拙著『医学とキリスト教』内容紹介 (4) 2つの教派の躍進

 今月26日に出版される『医学とキリスト教』の内容紹介を全6回に分けておこなっています。第4回目となる今回の記事では、第6・7章を取り上げます。 

  この2つの章では、20世紀に入って医療宣教を大きく発展させた2つの教派に注目しています。それがセブンスデー・アドベンチスト教会アメリカ聖公会です。前者が設立した病院としては東京衛生病院が、後者の設立した病院としては聖路加病院などがあります。それぞれ東京衛生アドベンチスト病院、聖路加国際病院として今日も存続しており、キリスト教系の病院としてよく知られています。1880年代半ば頃から、日本での医療宣教は厳しい時期を迎えていましたが、この2つの教派は20世紀前半に医療宣教を大きく発展させています。
 第8章で取り上げたセブンスデー・アドベンチスト教会は、神戸に神戸衛生園・神戸衛生院を、東京に東京衛生病院をつくっています。それらは水治療法というユニークな治療法で有名になりました。神戸にあった病院には著名人が多く通院・入院していました。たとえば、国際的に知られるキリスト教指導者の賀川豊彦はそこで水治療法を受けています。興味深いことに、セブンスデー・アドベンチスト教会の病院は菜食を奨励しており、この頃の賀川も菜食を実践していました。この部分は本書ではあまり深掘りしていませんが、その後、セブンスデー・アドベンチスト教会はさらに菜食を奨励していきます。同教会がつくったベジタリアン食品製造会社は、今日では三育フーズと呼ばれ、ベジタリアンの間でよく知られています。
 第9章は聖路加病院の20世紀前半の事業を取り上げます。聖路加病院は日本の歴史上で最も大きな成功を収めたキリスト教系の病院と言えるでしょう。その発展に大きく貢献したのがトイスラーという医療宣教師でした。彼はこれまでの医療宣教師の活動を踏まえ、継承できる部分は継承しつつも、これまでの医療宣教師とは大きく異なる方法で病院を発展させていきました。トイスラーの最大の特徴は、彼が様々な業界の有力者と付き合っていた点です。後藤新平(当時逓信相)、大隈重信(当時首相)、渋沢栄一ウイルソン大統領など政財界の要人だけでなく、東京帝国大学の医学部教授などともきわめて良い関係を築いていました。

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