博論から単著出版まで (2) 拙著の出版助成

 前回は人文系一般の出版助成について説明しましたが、今回の記事では私のケースについて紹介したいと思います。

 私は2019年3月に博士号を取得したのですが、同年4月から在外研究をおこなうことになっていたので、出版助成の準備などに十分な時間をとることが出来ませんでした。代わりに在外研究中は、博士論文には入らなかったトピックや博論執筆中に見つけた他の面白い資料などに基づいて、論文の執筆を進めていました。それに加え、博論の1つのチャプターの1つのセクションを膨らませて、論文を書いていました。
 そのため、ポスドク1年目のときは、春先に1つの出版助成への応募をおこなっただけでした。しかし、残念ながら、これは落選してしまいました。その後、その他の出版助成への応募も考えましたが、海外にいるうちにやれることに集中したかったこと、また、海外にいたので出版社とのやりとりにより多くの手間がかかりそうだと考え、ポスドク1年目ではその他の出版助成には応募しませんでした(もちろん、今はコロナ禍の影響で、オンラインでの話し合いをおこなっている出版社も多くあると思いますので、今であれば違うアクションをとっていると思います)。
 ポスドク2年目(2020年4月〜)からは拠点を日本に戻し、愛知県で非常勤講師をはじめました。また、博論提出後にはじめた新たなトピックの研究を進めていました。帰国して少し落ち着いてきたので、出版助成へ応募しようと考え始めました。このとき、やはり出版社による出版助成を優先したいと考え、春に法政大学出版局学術図書刊行助成に応募しました。提出した原稿は博論の原稿そのままでしたが、提出に必要な要旨は、比較的最近の事象(本書のあとがき部分に書いたようなこと)と関連付けて書きました。そして、ありがたいことに秋に受賞の知らせを受け取りました。同局はもともと医学史分野の書籍を数多く出版しておりましたので、受賞を聞いたときは非常に嬉しく思いました。
 この受賞は幸運であったという以外表現が出来ませんが、受賞出来ていなかった場合の次のアクションとしては、出身大学の学術成果刊行助成科研費・研究成果公開促進費に応募することを考えていました。しかし、出版社を探し、見積もりをとってもらうことに時間がかかることから、応募は翌年度になっていた可能性が高いです。科研費研究成果公開促進費は秋頃が締め切りですので、出版社から見積書をつくってもらうためにも、締め切りより数ヶ月前から準備をする必要があると思います。このあたりの出版社側との準備作業については、前回の記事でも紹介した、青弓社矢野未知生さんの記事(およびそこに掲載されたリンク)が参考になるかと思います。

 次回のエントリーでは、拙著が出版されるまでの実際の流れについて書きたいと思います。