじめた公家:米澤洋子「室町・戦国期の山科家の医療と「家薬」の形成」(2013)

米澤洋子「室町・戦国期の山科家の医療と「家薬」の形成――「三位法眼家傳秘方」をめぐって」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、82–129頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文…

細菌学に基づく公衆衛生から社会的な道具としての医学へ:Löwy & Zylberman "Medicine as a social instrument"(2000)

Ilana Löwy & Patrick Zylberman, "Medicine as a social instrument: Rockefeller foundation, 1913-45," Studies in History and Philosophy of Science Part C: Studies in History and Philosophy of Biological and Biomedical Sciences, 31(3), 2000, …

社会集団を「重層」的に「複合」的に捉える:久留島浩「「身分的周縁」から武士身分を問う」(2000)

久留島浩氏の論考から、医師に関する事例に言及したところを中心にまとめました。 久留島浩「「身分的周縁」から武士身分を問う」久留島浩ら(編)『シリーズ近世の身分的周縁 6 身分を問い直す』吉川弘文館、2000年、49–72頁。身分を問い直す (シリーズ近世…

歴史家と他分野の研究者との協働可能性:Albury "Broadening the Vision of the History of Medicine"(2005)

W. R. Albury, "Broadening the Vision of the History of Medicine," Health and History, 7(1), 2005, pp. 2–16. 自然科学系の研究者とは違って、歴史家は研究を一人でおこなうことが多い。しかし、歴史家も色んな分野の人びとと協働して研究をおこなって…

革新主義時代のアメリカにおける公衆衛生:Tomes "Germ Theory, Public Health Education, and the Moralization of Behavior in the Antituberculosis Campaign"(2001)

とあるアメリカの医学史・公衆衛生史のリーディングスより、20世紀初頭の細菌学と公衆衛生の関連について論じた文献を読みました。明日の研究会の予習も少し兼ねて(研究会詳細はコチラ)。 Nancy Tomes, "Germ Theory, Public Health Education, and the Mo…

細菌学理論によって消された階層の違い:平体由美「アメリカ南部公衆衛生行政の展開」(2009)

今週末に開催されるアメリカ政治研究会の予習として、報告者・平体由美さんの過去の論文を読みました。なお、研究会詳細はコチラ。 平体由美「アメリカ南部公衆衛生行政の展開――ロックフェラー衛生委員会と20世紀初頭の鉤虫病コントロール」『アメリカ史研究…

「彰古館」にみる軍隊と医学

本年度の軍事史学会年次大会は陸上自衛隊衛生学校高等看護学院校舎で開催されましたが、ここに併設されている「彰古館」について少し紹介を。これがまた素晴らしかった!場所柄もあり簡単には観覧できないと思いますが、当然ながら軍陣医学関連の面白そうな…

第47回軍事史学会年次大会(2013年6月1日、於:陸上自衛隊衛生学校高等看護学院校舎)

【追記:2013/6/2】当初、彰古館の紹介も本エントリに記載していましたが、見やすさの関係上、別エントリに移しました→コチラ 本日、第47回軍事史学会年次大会(2013年6月1日、於:陸上自衛隊衛生学校高等看護学院校舎)に参加してきましたので簡単にメモを…

江戸時代の人参にみるグローバルヒストリー:西垣昌欣「江戸長崎屋の機能」(2002)

江戸時代における朝鮮人参をめぐる諸政策について調べていたので、関連する部分をメモしました。著者はあまり強調していませんが、江戸時代における人参をめぐる東アジアのネットワークはとても興味深く感じました。 西垣昌欣「江戸長崎屋の機能――文化期にお…

対馬藩と人参貿易:田代和生『近世日朝通交貿易史の研究』(1981)

田代和生「第13章 人参の国内販売」『近世日朝通交貿易史の研究』創文社、1981年、383–399頁。近世日朝通交貿易史の研究作者: 田代和生出版社/メーカー: 創文社発売日: 2002/11メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る 江戸時代における日…

長野における朝鮮人参栽培開始時期をめぐって:斎藤洋一「信濃国佐久地方への朝鮮人参栽培の導入」(1995)

斎藤洋一「信濃国佐久地方への朝鮮人参栽培の導入」大石慎三郎(編)『近世日本の文化と社会』雄山閣出版、1995年、127–153頁。近世日本の文化と社会作者: 大石慎三郎出版社/メーカー: 雄山閣出版発売日: 1995/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件)…

第60回日本科学史学会年会(2013年5月25–26日、於:日本大学商学部)

