『〈伝統医学〉が創られるとき』著者・小田ならさんへのインタビューが公開されました

 『〈伝統医学〉が創られるとき——ベトナム医療政策史』(2022年に京都大学学術出版会、2022年)の著者小田ならさんへのインタビューをおこない、学術書の著者インタビューサイト「ブック・ラウンジ・アカデミア」に掲載されました。

 小田さんには、本書の着想、ベトナムでのフィールドワーク、ベトナム語などの語学学習などについて、約30分お話しいただいております。ブック・ラウンジ・アカデミアのホームページだけでなく、Apple PodcastSpotifyYouTubeGoogle Podcastsなどでも聞けますので、聞いていただけますと幸いです。

 

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『洋学史研究事典』編者・松方冬子さんへのインタビューが公開されました

 洋学史学会監修・青木歳幸、海原亮、沓澤宣賢、佐藤賢一、イサベル・田中・ファンダーレン、松方冬子編『洋学史研究事典』(思文閣出版、2021年)の編者のお一人である松方冬子先生へのインタビューをおこない、学術書の著者インタビューサイト「ブック・ラウンジ・アカデミア」に掲載されました。

 松方先生には、今回の事典が編纂されることになったきっかけ、本事典の特徴(ローカルな視点、グローバルな視点)、海外の研究者や地域の研究者との協力、今後の洋学史研究および洋学史学会の展望などについて、約20分お話しいただいております。ブック・ラウンジ・アカデミアのホームページだけでなく、Apple PodcastSpotifyYouTubeGoogle Podcastsなどでも聞けますので、聞いていただけますと幸いです。

 

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『「患者」の生成と変容』著者・坂井めぐみさんへのインタビューが公開されました

 坂井めぐみさんの『「患者」の生成と変容——日本における脊髄損傷医療の歴史的研究』(晃洋書房、2019年)のインタビューをおこない、学術書の著者インタビューサイト「ブック・ラウンジ・アカデミア」に掲載されました。

 坂井さんには、この研究をはじめたきっかけ、資料調査時のエピソード、出身大学の研究環境、1964年の東京オリンピックパラリンピック、今後の研究テーマなどについて、約20分お話しいただいております。ブック・ラウンジ・アカデミアのホームページだけでなく、Apple PodcastSpotifyYouTubeGoogle Podcastsなどでも聞けますので、聞いていただけますと幸いです。

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ブックラウンジアカデミアで拙著『医学とキリスト教』のインタビューが公開されました

 著者インタビューサイト・ブックラウンジアカデミアにて、拙著『医学とキリスト教』のインタビューをおこなっていただきました。インタビュアーは、アメリカ史・キリスト教史・ジェンダー史などがご専門の石井紀子先生(上智大学教授)です。YouTubeSpotify、各種Podcastなどで聞くことができます。お時間あるときに視聴いただければ幸いです。

 

 


 

 

博論から単著出版まで (3) 出版までの流れ

 前回までの記事では出版助成に応募するまでを書きました。今回は出版助成を獲得し、実際に『医学とキリスト教——日本におけるアメリカ・プロテスタントの医療宣教』として出版されるまでの流れについて書きたいと思います。細かい日にちも書いているので、今後、出版をおこなう方が事前に予定を立てる際に、少しでも役に立てばと思います。
 なお、ご自身の出版経験に関する記事を書いてくださっている他の研究者もおりますので、ここで紹介しておきます。いずれもとても読みやすく、単著出版のイメージをつかむことが出来ます。
 
