2012-01-01から1年間の記事一覧

女性高等教育の是非と医学言説の交錯(2):横山美和「19世紀後半アメリカにおける「女性」の構築と科学言説」(2007)

明日は駒場で生物学史研究会「ジェンダーと科学史」(http://goo.gl/BZSI6)が開催されますが、予習もかねて、報告者の横山美和さんの論考を読みました。 横山美和「19世紀後半アメリカにおける「女性」の構築と科学言説――E.クラークの女子高等教育論を中心…

近世後期における鉱山病対策:内藤正中「石見銀山の鉱山病対策」(1989)

内藤正中「石見銀山の鉱山病対策――宮太柱の『済生卑言』」『日本海地域史研究』9、1989年、263-284頁。 江戸時代の鉱山における労働環境は悲惨であった。鉱山内に立ちこめる有毒ガスによって、身体を壊さざるを得なかった鉱山労働者たちは、採掘をはじめてか…

第3回秋田県鉱山サミット「秋田県の鉱山に見る歴史」(秋田県鉱山資料館等連絡協議会・日本鉱業史研究会共催 於:秋田大学鉱業博物館)

秋田に史料調査に来ているのですが、秋田県の鉱山関係者(関連施設職員や技術者、歴史研究者、地域団体など)による市民向けの講演会が、秋田大学鉱業博物館で行われていたため一部聴講してきました。講演会は50名ほどの方が参加され大盛況でしたが、以下で…

寛政改革と藩校:加藤民夫「明徳館の学統をめぐる諸問題」(2002)

秋田藩の藩校・明徳館についてまとめた文献を読みました。修論用メモです。 加藤民夫「明徳館の学統をめぐる諸問題――秋田藩学館制度の一側面」『秋大史学』48、2002年、1-14頁。 江戸時代、藩は藩校を設立することによって藩士の教育をおこなおうとした。鈴…

近世の在村における医師のライフコース:速水融「人々の多彩な生涯」(2002)

10月に速水融『歴史人口学の世界』(岩波書店、1997年)が岩波現代文庫で復刊されるそうですね。速水氏は日本に歴史人口学を導入し、近世日本の社会史研究の水準を飛躍的に上げた方ですが、同時にその分析手法は医療の社会史研究にも大きな洞察を与えていま…

イギリスにおける障害の歴史研究とパブリック・エンゲージメント:Borsay "Disability and Industrial Society" (2012)

英国ウェルカム財団が発行している一般向けの医学史雑誌『ウェルカム・ヒストリー』誌の最新号が届きました。今回はその中からアン・ボルセイ(ウェールズ/スウォンジー大学)による「障害と産業社会」に関する記事を読みました。なお、この記事は他の記事…

医師統制と郷校の役割をあわせもつ施設:下山佳那子「幕末期における郷校の設立」(2011)

「回顧と展望」『史学雑誌』(2012年6月号)にも紹介されていた江戸時代の医療の社会史に関する研究文献を読みました。近世日本の医療施設について考察するとき、それと藩との関係ばかりに注目するのではなく、民衆がどれほど設立にコミットしたかについての…

科学史関連アーカイブズの取り組み:「アーカイブズ・ネットワーク 南から北から」『記録と史料』(2008・2009)

『記録と史料』はアーカイブズ学の動向や各地域での活動を紹介する専門誌として有名ですが、本誌には「アーカイブズ・ネットワーク 南から北から」というコーナーがあり、様々なアーカイブズでの取り組みを紹介しています。今回は特に科学史に関連するアーカ…

医療の正統性と幕府・学統・市場:海原亮「近世都市の「医療」環境と広小路空間」(2005)

江戸時代の医療の社会史を研究する上で、基礎的な文献である海原氏の論考を読みました。特に、公的医療との関連を意識してまとめました。修論用メモ。 海原亮「近世都市の「医療」環境と広小路空間」吉田伸之・長島弘明・伊藤毅(編)『江戸の広場』東京大学…

アーカイブズ・カレッジへの参加を検討している方のために

現在、国文学研究資料館が主催する「平成24年度アーカイブズ・カレッジ長期コース(史料管理学研修会)」を受講しています。 ・平成24年度アーカイブズ・カレッジ | 国文学研究資料館 【2013/5/8追記】平成26年度からカリキュラムの変更により、平成25年…