週末に開催された日本科学史学会・第60回年会(2013年5月25–26日、於:日本大学商学部)の参加メモを簡単に残しておきます。なお、プログラムなどは下記リンクから閲覧可能です。終了 2013年度 総会・第60回年会(2013/4/21最終案内) | 日本科学史学会 中尾麻…

乳児保護についての医学知識と保護施設:南直人「母乳が政治性を帯びるとき」(2013)

南直人「母乳が政治性を帯びるとき――世紀転換期ドイツにおける乳児保護の実態と言説」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、259–283頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研…

森鴎外における近代的知と民俗的知の一体性:野村幸一郎「錯乱と祟りの間」(2013)

野村幸一郎「錯乱と祟りの間――森鴎外『蛇』の問題圏」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、228–258頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版…

要旨:藤本大士「近世後期の秋田藩による医療政策の展開」第114回日本医史学会・第41回日本歯科医史学会(2013年5月12日、於:日本歯科大学)

先月おこなわれた日本医史学会での僕の発表要旨を掲載します。なお、以下に掲載する要旨は、『日本医史学雑誌』「第114回日本医史学会・第41回日本歯科医史学会 合同総会抄録号」59(2)、2013年、269頁に所収されているものと同じものです。 藤本大士「近世後…

「若手医学史研究者が集う会」を組織しました

第114回日本医史学会も無事終わり、拙報告に対して的確なコメントを多く頂くことができ、また、たくさんの医学史研究者と交流でき、非常に充実した二日間を過ごすことができました。 また、今回の医史学会では多くの若手医学史研究者が参加しており、同世代…

第114回日本医史学会・第41回日本歯科医史学会学術大会(2013年5月11–12日、於:日本歯科大学)

第114回日本医史学会・第41回日本歯科医史学会学術大会、2013年5月11–12日、於:日本歯科大学。 第114回日本医史学会で参加・報告して参りました。今回の学会は、はじめての日本歯科医史学会との合同学会であったことに加え、長年理事をつとめていた酒井シヅ…

農村における漢方医学と西洋医学の共存:高久嶺之介「明治前期の村と衛生・病気」(2013)

高久嶺之介「明治前期の村と衛生・病気――京都府乙訓郡上植野村を対象に」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、201–227頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メ…

本家・分家間の医療政策の対立と「御救」:野口朋隆「近世中後期、小城藩主の資質・役割と「生命維持」」(2013)

野口朋隆「近世中後期、小城藩主の資質・役割と「生命維持」」『歴史評論』754、2013年、48–61頁。 佐賀藩の支藩である小城藩は、近世中後期に藩財政の危機に直面していた。そのような窮状を打開するために、小城藩は山内と呼ばれる地域を中心に藩政改革を推…

幕末京都の医療環境:有坂道子「幕末京都における医家と医療」(2013)

有坂道子「幕末京都における医家と医療」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、179–200頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版発売日: 2013…

激動の織豊時代と治療対象の変化:田端泰子「曲直瀬玄朔とその患者たち」(2013)

田端泰子「曲直瀬玄朔とその患者たち」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、130–169頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版発売日: 2013/0…

第三の極としてのアメリカ人医療宣教師:長門谷洋治「近代日本における外人宣教医の研究」(1970)

幕末から明治期における医療宣教師たちの活動をまとめた文献を読みました。当時やって来た医療宣教師たちの略歴や個々人に関する先行研究の紹介など、非常に有益なサーベイ論文であり、このトピックに関心をもつ者にとって必読文献でしょう。 長門谷洋治「近…

報告:藤本大士「江戸時代の公権力と医療――秋田藩領および幕領の鉱山における医療政策の展開」火ゼミ(2013年4月9日、於:東京工業大学)

科学史を専門とする研究者が所属を超えて集う、「火ゼミ」で報告させていただきました。以下の文章は『火ゼミ通信』に掲載用のものです。 藤本大士「江戸時代の公権力と医療――秋田藩領および幕領の鉱山における医療政策の展開」火ゼミ(2013年4月9日、於:東…

とあるアメリカ人医療宣教師たちの履歴:佐伯理一郎「幕末及明治に於けるアメリカ醫師の活動に就いて」(1950)

佐伯理一郎「幕末及明治に於けるアメリカ醫師の活動に就いて」『基督教研究』24(1)、1950年、69–76頁。 http://jairo.nii.ac.jp/0027/00021615/en ※ 無料閲覧・DL可 幕末から明治初年に日本にやってきたアメリカ人医療宣教師たちの履歴を紹介したもの。昭和2…

『本草綱目』を準備した宋代の医学発展:島居一康「『本草綱目』に見る中国医療の到達点」(2013)

島居一康「『本草綱目』に見る中国医療の到達点」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、25–44頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版発売日…