『債鬼転生——討債鬼故事に見る中国の親と子』知泉書館、2019年)の著者・福田素子さんが、出版するまでの過程について書かれています。
 
『ソヴィエト・ロシアの聖なる景観——社会主義体制下の宗教文化財、ツーリズム、ナショナリズム』北海道大学出版会 、2018年)の著者・高橋沙奈美さんが、博論から単著出版に至るまで、どういった改訂作業などをおこなったかなどを詳しく書かれています。
 また、出版の大まかな流れについては、北海道大学出版会のサイトに「北大出版会の学術書ができるまで」という記事が載っており、キーとなる出来事のタイムラインが紹介されています。著者、出版社、印刷所などそれぞれの立場でやることが書いてあるので、出版に関するイメージをつくっていく上で参考になります。
 私の場合、出版の決定が2020年10月中旬で、実際に本が出版されたのが2021年8月26日でした。この間、2020年の秋学期は非常勤を週に1コマ、特任の研究員のポジションを週に3日やっていました。2021年4月からはありがたいことに学振PDに採用され、春学期には非常勤は入っていませんでした。
 まず、以下にキーとなる日程をまとめます。
・2020年10月中旬〜2021年2月28日、提出用原稿の修正作業
・5月17日〜6月18日、初校ゲラ作業
・6月19日〜7月4日、あとがき執筆、索引事項選出
・7月9日〜7月24日、二校ゲラ作業
・7月27日〜8月1日、念校ゲラ作業
・8月2日〜8月4日、装幀・オビの確認
・8月5日〜8月25日 献本リスト作成、発送
・8月20日〜、広報活動
・8月26日、刊行
 
 以下、拙著の編集過程を具体的にみていきます。
 
  • 2020年10月中旬〜2021年2月28日、提出用原稿の修正作業
 2020年10月11日に法政大学出版局のホームページで学術図書刊行助成の選考結果が発表され、自身の受賞を知りました。その後、担当編集者より連絡が届き、今後のおおよそのスケジュールについて確認がおこなわれました。今回の助成では2021年9月までに出版することが条件でしたので、8月の出版を目指しました。その場合、修正した原稿の提出を2021年3月に入るまでにすればよいということでしたので、締め切りを2月末日に決めました。
 なお、提出をもっと早めれば、その分早く出版できるけれどどうするかというご提案もいただきました。実際、私と同じタイミングで刊行助成を得られた梅田孝太さんは、2021年3月に著作『ニーチェ——外なき内を生きる思想』を刊行されており、私より5ヶ月早く出版されています。私自身は秋学期に少し仕事が多かったので、ゆとりをもったスケジュールが良いと思い、2021年8月の刊行を目指し、予定を組んでもらうことにしました。
 刊行助成審査用の提出原稿(博論)を改稿するにあたって、ありがたいことに原稿の分量を削ることなどは求められませんでした。一方、博論には写真などは入っていませんでしたが、単著には写真を入れてはどうかと提案いただいたため、入れることにしました。Hathi Trust Digital Library国会図書館デジタルコレクションなどの、Public Domainや著作権保護期間満了資料になっている写真から適当なものを探しました。最終的には、それらの写真に加え、聖路加国際病院と東京衛生アドベンチスト病院からも写真を提供していただきました。
 単著用の原稿に書き直すにあたって、鈴木哲也さんと高瀬桃子さんによる『学術書を書く』京都大学学術出版会、2015年)を読みました。同書には、一般に、博論の記述のままでは読みにくいと思われる部分について様々なことが書いてあり、参考になります。もちろん、改稿の方針などについては、担当編集者の方とまずは話し合って、考えを共有しておくことが大事であると思います。
 原稿を修正していくにあたって悩ましかったのは、縦書き・横書きに関してです。担当編集者より本書を縦書きにすることを提案され、私としてはとくにこだわりはなかったので、本文は縦書きにすることにしました(博士論文は横書きでした)。一方、英語の資料を多く引用している関係上、注・参考文献リストを縦書きにしてしまうと読みにくくなると感じたため、その部分は横書きにしました。このあたりのスタイルについては、あらためて他の方の本を調べてみて、隠岐さや香さんの『科学アカデミーと「有用な科学」——フォントネルの夢からコンドルセのユートピアへ』名古屋大学出版会、2011年)の本文が縦書き、注・参考文献リストが横書きというスタイルがとても読みやすいと感じたため、そのスタイルを基本的に踏襲して、原稿をフォーマットしました。
 原稿提出までにおこなった主な変更点は以下の通りです。
・縦書きとするために原稿全体に修正を加えました。まず、本文中の算用数字をすべて漢数字に変更しました。また、本文中の「エンダッシュ(–)」はすべて「波ダッシュ(〜)」に変更しました。ただし、注や参考文献リストなどは横書きのままにしたので、上記の変更は加えませんでした。なお、縦書きをする際の注意事項は、日本エディタースクールページ(PDF)がとても参考になりました。
・博論の各章では、「はじめに」・「小括」という節を設けておりましたが、目次でそれが入っていると、ちょっとくどいようにも感じたので、それらをすべて削除しました。なお、章の最後の節の終わりと小括との境目をわかりやすくするため、セクションブレーカーとして「* * *」(dinkus)を入れました。序論でも節を立てて書いておりましたが、それらを削除しました。代わりに、一部に「* * *」を入れました。
・内容的に大きな変更を加えたのが序論と第7章です。序論の最初の数パラグラフは、より一般に知られていると思われる事柄について書くようにしました。また、博論の第7章の一部をふくらませ、学術誌に投稿したので、その論文を単著の原稿にも組み込みました。
・その他、本文中の誤植や説明不足と思われる箇所を修正していきました。
 以上の修正をおこない、2021年2月28日に原稿を編集者に電子メールで提出しました。提出したファイルは、刊行助成審査用の提出原稿(博論)からの変更箇所がトラックできるものと、それらがすべて反映されたものの2種類(それぞれWordとPDF形式で)でした。
 それに加え、上にあげたような大きな変更箇所をまとめたものを別ファイルにまとめて、担当編集者の方と共有しました。このファイルには、写真の候補やそのリンク、装幀のイメージなどについてもあわせて記しておきました。
 
