歴史資料を現代の政策に役立てる?:Johnson & Williams "Using Archives to Inform Contemporary Policy Debates"(2011)

 AC修了論文用参考文献のメモです。

Valerie Johnson and Caroline Williams, "Using Archives to Inform Contemporary Policy Debates: History into Policy?" Journal of the Society of Archivists, 32(1), 2011, pp. 287-303.
http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00379816.2011.619696#.UiGYWn8oFZY
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 アーカイブズに残る歴史資料は、歴史研究者が過去の歴史を再構築するためにのみ利用されるべきではない。そういった歴史資料からは、時には現在の政策について何かしらのヒントを得るためにも利用されるべきである。近年、イギリスはそういった試みとして、歴史と政策の共同を推し進めようとしている。2007年にケンブリッジ大学ロンドン大学の研究者が中心となり、「歴史と政策(History and Policy)」というワーキンググループが設立された。このグループは、従来分断されていた歴史家と政策立案者の溝を埋めるべく、歴史研究者たちが歴史資料を利用して、現在の政策にも積極的に発言することを目指すものである。たとえば、その設立メンバーには、『イギリス福祉国家の社会史』などで知られるパット・セインも含まれている。
 このようなプロジェクトに共鳴した英国国立公文書館(The National Archives)は、2008年に「人文学研究会議(Arts and Humanities Research Council; AHRC)」から研究費を獲得し、歴史と政策グループとの共同研究プロジェクトを立ち上げた。そして、歴史学を専攻する大学院生やポスドクなどを集め、実際に歴史資料を用い、彼ら/彼女らが今日の政策にいかなる提言をなしうるかを考えさせるセミナーを2009年から2010年にかけて開催した。その講師として、たとえば、医学史と現代の医療政策を架橋しようとしてきた人物であり、「歴史と政策」の設立メンバーの一人であるヴァージニア・ベリッジ(Virginia Berridge, London School of Hygiene and Tropical Medicine)があげられる。その講義では、彼女がこれまでにおこなってきたHIV/AIDSやアルコール中毒の歴史研究と、それらに関連する現代の医療政策の指針を歴史資料から見出すための手つきが、学生たちに教授されているのであった。

関連リンク・エントリ

History & Policy - Connecting historians, policymakers and the media

イギリス福祉国家の社会史―経済・社会・政治・文化的背景 (MINERVA福祉ライブラリー)

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AIDS in the Uk: The Making of a Policy, 1981-1994

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