2012-01-01から1年間の記事一覧

目次:『日本医史学雑誌』58(4)、2012年12月

2012年も今日で最後の一日ですが、本日、『日本医史学雑誌』の最新号(58(4)、通巻1548号)が届きました。今回は原著論文3本、書評4本などの内容になっております。とくに、先日おこなわれたシンポジウム「富士川游先生と富士川英郎先生」(2012年4月28日、…

近代における民間恤救施設の再規定:庄司拓也「明治前期における地域的救済組織の存続過程」(2002)

近世期に設立された民間の救済団体が、明治期になってどのように自らを規定し直していくかについて論じた文献を読みました。そこには、明治新政府の思惑との対立だけでなく、団体内部のメンバーとの衝突があったのです。素晴らしい着眼であり、紹介されてい…

健康をめぐる病理学と医療経済学:鈴木晃仁「健康調査の歴史」(2009)

近代日本における公権力と医療を主題にした論文を読みました。修論用メモです。 鈴木晃仁「健康調査の歴史」近現代資料刊行会(編)『近代都市環境研究資料叢書 2 近代都市の衛生環境(東京編) 別冊(解説編)』近現代資料刊行会、2009年、71-99頁。近代都…

近世後期の医療統制と海防問題:張基善「仙台藩における諸医師とその把握・動員」(2007)

今日もまた修論の主題に関連した論文のまとめです。今回は仙台藩を事例として、藩の医療政策について論じた文献を。 張基善「仙台藩における諸医師とその把握・動員」『歴史』109、2007年、79-108頁。 仙台藩は領内の医師に対して積極的な管理政策をおこなっ…

医学知識に対する幕府の理念と村落における受容の実態:横田冬彦「近世村落社会における<知>の問題」(1998)

近世初期の幕府と地域社会における医療について論じた文献をまとめました。修論用メモとして、以下では著者が公儀による医療をどのように捉えていたかについて中心に記録してあります。 横田冬彦「近世村落社会における<知>の問題」『ヒストリア』159、199…

藩による医療統制と公儀機能の限定性:海原亮「藩領における医療の展開」(2007)

海原亮「第四章 藩領における医療の展開――越前国府中を例として」『近世医療の社会史――知識・技術・情報』吉川弘文館、2007年、138-191頁。近世医療の社会史―知識・技術・情報作者: 海原亮出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2007/09メディア: 単行本 クリ…

施薬・薬師信仰という身体と精神を通じた支配:岩下哲典『権力者と江戸のくすり』(1998)

施薬事業および薬師信仰に着目して、江戸時代の公儀による支配を論じた文献を読みました。平易な文章でありながらも、政治と宗教との関連についてスリリングな洞察を導いており、非常に刺激的な文献でした。修論用メモ。 岩下哲典『権力者と江戸のくすり――人…

統治者・被統治者の闘争モデルと合意モデル:深谷克己「民間社会と百姓成立」(2009)

修論用メモとして、深谷克己氏が提起した「百姓成立」という概念について、氏がそのエッセンスをまとめている論考を読みました。 深谷克己「序 民間社会と百姓成立」『深谷克己近世史論集 1 民間社会と百姓成立』校倉書房、2009年、11-19頁。深谷克己近世史…

性と生の操作可能性:Sengoopta "Medical science, technology, and the body"(2010)

とある授業のアサインメントとして、19世紀の内分泌物に関する医学思想をまとめた文献を読みました。ある医学概念に着目し、それが成立した背景とその論理を追うという非常にオーソドックスな医学思想史の研究です。 Chandak Sengoopta, "Chapter 4 Medical …

義務づけられ、希求されていく健康な身体:D. Porter "The Healthy Body"(2000)

とある授業のアサインメントとして、医学史家であり社会学者であるドロシー・ポーターの文献を読みました。今日まで続く「健康」への強い志向について、その変遷が歴史社会学的に描かれています。 Dorothy Porter, "Chapter 14 The Healthy Body," Roger Coo…

ハンセン病文学と語りの可能性:佐藤健太「ハンセン病療養所で文芸同人誌を読むということ」(2012)