  • 5月17日〜6月18日、初校ゲラ作業
 2月末に原稿を提出してからは、しばらく原稿からは離れていました。そして、5月17日に初校の校正刷り(ゲラ)のPDFがメールで届き、翌日に初校ゲラ(紙版)が自宅に届いたので、1ヶ月を作業期間として、校正を開始しました。
 このとき、1人の目で間違いを探すのには限界があると思っていたので、研究室の後輩と友人の合計4人にゲラを読んでもらうアルバイトをお願いしました。9章構成でしたので、それぞれにメインで読んでもらう章を指定して、読んでいただきました。この作業では、自分ひとりでは気づけなかっただであろう箇所をたくさん指摘していただき、本当に助かりました。人を増やせば細かいミスの見落としも減るかと思いますが、そのあたりはお財布と相談しながらおこなうのが良いと思います。もちろん、担当編集者の方からもゲラに数多くの重要な指摘をいただいていました。
 6月18日、初校ゲラ(紙版)に修正を書き込んだものを編集者に郵送しました。なお、編集者の方とのミスコミュニケーションを防ぐためにも、修正は「校正記号」などを用いた方が良いと思います。校正記号については、DTP出版の「正しい校正の方法 校正記号表」というページがまとまっていて、参考になりました。
 
  • 6月19日〜7月4日、あとがき執筆、索引事項選出
 初校ゲラを提出してからは、あとがきの執筆、索引の事項の選出作業に進みました。
 索引には、人名を400項目、事項を500項目ほど収録しました。索引項目を選定する作業は想像以上に時間を要する結果となってしまいました。博論には索引をつけていなかったので、この期間に一から作っていくのはなかなかの労力がかかりました。そのため、今後また本を書く機会があれば、索引を早めに準備しようと思いました。索引を早めに作ることのメリットとしては、文章中の統一されていない言葉などに気づくことが出来る点です。実際、私も索引作りの過程で不統一に多く気づき、それを二校ゲラで修正することになってしまいました(こういった修正は、2月末の原稿提出の前に済ませておくべきでしたので、担当編集者の方には多くの手間をかけてしまいました)。
 索引の作り方については、藤田節子さんの『本の索引の作り方』地人書館、2019年)という、その名もズバリな本があるので、参考になります。ただ、本を使う側としては、ある程度索引の件数があった方が便利だと思ったので、少し多めに索引の項目をとりました。一般的な索引のつくり方は、1頁にいくつかのキーワードとなる項目をピックアップしていくことなのかもしれませんが、私の場合は、1頁ごとにキーワードとなりうる言葉を全部抜き出し、1000前後の候補を集めてから、索引に入れるかどうかを選定していくという作業をおこないました。
 7月4日にあとがきをWordファイルで、索引項目をExcelファイルで編集者に提出しました。
 
