「救出された絵画たち――陸前高田市立博物館コレクションから」(於:岩手県立美術館)

 岩手県立博物館では「平成の大津波被害と博物館〜被災資料の再生をめざして」(拙ブログでの紹介はコチラ)が開催されていましたが、一方の岩手県立美術館では「救出された絵画たち――陸前高田市立博物館コレクションから」という企画がおこなわれていたようです。こちらも簡単に鑑賞メモを。

常設展・第4期特集「救出された絵画たち――陸前高田市立博物館コレクションから」於:岩手県立美術館、2013年2月2日〜4月14日。
http://www.ima.or.jp/exhibition/collection/details/910-collection201204.html

 1959年に開設された陸前高田市立博物館は、約15万点の民俗・考古・美術・歴史資料を所蔵していましたが、東日本大震災とその後の津波によりそれら全てが冠水してしまいました。そのなかには、陸前高田市が「カルチャービレッジ構想」の一環として収集していた、同市にゆかりある作家の美術作品150点も含まれていました。そのため2011年7月から9月にかけて、文化庁が主導する文化財レスキュー事業による被災資料のレスキューが進められました。なお、レスキュー現場の統括は全国美術会議によっておこなわれ、その一員である岩手県立美術館も修復活動に参加しています。
 今回は陸前高田市立博物館の美術作品のなかから、修復がおおよそ完了したものが展示されていました。その際、被災時の状態から修復後の状態への変化を写真によって紹介し、また、その修復の具体的な方法の説明が付されていました。今回展示された全25点の作品は油彩画や版画、書、ブロンズなど様々でした。たとえば、畠山孝一《岩・・境》(油彩・画布、1978年頃)は、冠水によって作品表面には砂などの汚れや少量のカビが付着し、裏面には全体的にカビが生じてしまっていました。しかしながら、殺菌・防カビ剤の散布などにより、元の状態をかなりの程度復元することに成功しています。なお、この特集を受けて、特集以外の常設展での展示品は陸前高田にゆかりのある作家(白石隆一や松田松雄など)、および、特集での作家と同時代の岩手に生きた作家の作品が展示されていました。
 最後に簡単に感想を。今回の展示では修復方法などのキャプションは最小限にとどめられているようで、本特集があくまで美術作品の展示であろうとしているという印象を受けました。県立博物館は色々と趣向をこらしてその活動の紹介をおこなっていましたが、県立美術館は作品を飾りなく展示することを通じて、シンプルにかつ直截に鑑賞者の心に訴えようとしているのだろうと感じました。