『FLOWORDS』という雑誌にハンセン病に関する短い文章が載っているのを研究室の先輩経由でたまたま知りました。以下、簡単にではありますが、同論考の紹介をさせていただきます。ちなみに、『FLOWORDS』は双葉文学カフェによって編集され、先の第15回文学フ…

「応用科学」という見方と技術と技術史の自律性:Alexander "Thinking Again about Science in Technology" (2012)

今週木曜日にせまったIsis Focus読書会ですが、担当部分をまとめました。なお、読書会についての詳細は下記サイトで。もちろん、どなたでも参加可能ですので、興味のある方は是非。http://d.hatena.ne.jp/hskomaba/20121112/1352725970 http://www.facebook.…

着々と増加するハンセン病への関心:芹澤良子「統計書から見た植民地台湾における医療政策」(2008)

あさって日曜日に、神奈川県立公文書館で「医療をめぐるアーカイブズ」という研究会(日本アーカイブズ学会主催)がおこなわれます。鈴木晃仁先生と芹澤良子氏という、医療アーカイブズに造詣の深いお二人が登壇されるとのことで、既にワクワクしております…

孤児救済に対する公と私の働き:庄司拓也「天保の飢饉下の秋田感恩講による孤児救済」(2000)

修論用メモおよび明日の歴史科学協議会大会(テーマ「伝統社会における貧民救済」)のための勉強もかねて、江戸時代に私的におこなわれた孤児救済について論じた文献を読みました。ちなみに、大会については下記ページ参照。 http://www.maroon.dti.ne.jp/re…

エネルギー観と労働観の変化の並行性:Rabinbach "From Mimetic Machines to Digital Organisms"(2010)

授業のアサインメントとして、18〜20世紀の欧米における労働の概念史について論じた文献を読みました。著者の専門は近代ヨーロッパの思想史ではありますが、本論文は科学史や医学史、さらには社会史や文化史などの話題についても扱っており、非常にスリリン…

20世紀における生と死の社会史:Nicolson ”Death and Birth”(2010)

前回授業のアサインメントとして読んだ文献は、18世紀から19世紀にかけての生・死の世俗化・科学化という主題について論じたものでしたが、今回のものは20世紀における死と生に関する言説をまとめた文献を読みました。20世紀における生と死についてまとめた…

享保改革と医薬政策の展開:大石学「日本近世国家の薬草政策」(1992)

今回も修論用のメモとして、公儀による医療政策について扱った文献を読みました。 大石学「日本近世国家の薬草政策――享保改革期を中心に」『歴史学研究』639、1992年、11-23頁。 幕藩制権力は自らの支配を安定・維持させるため、「公儀」としてさまざまな機…

19世紀における生と死の科学化と世俗化:Laqueur and Cody "Birth and death under the sign of Thomas Malthus"(2010)

とある授業のアサインメントとして、最近注目の『身体の文化史』シリーズから「生と死」の科学化・世俗化について取り扱った文献を読みました。本論考は医学史ではオーソドックスな「生と死」という主題を扱っていますが、そのことを宗教・文化から科学・政…

レジャーとしての動物園に対する大衆の期待、学者の思惑:伊東剛史「19世紀ロンドン動物園における科学と娯楽の関係」(2006)

昨日、オシテオサレテにて伊東剛史さんによる19世紀ロンドンの動物園についての研究が紹介されており、非常に興味をもったので僕も便乗して氏の別論文を読んでみました。 余暇としての動物園に着目することは、イギリス社会経済史上でも非常に斬新な視点です…

学振について:採用内定にかかる謝辞

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本日、学振(DC1)の内定通知をいただきました。非常にありがたく思うと同時に、今回の内定は研究室の方々によるご支援・ご協力の賜物であると実感しております。この場を借りて御礼申し上げます。 思えば、修士課程入学前に研究室の大先輩であるS氏から学振…

ピーター・バーク「情報の乏しかった時代/情報が溢れ出ている時代」(2012年10月14日、於:東洋大学円了記念ホール)