  • 7月9日〜7月24日、二校ゲラ作業
 7月9日に二校ゲラのPDFを受け取り、翌日に二校ゲラの紙版が自宅に届きました。提出の締め切りは7月26日としていただきました。
 まず、初校ゲラで修正・追加した箇所が適切に反映されているかを確認しました。やはり、初校ゲラに修正・追加した箇所などにはミスが発生しやすいので、その部分を中心にみていくのが重要であると思います。また、索引をつくっていく過程で見つけた言葉の不統一などを修正しました。さらに、全体をざっと読み直しましたが、思った以上に細かいミスや不自然な表現が残っていることに気づきましたので、それも修正しました。7月24日には二校ゲラ(紙版)を編集者に郵送しました。
 なお、7月9日には出版社のホームページで、拙著のページが作られていました。このときはまだ、タイトル、簡単な内容紹介、ISBNなどのみでした。各種サイトからも予約が可能になっておりました。出版社のTwitterでも紹介がはじまっていました。
 
  • 7月27日〜8月1日、念校ゲラ作業
 7月27日に念校のPDFが、翌日に念校ゲラの紙版が自宅に届きました。返却締め切りは8月1日にしていただきました。
 念校とは、印刷所に送る前の最後の段階の原稿です。二校の修正箇所が正しく修正されているか、索引のページ数が適切にとられているかを中心に確認しました。索引のページ数チェックは思った以上に大変でした。数字が羅列してあるのをチェックしていくのは目にかなりの負担がかかります。固有名詞は機械的にとられているので基本的に取りこぼしは起きにくいと思います。一方、同じ名字、夫婦、兄弟姉妹などの人名項目は取りこぼしがより起きやすいかと思います。
 この過程でとくに大変だったのは、やや抽象的な用語を拾い上げる作業です。たとえば、本書で掲げた研究課題の1つであった「医療実践」という用語を、どこまでを含めて索引にとるかに悩みました。また、「医療宣教師」という語は全編にわたって出てくるので、親項目のページは拾わず、子項目として3つの研究課題に関する見出しを立て、それらだけページを拾うようにしました。その該当箇所を読んでいくだけで、本論の議論がある程度追えるかもしれません。
 修正点をWordファイルにまとめ、8月1日に電子メールで編集者に提出しました。
 
  • 8月2日〜8月4日、装幀・オビの確認
 8月2日に装幀とオビの見本が届きました。事前に(2月末の原稿提出時点で)どういった方向性の装幀が良いのか、どういうのはちょっと違うと思うのかを、法政大学出版局から出ている過去の本を参照して、編集者の方に伝えておりました。希望する装幀としては、淵田仁さんの『ルソーと方法』と守博紀さんの『その場に居合わせる思考——言語と道徳をめぐるアドルノ』を伝えていたのですが、ちょうど担当編集者の方がそのデザインを担当していたということで、話がスムーズに進みました。そのため、装幀の見本が届いた際も、最初からかなりイメージと近い提案をしていただけました。オビについても、本書ホームページ上の内容説明や序論から適切な場所を選んでいただきました。
 8月4日に校了しました。これで編集に関する著者側の仕事はすべて終わりです。
 
  • 8月5日〜8月25日 献本リスト作成、発送
 編集作業は終わりましたが、次は献本リストの作成、発送の準備にとりかかります。献本リストについては、隙間の時間を使って、これより前に少しずつ作っていました。何人かの先生が新年度から所属が変わったりしたケースがあったので、その先生方の新しい送付先住所などをこのタイミングでお伺いしました。また、お世話になった先生だけでなく、書評用に献本する学会なども選んでいきました。そして、8月21日にExcelファイルにまとめた献本リストを編集者に送りました。そのリストをもとに、8月25日から出版社の方から発送をおこなっていただきました。
 また、拙著の情報がこの頃から少しずつ広がっていっきました。ありがたいことに、ブックトーク・合評会にお誘いいただき、日程の調整も進めていきました。これらの情報は自身のresearchmapページの「今後の報告予定」という箇所に随時アップデートしていっていますので、よろしければみてみてください。たとえば、ヒロ・ヒライさんが主宰するYouTubeのチャンネル(BHチャンネル)で、拙著が出来るまでのことについて1時間程度お話しいたしました。
 
  • 8月20日〜、広報活動
 本が出版される前後には、このブログで内容紹介記事(全6回)を書いたりして、広報活動をおこなっていきました。また、所属する機関や学会のうち、近刊情報を載せていただけるホームページがある場合はそこに連絡をとりました。たとえば、京都大学洋学史学会ハーバード・イェンチン研究所などで広報していただきました。
 
