死体の保存・処理のような博物館の役割:梅棹忠夫『メディアとしての博物館』(1987)
「博物館・図書館情報メディア論」(学芸員資格科目)の参考文献としてあげられていた文献を読みました。30年も前に、博物館をメディア=「情報伝達装置」と捉える視点が提示されていたのですね。
- 作者: 梅棹忠夫
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1987/11
- メディア: 単行本
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本書は国立民族学博物館(1974年創設)の館長をつとめた著者が、1970–80年代に博物館について語り、書き記したものをまとめたものである。その発表媒体は、博物館の講演や新聞・雑誌のインタビューなど、大衆に向けて語れたものばかりであるが、ところどころにある博物館の喩えが面白い。たとえば、さしあたりは使わないモノを蔵に入れるように、博物館にも展示に使われていない多くのモノが収容されている。しかし、蔵にあるモノは必要なときにまた「生きた」状態で利用されなくてはならないが、博物館のモノはいわば「死体」のようなもので、展示するときにはそのモノが生きた時代における意味とは切り離されてしまっている。そのため、博物館の仕事とは、モノ=死体が腐敗・変質しないように、当時の意味を保持し、再構成することであり、死体の処理・保存をおこなうようなことなのである。著者のこのような考えは、博物館という名前に対する疑問としてもあらわれている。つまり、博物館はただモノを陳列する場所ではなく、モノがもつ情報を観覧者に提供する場所なのである。その意味では博物館は情報伝達装置とも呼びうるし、あるいは博情報館と呼ぶ方が適切であるとさえ言う。このように、まだまだ大衆にとって馴染みの薄かった博物館を、著者はさまざまなたとえを駆使して、わかりやすく語ろうとするのであった。
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