ケンブリッジ大学のピーター・バーク氏が東洋大学で講演されるということでしたので、喜んで行ってきました。説明するまでもなく、バーク氏は稀代のルネサンス研究者で、同時にさまざまな歴史学理論に関する著作も執筆している世界で最も有名な歴史家の一人…

ノーベル賞推薦状にみる日本医学界の動向と科学観:岡本拓司「戦前期日本の医学界とノーベル生理学・医学賞」(2002)

ここ数日ノーベル賞をめぐって世間が賑わっておりますが、今回は戦前の日本におけるノーベル生理学・医学賞に関して検討した文献を読みました。ノーベル賞をめぐる書籍は一般書から専門書まで数多くありますが、岡本先生による一連のノーベル賞研究は基礎文…

目次:『日本医史学雑誌』58(3)、2012年9月

本日、『日本医史学雑誌』の最新号(58(3)、通巻1547号)が届きました。本号も原著論文7本、書評3本と盛りだくさんの内容になっております。また、今井正浩「<ひろば>ガレノスと古代ギリシア・ローマ医学史研究の現在」はこの道の研究者にとっては必読であ…

教育・統治・医療の場としての郷校:工藤航平「地域史からの「郷学」の再評価(2008)

工藤航平「地域史からの「郷学」の再評価――明治三年前橋藩領川島分界の川島書堂創設を事例に」『文書館紀要』21、2008年、77-105頁。 郷校は近世から近代初期にかけての教育機関の一つであるが、これは藩校とも寺子屋とも異なる教育機能を有していた。先行研…

文献表:藤本大士「近世後期の秋田藩における医療政策――公的医療の位置づけをめぐって」洋学史学会月例会(2012年10月7日、於:電気通信大学)

藤本大士「近世後期の秋田藩における医療政策――公的医療の位置づけをめぐって」洋学史学会月例会、電気通信大学、2012年10月7日。 昨日、洋学史学会月例会で発表させていただきました。内容は近世後期の秋田藩の鉱山における医療環境の整備について、秋田藩…

江戸における蘭方医の隆盛と近郊農村医療の変遷:長田直子「近世後期における患者の医師選択」(2004)

本日の洋学史学会月例会の予習もかねて、長田さんの優れた研究論文を読みました。ロイ・ポーター以降、海外では患者の視点からみた医学史研究が数多く提出されましたが、日本の医学史研究では残念ながらそういった視点にたった研究はまだ多くありません。そ…

漢方医の修行と幕末期医師の多様なライフコース:長田直子「幕末期在村における医師養成の実態」(2002)

明日(日付変わって今日)、「近世後期の秋田藩における医療政策」という題目で、洋学史学会月例会で発表させていただくのですが、近世日本の医療史を専攻する長田直子さんもご発表されます。そこで、長田さんが幕末期の医師養成の実態について論じた研究論…

公儀による医師統制の方法:上野周子「紀州藩の医療政策と地域社会」(2007)

上野周子「紀州藩の医療政策と地域社会」『三重大史学』7、2007年、1-20頁。 1980年以降、医療の社会史研究は飛躍的に進展した。とりわけ、在村レベルの蘭方医や地域における民衆への医療の実態がかなりの程度明らかにされた。一方、領主権力が医師に対して…

江戸時代の医学教育施設:山崎佐『各藩医学教育の展望』(1955)

江戸時代の医学教育史に関する基礎的な文献をチェックしました。限定刷であるため、図書館などでの所蔵は多くないかもしれませんが、医学教育の歴史を調べる上では最低限目を通しておくべき著書です。 山崎佐『各藩医学教育の展望』東京:国土社、1955年。各…

医の学統と公儀による統制:海原亮「江戸時代の医学教育」(2012)

江戸時代の医学教育に関する海原亮氏の優れた文献を読みました。このトピックは、かつて山崎佐『各藩医学教育の展望』(国土社、1955年、限定刷)において、先駆的かつ概略的な研究が提示されましたが、その後に続く研究成果はほとんど出ていないというのが…