  • 8月26日、刊行
 8月18日には見本が完成し、8月25日から各書店への発送が開始されました。そして、無事に8月26日に出版となりました。
 
 以上、かなり長文となってしまいましたが、これが拙著の出版に至るまでの大まかな流れでした。今後、出版を目指される方で、何か質問などがございましたら、わかる範囲でお答えいたしますので、お気軽にご連絡ください。

博論から単著出版まで (2) 拙著の出版助成

 前回は人文系一般の出版助成について説明しましたが、今回の記事では私のケースについて紹介したいと思います。

 私は2019年3月に博士号を取得したのですが、同年4月から在外研究をおこなうことになっていたので、出版助成の準備などに十分な時間をとることが出来ませんでした。代わりに在外研究中は、博士論文には入らなかったトピックや博論執筆中に見つけた他の面白い資料などに基づいて、論文の執筆を進めていました。それに加え、博論の1つのチャプターの1つのセクションを膨らませて、論文を書いていました。
 そのため、ポスドク1年目のときは、春先に1つの出版助成への応募をおこなっただけでした。しかし、残念ながら、これは落選してしまいました。その後、その他の出版助成への応募も考えましたが、海外にいるうちにやれることに集中したかったこと、また、海外にいたので出版社とのやりとりにより多くの手間がかかりそうだと考え、ポスドク1年目ではその他の出版助成には応募しませんでした(もちろん、今はコロナ禍の影響で、オンラインでの話し合いをおこなっている出版社も多くあると思いますので、今であれば違うアクションをとっていると思います)。
 ポスドク2年目(2020年4月〜)からは拠点を日本に戻し、愛知県で非常勤講師をはじめました。また、博論提出後にはじめた新たなトピックの研究を進めていました。帰国して少し落ち着いてきたので、出版助成へ応募しようと考え始めました。このとき、やはり出版社による出版助成を優先したいと考え、春に法政大学出版局学術図書刊行助成に応募しました。提出した原稿は博論の原稿そのままでしたが、提出に必要な要旨は、比較的最近の事象(本書のあとがき部分に書いたようなこと)と関連付けて書きました。そして、ありがたいことに秋に受賞の知らせを受け取りました。同局はもともと医学史分野の書籍を数多く出版しておりましたので、受賞を聞いたときは非常に嬉しく思いました。
 この受賞は幸運であったという以外表現が出来ませんが、受賞出来ていなかった場合の次のアクションとしては、出身大学の学術成果刊行助成科研費・研究成果公開促進費に応募することを考えていました。しかし、出版社を探し、見積もりをとってもらうことに時間がかかることから、応募は翌年度になっていた可能性が高いです。科研費研究成果公開促進費は秋頃が締め切りですので、出版社から見積書をつくってもらうためにも、締め切りより数ヶ月前から準備をする必要があると思います。このあたりの出版社側との準備作業については、前回の記事でも紹介した、青弓社矢野未知生さんの記事(およびそこに掲載されたリンク)が参考になるかと思います。

 次回のエントリーでは、拙著が出版されるまでの実際の流れについて書きたいと思います。

博論から単著出版まで (1) 出版助成について

 今夏に法政大学出版局より『医学とキリスト教——日本におけるアメリカ・プロテスタントの医療宣教』が出版されました。本書の出版までにサポートしていただいた方にあらためて御礼申し上げます。
 この機会に、博論を提出してから単著として出版するまでにどのようなことを進めたのかについて、3回にわけて書きたいと思います。私自身も、今回の出版を通じて初めて知ったことも多かったので、今後出版を目指される方にとって参考になれば幸いです。
 