世界史未履修問題以降の歴史教育:「<特集>いま、歴史教育は何をめざすのか」『歴史評論』(2012)

「<特集>いま、歴史教育は何をめざすのか」『歴史評論』749、2012年、1-72頁。 『歴史評論』の今月号(9月号)では歴史教育に関する特集が組まれていました。最近は、『学術の動向』(16(9)、2011年。)でも同様の企画が組まれており、歴史教育に関する関…

幕府の貧窮民対策としての社会事業:南和男「養生所の成立と実態」(1969)

小石川養生所に関する先駆的かつ基礎的な先行研究を読みました。こちらも修論用メモ。 南和男「第五章 養生所の成立と実態」『江戸の社会構造』塙書房、1969年、294-341頁。江戸の社会構造 (塙選書67)作者: 南和男出版社/メーカー: 塙書房発売日: 1969/08/24…

江戸期における医療教育施設と臨床施設の間の闘争:岩渕佑里子「寛政〜天保期の養生所政策と幕府医学館」(2000)

今回も修論のために幕府による公的な医療施設の歴史についての研究論文を読みました。 岩渕佑里子「寛政〜天保期の養生所政策と幕府医学館」『論集きんせい』22、2000年、40-61頁。 小石川養生所といえば、江戸時代に無料で貧民に医療を提供した施設として、…

名君がつくられるとき:加藤民夫「佐竹義和時代の文教政策」(2005)

修論執筆のため、秋田藩の藩政史に関する文献を読みました。 加藤民夫「佐竹義和時代の文教政策――『御亀鑑』の記事を柱として」『秋田県公文書館研究紀要』11、2005年、1-19頁。 http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1134102834158/files/kiyou11.pdf …

3つの知の様式とその変位:Pickstone "Ways of knowing: an Introduction" (2000)

今年初めにおこなっていたJohn Pcikstone, Ways of Knowing (2000)の読書会のレジュメとして、その序論をまとめていましたが、ブログで紹介するのを忘れていたので、今更ながらアップしておきます。 John V. Pickstone, "1 Ways of knowing: an Introduction…

仁政イデオロギーと病気観の変遷:若尾政希「安藤昌益の病気論」(1992)

若尾政希「安藤昌益の病気論――身体・社会・自然」『歴史学研究』639、1992年、24-35頁。 近年、幕府・藩が果たした公共的な役割が注目を集めるようになり、むき出しの権力をふるうかつての権力者像に対して修正が迫られつつある。例えば、君主のもつ仁君に注…

メディアと精神科医の協働:佐藤雅浩「世紀転換期日本における精神医学的知識の通俗化過程」(2012)

明治〜昭和期の精神医学の社会史を専門とする佐藤雅浩さんの最新論文が出版されていましたので読みました。 佐藤雅浩「世紀転換期日本における精神医学的知識の通俗化過程――新聞メディアにおける精神疾患報道を対象として」『年報 科学・技術・社会』21、201…

大正期の障害児教育:高野聡子・松矢勝宏「川田貞治郎の偉績」(2008)

縁あって、大島にある藤倉学園を訪れています。本施設は川田貞治郎(1879-1959)によって1919(大正8)年に創設された、知的障害者のための施設です。そこで、今回は創始者である川田の履歴について簡潔に記した文献をまとめました。なお、著者の一人である…

労働者の病気と公共の安寧:アルレット・ファルジュ「労働現場の病いと医」(2011)〔1977〕

1980年代に出版された『アナール論文選』が、ここ数年「新版」として出版されています。今回は『アナール論文選 3 医と病い』(1984年)の中から、18世紀フランスの労働者の病気と国家・都市の公共性について論じたものを読みました。 ちなみに、2010年から…

日本におけるアーカイブズの動向:松岡資明『アーカイブズが社会を変える』(2011)

近年の日本におけるアーカイブズの動向について、非常に簡潔にわかりやすく説明した本を読みました。著者は日本経済新聞社の記者である松岡資明さんです。お求めやすい価格になっておりますので、アーカイブズに興味はあるけれど、まだまだ詳しくないって方…

