東日本大震災と映画:宮古市・シネマリーンの活動を中心に

 縁あって、16日・17日と岩手県宮古市にあるシネマリーンさんの被災地上映のお手伝いをしてきました。とても素晴らしい仕事をされていますので、本ブログでも紹介を。
 まず最初にシネマリーンについて。シネマリーンは宮古市唯一の映画館で、三陸でもただ一つの映画館です。市内唯一の映画館ということもあり、そのラインナップは最近の話題作からコナンやドラえもんなど子ども向けの映画までさまざまですが、なかでも特徴的なのは積極的にドキュメンタリー作品を上映している点です。最近では原発関連の作品の上映も多く、たとえば、「祝の島」(2010年、纐纈あや監督)や「ニッポンの嘘 報道写真家・福島菊次郎 90歳」(2012年、長谷川三郎監督)などがあげられます。なお、シネマリーンは開館以来今日に至るまでフィルムでの上映をおこなってきましたが、最近はデジタル化の波によって、その上映が難しくなってきているそうです。実際、全国的にもミニシアターの閉館が相次いでいるらしく、三陸唯一の映画館を守るためにもシネマリーンは機材のデジタル化のための寄付を募っているとのことでした。
 東日本大震災以降のシネマリーンは、あるときは「シネマエール東北」(コミュニティシネマセンター主催)との共催で、またあるときは映画館自身の自発的活動「シネマリーン被災地巡回上映活動」として被災地での上映に取り組んできました。この二年の間に、岩手県沿岸の8市町村で150回以上の巡回上映をおこない、のべ5000人の方々に映画を届けてきたそうです。ただし、このようなボランティアは、地震直後は映画配給会社の映画無料提供などによって可能となっていましたが、最近ではそのような「協力」は少なくなってきているようで、シネマリーンの負担も大きくなっているとのことでした。さらに、2012年9月には映画用フィルムが生産中止となるという発表があり、シネマリーンおよび被災地での上映を継続するためには、一刻も早くデジタル化を進める必要が出てきています。
 今回、僕は二日間にわたってこの被災地上映のお手伝いをさせていただきました。16日は大船渡市にあるリアスホールで「ポケモン2012 キュレムvs聖剣士ケルディオ」の上映のお手伝いをおこないました。今回の上映は、(株)ポケットモンスターのおこなう被災地支援プロジェクト「POKÉMON with YOU」の一環としておこなわれたものでもあったそうです(ちなみに、その活動はすでに200回以上の上映をおこなっているとのことでした)。そのため、ポケットモンスターのスタッフさんたちも多く来ており、僕はほとんどお手伝いすることはありませんでした。笑
 17日は釜石市・青葉ビルで「ふるり」(2005年、小出正雪監督)の上映でした。こちらの上映会は釜石カルチャーリサーチパークが主催し、シネマエール東北などの共催としておこなわれました。釜石カルチャーリサーチパークの佐藤美穂さんは、釜石の文化のブランディング、および、色々な世代の人が集まる場をつくりたいという思いをもって、今回の上映会を企画されたそうです。映画の上映のあとは、佐藤さんと小出監督の他に遠藤ゆりえさん(NPO法人かまいしリンク)と宇津木泉さん(岩手県庁職員・企業支援担当)がゲストとして招かれ、カフェトーク「この街で働くこと暮らすこと」が開催されました。自分の夢がなくなったとしても、また新たな夢を見つければいいじゃない、という趣旨であった映画にあわせ、震災以降の地元=釜石をどうしていくかについて、一時間ほど、フランクに互いの意見を交わしました。とくに決まったトークテーマはなかったようで、幅広い世代の参加者20名ぐらいが自らの経験をベースにしながら、それぞれの「今」と「夢」について語られていました。僕自身はそういった生の体験談をこれまでほとんど聞いたことがなかったため、普段では知り得ない話を聞くことができ、とても勉強になりました。ただ、一参加者として感想を付け加えさせて頂くと、こういった議論は往々にして抽象的なものになりがちで、今回も少しそういった方向に話が流れてしまっていたとも感じました。もちろん、若い世代を中心とする、はじまったばかりの活動であることに鑑み、今回の企画は一定程度の成功をおさめたと言えるのではないでしょうか。今後の活躍を陰ながら応援していきたいと思います。
 以上が今回のシネマリーンの活動、および、今回の上映に関連していた諸団体の活動です。現在の僕にできることは、こういった活動を記録に残し、ひろく人々に共有できる形にすることぐらいしかないと考えています。この記事を通じて、多くの方がそれぞれの活動を知り、互いに意見をぶつけあうことができるきっかけとなればと思います。
 なお、シネマリーンはいつでも上映ボランティアを募集しているらしいので、気になった方がいれば是非コンタクトをとられることをおすすめします。ちなみに、今回は上映のお手伝いと同時に、シネマリーンの櫛桁さんのご厚意により被災地の案内をしていただきました。本当に貴重な経験をすることができたと感じています。この場を借りて御礼申し上げたいと思います。