 今回の記事では、博論を書籍として出版するための方法について書きたいと思います。人文系では、その方法は大きく4つに分類出来るかと思います。
 
 第一が、出版社による出版助成です。具体的には、東京大学出版会南原繁記念出版賞(締め切りは春)、法政大学出版局学術図書刊行助成(締め切りは春)などがあります。いずれも大学出版会による刊行助成ですが、東京大学、法政大学に所属している方だけでなく、誰でも応募することが出来ます(ただし、南原繁記念出版賞は東大教員の推薦状が必要)。2020年には、晃洋書房の創業60周年企画として「すごい博論大賞」という出版助成があり、各所で話題になりましたが、その年限りの企画であったようです。2021年からは、「KUNILABO五周年記念事業・人文学学位論文出版助成」という事業がはじまり、選ばれた著作は勁草書房より出版していただけるようです。KUNILABOには、この企画の意図などが書かれておりますが、こういった制度は初期キャリアの研究者にとっては大変ありがたく、とても素晴らしいと思いました。
 また、特定の大学に所属する(していた)研究者向けの助成もあります。たとえば、名古屋大学出版会の刊行助成のように、中部11県の大学に所属している研究者という比較的広く募集されているケース、九州大学出版会の刊行助成のように、同出版会に加盟する11の大学の研究者を対象にしているケースもあります。
 このカテゴリの出版助成の最大のメリットは、賞を受賞すれば当該出版社より本が出版されるので、自分で出版社を探す必要がないという点です。
 
 
名古屋大学出版会 学術図書刊行助成(助成の情報はページ最下部にあり):中部11県とは愛知県、岐阜県三重県滋賀県静岡県、長野県、福井県、石川県、富山県新潟県山梨県です。
 
 第二が、出版社の完全なバックアップにより出版することです。数としては非常に少ないかと思われますが、研究者の中には、博論執筆の段階から既に出版社と連絡を取り合っており、出版助成などを得ることなく、出版社側の負担で出版に至っている例もあるようです。
 
 第三が、学内の出版助成です。博論を提出した大学には独自の出版助成がある場合が多いと思います。たとえば、私が所属していた東京大学大学院の場合は、「学術成果刊行助成」という制度がありました。場合によっては、ポスドクや特任研究員のポジションで所属している大学の出版助成、あるいは、自身が過去に所属していた大学の出版助成に応募できることもあります。
 このカテゴリの出版助成では、応募に際して事前に出版社と相談し、出版にかかる経費の見積もりをとってもらう必要があります。
 
 第四が、財団・学会による出版助成です。学術図書の出版にあたって、おそらく最も多くの方が応募するのが科研費・研究成果公開促進費です。財団などによる助成としては、アメリカ研究振興会の出版助成などがあります。また、学会でも出版助成をおこなっているところがあり、たとえば、日本哲学会には「林基金出版助成」があります。
 このカテゴリの出版助成も、申請にあたって出版社から事前に見積もりをとってもらう必要があることが多いです。
 
 
豪日交流基金 出版助成プログラム:対象はオーストラリア研究
一般財団法人 高久国際奨学財団 研究助成:対象は国内外における日本の文化・芸術に関する研究
公益財団法人 りそなアジア・オセアニア財団 出版助成:対象は日本とアジア・オセアニア諸国との各種国際交流事業に関する研究
一般財団法人 新村出記念財団 刊行助成:対象は言語学・日本語学およびこれに関連する研究
公益財団法人 アイヌ民族文化財団 出版助成:対象はアイヌの社会や文化に関する研究
一般財団法人 住総研 出版助成:対象は住関連分野の研究
公益財団法人 花王芸術・科学財団 出版助成:対象は美術研究(美術史、芸術運営研究など含む)
公益財団法人 賀川事業団雲柱社 出版助成:対象は賀川豊彦・賀川ハルに関する研究
公益財団法人 日本生命財団(ニッセイ財団) 出版助成対象は心身の健康、児童少年の健全育成の分野にかかわる研究 、高齢者の福祉等の分野にかかわる研究、人間の生活環境、自然環境の分野にかかわる研究 ※ ただし、2021年現在、募集を休止しているようです。
 
 
 以上のように出版の方法はおおよそ4つに分類することが出来ると思います。このうち最後の2つについては、出版社から事前に見積もりをとってもらうという点が、研究者にとっては高いハードルになるかと思います。初期キャリアの研究者の方で、出版社・編集者の方とつながりをもっている方はきわめて少ないと思います。そのため、多くの場合、指導教官、知り合いの先生、先輩などに編集者の方につないでもらうことが多いと思われます。
 もちろん、出版社に直接企画書を送ってみるという方法もあるかと思います。このあたりは、研究者側からはわからない部分も多いと思いますが、編集者側からの考えが記された記事もあります。たとえば、青弓社の矢野未知生さんはいくつか記事を書いており、いずれも非常に参考になります。
 
 
 次回の記事では、私が応募した出版助成について書きたいと思います。