中国地方の歴史を広く知ってもらうために:公益社団法人中国地方総合研究センター(編)『「海」の交流』(2012)

 寄稿者の一人である仲野義文氏(石見銀山資料館・館長)より御恵投いただきました。ありがとうございます。以下、簡単に紹介を。

公益社団法人中国地方総合研究センター(編)『「海」の交流――古代から近世までの瀬戸内海・日本海』中国地方総合研究センター、2012年。

「海」の交流―古代から近世までの瀬戸内海・日本海 (中国総研・地域再発見BOOKS)

「海」の交流―古代から近世までの瀬戸内海・日本海 (中国総研・地域再発見BOOKS)

 本書は、瀬戸内海や日本海に面して生活を営んできた中国地方の人々の歴史を、地元住民だけでなく全国の人々に伝えるために編まれた一般書である。その編集は、中国地方の5県とそれぞれの地域にゆかりのある産業界とで共同してつくられたシンクタンク・中国地方総合研究センターによっておこなわれ、昨年、「中国総研・地域再発見BOOKS」シリーズの第一弾として出版された。3部、12章からなる本書には、実に多様なバックグラウンドをもつ人々が寄稿している。たとえば、福山藩港・鞆の朝鮮通信使との関連を論じる元NHK解説委員の毛利和雄氏や瀬戸内海と戦国武将のつながりを歴史小説のように語る作家の童門冬二氏、あるいは厳島神社について建築史の観点から論じる三浦正幸氏(広島大学大学院)や今日の瀬戸内海ツーリズムを観光地理学的に分析するフンク・カロリン氏(広島大学大学院)らの名前をあげることができるだろう。もちろん、日本史研究者たちも多く寄稿しており、仲野義文氏(石見銀山資料館)による「世界に広がる銀の道」は、16世紀の日本で産出された「銀」が国際市場で取引されたという、この分野で有名なエピソードを紹介することで、一般読者の関心をひこうとしている。しかし、仲野氏はそのような一般的な事例紹介にとどまらず、歴史学における最新の研究成果をその記述に組み入れ、しっかりと一次史料を提示するなど、非常にバランスのとれた記述をおこなっている。