近代中国ナショナリズムと女性の理想像:陳姃湲「民国初期の新しい女性像「賢妻良母」」(2006)
陳姃湲「第5章 民国初期の新しい女性像「賢妻良母」――1915年〜1919年」『東アジアの良妻賢母論――創られた伝統』勁草書房、2006年、170–191頁。
- 作者: 陳〓@49A8@湲,陳〓湲
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儒教的で封建的なニュアンスをもつと考えられている「良妻賢母」という言葉は、1900年前後に東アジアにおいて広くみられるようになった。日本では1890年代に、中国や朝鮮では1905年頃に使われるようになったこの言葉は、西欧帝国主義や資本主義に対面したそれぞれの地域の歴史的文脈、社会的条件によって様々に変容させられ、利用されてきた。本書はとりわけ中国における「賢妻良母」という語の意味づけに注目し、それが近代ナショナリズムと共振していく様子を描こうとするものである。とくに、第5章では1915年に創刊された『婦女雑誌』に注目し、そこで求められた「賢妻良母」像とナショナリズムとの関連を指摘している。
理想的な故人を顕彰するために用いられることが多い「賢母」という言葉とは明らかに区別され、「賢妻良母」という言葉は現在に生きる女性がもつべき価値規範を示すものであった。たとえば、1915年の『婦女雑誌』には「良妻賢母になるための第一の要素は健康な身体」であると宣言されている。おりしもこの時期の中国では近代女子教育が開始されていたが、『婦女雑誌』は女子学校の参考書として企画編集されていたものであった。そして、そこでは「家政」という新たな価値規範が賞揚されるされるようになったのである。雑誌内の家政コーナーには、これまで女性たちの知の範疇でないとされた、衛生や経済などの近代的知識に関する記事がまとめられ、家を健全に治めるべきことが求められた。そして、このような「家政」は近代ナショナリズムによって正当化され、女性の果たすべき義務であると目されるようになっていく。すなわち、強国の基礎である健全な国民を育むこと、堅実な家庭経営によって堅実な国家経済に益することが、「良妻賢母」の義務として求められるようになったのであった。
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