アーカイブズ・カレッジへの参加を検討している方のために

 現在、国文学研究資料館が主催する「平成24年アーカイブズ・カレッジ長期コース(史料管理学研修会)」を受講しています。

平成24年度アーカイブズ・カレッジ | 国文学研究資料館

【2013/5/8追記】平成26年度からカリキュラムの変更により、平成25年度の受講は「分割履修」ができないそうです。ご注意を。

 アーカイブズ・カレッジ(以下、アーカイブズ・カレッジはACと略記)とはアーカイブズ学について6週間みっちり訓練を受けることができる無料の研修会です。短期コースもあって、そちらでは地方の資料館・文書館で10日間の研修を受けることができます。僕は今年と来年の2年にかけて長期コース・計6週間の授業を分割履修しており、今年は2週間分の授業を受講しています。現在、まだ半分も受講していない段階ですが、これまでに既にアーカイブズ学について多くのことを学ぶことが出来、非常に充実した毎日を過ごせていると思います。
 このように素晴らしい研修会なのですが、残念ながら、ウェブ上にAC受講者の参加記録などがほとんど残っていないようです。そこで、来年度以降の参加を検討する方のために、「アーカイブズ・カレッジって何?どんな人が来てるの?」って感じの概要を簡単にメモしたいと思います。当然これは国文研のオフィシャルなものじゃありませんし、AC参加要綱なども毎年微妙に変わっているようなので、そういった点はご承知おきください。

参加者と先生

 やはり一番気になるところは、どのようなメンバーがACに参加しているかというところでしょう。
 受講者のほとんどは大学院生で、全体の6〜7割を占めています。特に、最も多いのが古代から近現代までの日本史専攻(6〜7割ぐらい)の方で、図書館学・司書学専攻(1〜2割ぐらい)、その他(1〜2割ぐらい)です。ちなみに今年度は「その他」専攻の学生として、僕のような科学史・医学史の専攻の他に、西洋中世美術史や歴史言語学を専攻する方がいらっしゃったようです。あと院生の学年はM1の人が多いようです。
 大学院生以外の参加者は図書館・資料館、企業や大学の史料編纂室の職員の方で、全体の2〜3割ぐらいです。ただ、数としては5、6人ぐらいですので、現場の職員の方が多くいると思っていた僕としては少々もの寂しく思いました。6週間まるまる拘束されることになりますので、そういった方の参加は日程的に難しいのでしょう。実際、特別聴講として1週間だけ受講している現場の資料館の職員の方もいらっしゃいました。
 希有な例としては現役の大学の先生や出版社の編集者の方もいらっしゃいました。もちろん、大学の先生などであれば、上にあげた「特別聴講」として気になったものだけを受講することも可能のようです。ちなみに、その先生は僕と同じように「分割履修」として複数年に分けて受講しているようです。
 さて、このようにバラエティに富んだ構成となっていますが、全受講者の数は大体30人を少し超える程度です(定員の30名プラス前年度からの分割履修者が数名)。名簿上、今年度はのべ37人が履修されているようです。

 一方、講師の先生方は国文研の先生が8人、外部の先生が18人となっております。さらに、埼玉県立文書館、神奈川県立公文書館放送ライブラリー・横浜開港資料館でそれぞれ1日ずつ研修を行いますので、こちらもかなりバラエティに富んだ先生・職員の方々から授業を受けることが出来ます。
 アーカイブズ学という研究領域を構成する学科は多岐にわたり、当然、それぞれの分野にはスペシャリストがいます。ACではそういった専門家の方たちを所属を問わず招聘しており、この点からも非常に充実していることがわかると思います。

授業

 授業は平日5日間、計6週間にわたっておこなわれます。授業内容は「アーカイブズ総論」・「アーカイブズ資源研究」・「アーカイブズ管理研究」の3つに大別することができ、全6科目を受講します。最初に「アーカイブズ総論」という総論・理論の授業を1コマ受けた後、「アーカイブズ資源研究」を1コマ、アーカイブズ調査・収集・移管、整理記述(目録作りなど)、社会貢献、保存管理についての「アーカイブズ資源研究」という科目を4コマ、という感じです。そして最後に、修了論文(詳細は後述)を執筆・提出して、審査に合格すると晴れて修了証が授与されることになります。
 授業は一回90分で、それを毎日11:10から16:50まで(一週目だけ朝9:30開始)受けることになり、そこそこハードです。場所はもちろん立川にある国文研なのですが、立川駅からモノレールで1駅、それから徒歩10分弱と、正直そんなにアクセスはよくないです(笑)。ただ、上にも書いたように、外部の資料館・文書館などに全部で4回研修に行き、現場を実際に見ることができるので、色々と勉強になりますし、なによりも気分転換になります。このように、一本調子の授業にならないよう様々な工夫がなされておりますので、あっという間の6週間となることでしょう。