科学史と図像:橋本毅彦「おわりに――科学技術の活動における図像の機能」(2008)

明日、駒場で楠川幸子先生の特別講演がおこなわれますが、発表とも関連する「科学史における図像」というテーマをサーベイした文献を読みました。なお、講演の詳細は以下をご覧下さい。申込不要。もちろん、無料です。 http://researchmap.jp/ev2n52ksg-66/#…

文献リスト:アーカイブズ学(アーカイブズ・カレッジ配付資料を参考に)

国文学研究資料館が主催する「アーカイブズ・カレッジ」(史料管理学研修会 http://goo.gl/32ezJ)が本日より始まりましたが、研修会での配付資料をもとに、アーカイブズ学の文献リストを作成しました。なお、配付資料では70冊ぐらい文献が挙げられていまし…

家の存続と捨て子:沢山美果子「「乳」からみた近世大坂の捨て子の養育」(2011)

8/4に開催される生物学史研究会「いのちの歴史学に向けて――胎児・赤子・捨て子のいのちの近世と現代」の準備として、発表者の沢山美果子さんの論文を読みました。なお、研究会の詳細については下記リンクをご参照ください。 http://researchmap.jp/evm22nbue…

女性高等教育の是非と医学言説の交錯:横山美和「19世紀後半アメリカにおける「月経」をめぐる論争の展開」(2012)

ジェンダーとの関連で科学史・医学史を論じた論文を読みました。なお、本論文の著者である横山さんには、近々、生物学史研究会で発表していただく予定です。こちらについては、詳細が決まり次第このブログでもご案内します。 開催が決定しました!詳細はコチ…

飢饉・疫病の発生と医療への期待:菊池勇夫「飢饉と疫病」(1994)

菊池勇夫『飢饉の社会史』(1994)の飢饉と医療の関係について論じた章を読みました。本書は江戸時代の飢饉が領主・民衆へと与えたインパクトと反応に注目し、「飢饉の社会史」という主題をはじめて検討した文献ですが、医療史とも関係が深い「第七章 飢饉と…

文献リスト:藤本大士「<研究動向>身体障害をめぐる医療の歴史研究」生物学史研究会・夏の学校(2012年6月24日、於:総合研究大学院大学)

【2013/4/6追記】 本報告をまとめたものが『生物学史研究』88号(2013年3月発行)に「<研究動向>身体障害をめぐる医療の歴史――医学史と障害学の対話」として所収されました。そちらもあわせてご覧頂けると幸いです。詳細は下記リンクを。 http://www.ns.ko…

要旨・文献リスト:藤本大士「近世後期の秋田院内銀山における医療環境」日本医史学会総会・学術大会(2012年6月16日、於:獨協医科大学)

先月おこなわれた日本医史学会での僕の発表要旨と文献表を掲載します。なお、以下に掲載する要旨は、『日本医史学雑誌』「第113回 日本医史学会 総会抄録号」58(2)、2012年、184頁に所収されているものと同じものです。また、参考文献は発表当日のレジュメに…

情報を取り扱うことの歴史と文化:Blair "Information Management in Comparative Perspectives" (2010)

読書会のレジュメとして、ブレア『あまりに多くて知ることが出来ない』の「第1章 情報を取り扱うことの比較史」という章をまとめました。なお、読書会の詳細は下記から。 http://d.hatena.ne.jp/hskomaba/20120628 Ann M. Blair, "Information Management in…

解剖学書における図像の役割: Kusukawa "The canon of the human body" (2012)

研究会用のレジュメとして、クスカワ『自然の書物を描く』の「第10章 人間の身体の正準」をまとめました。前章では『人体の構造に関する七つの本』より前に行われた議論が中心でしたが、本章はヴェサリウスの主著である『人体の構造に関する七つの本』を中心…

ルネサンスと図像のもつ機能:Kusukawa "Accidents and Arguments" (2012)

現在行っている研究会用のレジュメとして、クスカワ『自然の書物を描く』の「第5章 偶有性と議論」をまとめました。16世紀の植物学者フックスが古代の植物に関する知識の復興を試みる際に、図像がいかに重要な位置を占めていたかについて説明されています。 …