「イタリア映画の巨匠、アゴスティの世界を観る語る」(2014年1月14日、於:慶應義塾大学三田キャンパス)
「イタリア映画の巨匠、アゴスティの世界を観る語る――芸術映画・映像美の位相」主催:慶應義塾大学文学部人間科学専攻、慶應義塾大学アートセンター・トランス文化の位相研究会、2014年1月14日、於:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール。
HP:http://blog.art-c.keio.ac.jp/kuac_event/trans-culture-agosti-movie-2014/
「イタリア映画の巨匠、アゴスティの世界を観る語る」という上映会に参加してきました。本当は、イタリア精神医療の父と呼ばれるフランコ・バザーリアを描いた「ふたつめの影」が目当てだったのですが、上映開始時間を間違えてしまい観ることができませんでした。しかしながら、同時上映されていた他の作品も素晴らしいもので、それら作品は監督の意向で商業的な上映会はおこなわれていないようでしたので、とても良い機会となりました。以下、簡単に映画の概要と講演者によるコメントのまとめを。
・「ヴィヴァルディの四季 Le quattro satagioni」(2006年、イタリア、監督:シルヴァーノ・アゴスティ)
「ヴィヴァルディの四季」は、イタリアのヴァイオリニスト、ウート・ウーギが「四季」に注釈を入れながら、ローマ交響楽団とその曲を演奏するというものです。各季節のパートの小休止毎に、ヴィヴァルディがそこで何を表現しようとしているかが簡潔に解説されます。演奏の舞台はアッシジのバジリカ大聖堂です。演奏時の映像は、実際の演奏風景をメインに、リハーサル場面、ジョットのフレスコ画、自然の風景などによって構成されています。僕はほとんどクラシックについての知識がないため、このようなタイプの映像はありがたく、この曲に対する理解を深めることができたと思います。
「カーネーションの卵」は第二次大戦中のイタリアを舞台にした映画で、監督自身の幼少時の経験に基づきながら、戦禍の様子を子ども視点で描くというものでした。物語の舞台となる小さな村にはイタリア・ファシスト党、ナチス・ドイツ、パルチザン、そして連合軍などが入り乱れてやって来ますが、それらの戦闘シーンはそれほど描かれず、あくまで子どもたちの周りで起こったことが中心に描かれます。たとえば、ムッソリーニ政権下ではそれに忠誠を誓い、その政権が倒れたあとは転向し、ベッドの中に身を隠す父、長く続く戦争にくたびれる母、連合国軍兵士と恋に落ちる姉、ドイツ兵に命を狙われる近所のユダヤ人などです。とりわけ、妻を食べた奇人として村人から距離を置かれる老人は、少年たちとの交流のなかで、妻に対する一途な愛情を語り、彼らに心を開いていくのでした。
なお、両映画に対して鷲見洋一氏(フランス文学・映画愛好家・元慶大アートセンター所長)のコメントがおこなわれました。「ヴィヴァルディの四季」に対しては、音楽一家に生まれた自身の経験などの話をはさみながら、アゴスティ監督が一流の音楽家による演奏を見事に映像化していると評していました。「カーネーションの卵」に対しては、それが徹底して子ども目線で描いたことを賞賛していました。映画では所々つながりが明確でない部分がありますが、それがまた子どもの視点に忠実であることをあらわしているとのことでした。ちなみに、鷲見氏はフランス文学専攻ですが、あるときからイタリアの文化へと強く惹かれるようになり、サバティカルではイタリアで在外研究をおこなったほどだそうです。その際、実際に鷲見氏はアゴスティと会って、その人柄に強くひきつけられたとのことでした。アゴスティは現在もヴァチカン近くの映画館で自ら映写をおこないながら、自分の映画をつくったり、訪れて来る若い学生に熱心に映画の指導をおこなっているそうです。そういった活動を評して、彼のような存在がイタリア映画を魅力あるものにしているのだろう、と鷲見氏はおっしゃっていました。
関連リンク・文献
・シルヴァーノ・アゴスティについて - 京都ドーナッツクラブ ホームページ
アゴスティの作品を多く翻訳し、日本に紹介している京都ドーナッツクラブのアゴスティ紹介ページです。彼のバイオグラフィーやフィルモグラフィー、さらには独占インタビューをみることができます。
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