イギリスとアメリカにおける博物館のマネジメントとアドミニストレーション:佐々木亨・亀井修(編)『博物館経営論』(2013)
放送大学の博物館経営論の教科書から、イギリスとアメリカにおけるアートマネジメント、アートアドミニストレーションについて紹介した部分を読みました。
竹内有理「事例紹介1:海外の博物館経営(イギリス)」、鈴木一彦「事例紹介2:海外の博物館経営(アメリカ)」佐々木亨・亀井修(編)『博物館経営論』放送大学教育振興会、2013年、235–262頁。
- 作者: 佐々木亨
- 出版社/メーカー: 放送大学教育振興会
- 発売日: 2013/03/01
- メディア: 単行本
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イギリスの博物館経営の特徴としては、民間と国との両方にその財源を頼っているという点である。ヨーロッパでは多くの博物館が国に資金を大きく依存し、アメリカでは民間の支援によって経営がおこなわれている。その点、イギリスは両者の中間的な存在であると言える。このような経営がおこなわれるようになった背景には、サッチャー政権において公共事業が民営化されていったことにあった。たとえば、1984年に「ビジネス・スポンサーシップ・インセンティブ・スキーム」が実施され、博物館が民間から得た協賛金と同額のお金を国も援助する制度がつくられた。1992年には公共事業と民間企業のパートナーシップを推進する「プライベート・ファイナンス・イニシアチブ」が実施されている。さらに1999年には「ビジネス・デベロップメント・ユニット」が組織され、パブリックプログラムをおこなったり、コレクション画像の貸し出しにより、収入の増加をはかったのである。とりわけ、利用しやすさ・親しみやすさをブランド戦略として掲げたテート・モダンは、こういった民間との共同の事例の中で最も成功した例であると言われている。
アメリカの博物館経営の特徴として、メトロポリタン美術館やボストン美術館などの有名な美術館の多くが民間の非営利組織によって運営されているという点である。つまり、行政からの資金援助に大きく依存せず、自らが主体となって資金調達をおこなっているのである。このような活動を担っているのが、アメリカの美術館の多くがもつ「デベロップ部門」である。そこに配置されるのは大学で博物館経営などを専門的に学んだ専属スタッフであり、美術館の会員リストに基づき寄付を募ったり、政府や財団による助成金に応募したりするのである。とりわけ、助成金の応募においては、学芸部門や教育部門のスタッフと連携し、プロポーザルをできる限り多く提出する。それらが採用されることはもちろん多くないため、それに係る苦労も多いが、応募を繰り返すことで、展示プログラムがより洗練されていくというメリットももつのである。
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