修了論文と参加動機

 長期履修者の方は修了論文を執筆・提出しなくてはいけません。地域や機関での史料保存の取り組み、アーカイブズ管理の実務上の課題、史料論など、ACの研修内容に関するテーマであればどのようなトピックでも大丈夫です。分量は1万2000字程度です。
 なお、ここで注意しておかなくてはいけないのが、修了論文を書くまでの期間がそれほど長くないということです。例えば今年の場合、7/17から8/3までが前期、8/27から9/14までが後期となり、9/14までに修了論文の題目を提出し、11/28までに修了論文を提出することになっています。このことからもわかるように、一年で履修する場合、授業期間中に学び、知り得たことを十分に活かして論文を書くためには少々時間が短いかもしれません。そのため、一年での履修を考えている方は、受講前までの時点である程度構想を固めておいた方がよいかもしれません。
 ただ、学生には修了論文の執筆アドバイザーとして国文研の先生が一人つき、的確なアドバイスをいただけますので、上記の点についてはあまり神経質になる必要はないでしょう。まわりをみていると、大体、第一週目にアドバイザーと面談をして、どういう方向性で論文を書くかを相談しているようで、修論などを書いていない人であれば、それからでも十分に執筆することができるでしょう。ちなみに、僕は今年と来年の分割履修なので、今年はおおまかな話だけをして、修論執筆後に書いていこうと思っています(^^)/
 あと、本来であれば、これまでの修了者の修了論文のタイトルは、国文研のHPに掲載されているはずなのですが、いくら探しても見つかりませんでした・・・。この点については既に国文研の先生に指摘しておりますので、アップされ次第、こちらでもお知らせさせていただこうと思います。
 【追記】アップしていただきました!下記リンクの募集要項のところに「※ 過去の修了論文題目はこちらをご覧下さい。」とあるところから、データをDLすることができます!
http://www.nijl.ac.jp/pages/event/seminar/2013/archives.html

 ACに応募する際に記入する際には、「修了論文の題目・内容」を簡単に書いて応募することになります。僕がAC受講を希望した理由としては、僕の尊敬する先生からアーカイブズ学の知識を深めることをすすめられたこと、知り合いの資料館員の方にACの良さを聞いたこと、そして、医学関連資料をどのように保存・管理・公開・活用していくかに関心があったことがあげられます。そういったことを、応募の際に書いて、ACに申し込みました。以下、拙い文章ではありますが、その全文を掲載しますので、参考にしていただけると幸いです。

修了希望題目:「日本における医学関連史料の保存・収集に関する考察――英国ウェルカム図書館の活動を参考に」

内容:現在、日本で収集されている医学関連史料は行政文書あるいは医師に関する資料などが中心で、患者(病者)の診療記録などはほとんど収集されていない。しかし、後者のタイプの史料群は海外ではケース・ヒストリーと呼ばれ、医療の社会史研究者にとって最も利用される史料であることからも、その収集・保存は不可欠である。そこで、英国でそういった課題に先駆的に取り組んできたウェルカム図書館などの活動を検討することで、日本における同様のアーカイブズの構築可能性について考察したい。

おわりに

 上でみたように、現在の参加者は日本史学専攻の方が多いですが、日本以外を対象とする歴史研究者の方もアーカイブズ学から多くのことを学ぶことが出来ると思います。個人的には西洋史の方に自分のフィールドとする地域のアーカイブズなどを積極的に日本史の人に紹介してほしいと思っていますし、また、文学や美術史をやっている方にも自分の専門分野特有のアーカイブズなどについても教えて頂きたいと思っています。
 僕は今回ACに参加したことで、本当に色々なことを学ぶことができ、また、アーカイブズ関連の知り合いも増えて、非常に楽しめていますので、一人でも多くの方にACについて関心をもっていただけると嬉しいです。ということで、ご意見・ご質問などございましたら、お気軽にメールでもTwitterでもください(^^)

参考リンク

アーキビストのノート

AC修了者有志による修了論文報告会に関する情報が掲載されているブログです。AC2006年度修了生の佐藤正三郎さんらによって運営されているようです。修了論文報告会は例年3月に開催されるようで、AC修了生でなくても参加可能とのことですので、AC受講を考えている方は一度こちらをのぞいてみるとよいかもしれません。

文献リスト:アーカイブズ学(アーカイブズ・カレッジ配付資料を参考に) - f**t note

今年度のACの参考文献としてあげられた本をまとめています。まずは、この中から興味がありそうなものをピックアップして読んでみるとよいかもしれません。