2012-01-01から1年間の記事一覧

助産婦をめぐる国家と医師の思惑:Homei Aya ”Birth attendants in Meiji Japan” (2006)

Homei, Aya "Birth attendants in Meiji Japan: The rise of a medical birth model and the new division of labour," Social History of Medicine, 19(3), 2006: 407-424. 明治期における医療専門職の再編成はめまぐるしい。伝統的な漢方医は非正規の医療…

男性による介護から女性による介護へ:柳谷慶子「介護役割とジェンダー」(2010)

女性史研究の立場から、介護の歴史的な位置づけを検討している柳谷慶子さんの論文を読みました。『近世の女性相続と介護』(吉川弘文館、2007年)では主として近世日本における介護の実態について検討されていましたが、本論では近代日本における介護役割に…

朝鮮医学の知識・もの・ひとの受容:田代和生「近世前期朝鮮医薬の受容と対馬藩」(1995)

とある授業のアサインメントとして、近世前期の日本における朝鮮医学の受容について書かれた論文を読みました。(都合により、授業には出れていないのですが 笑) 個人的には、倭館(朝鮮・釜山)の朝鮮人医師に、対馬藩の医師が医学稽古を受けに行っていた…

青木歳幸「西洋医学の受容と佐賀藩の位置」洋学史学会特別講演(2012年5月13日、於:電気通信大学)

今回の洋学史学会では、青木歳幸先生(佐賀大学地域学歴史文化センター/専任教授)による特別講演が行われました。発表内容は、青木先生が佐賀大学に着任してから取り組んでおられる医学史における佐賀藩の位置づけについてでした。少々長くなりますが、非…

第3回若手研究者交流会(第40回社会事業史学会・大会 於:日本女子大学)

昨日、社会事業史学会・大会に行ってきました。昨日は若手大学院生を中心とした博士論文の構想発表会が行われ、東北福祉大学、立教大学、長崎純心大学、東北大学に所属する5名の博士課程の学生による発表が行われました。ここでは、3人の方に絞って、内容…

言説分析について(3):香西豊子「解剖台と社会」(2003)

授業のアサインメントとして、言説分析に関する論文を読みました。これまでは、言説分析に関する理論的な議論をした論文を2本読みましたが、今回は言説分析を実際に用いた論文となっています。 香西豊子「解剖台と社会――近代日本における身体の歴史社会学に…

東京大学大学院科学史・科学哲学研究室 2012年度院試勉強会

今年度も、東京大学大学院科学史・科学哲学研究室の受験生有志が、院試に向けて勉強会を開催しているようです。学内・学外問わず、参加可能ですので、受験を考えている方は参加を検討ください。なお、この勉強会は研究室公式の勉強会でなく、あくまで有志に…

言説分析について(2):橋爪大三郎「知識社会学と言説分析」(2006)

とある授業のアサインメントの続きです。本章は、前回読んだ友枝論文と比較して、似ているとされる知識社会学と言説分析の方法論の相違点を強調していたので、わかりやすかったように思えます。しかし、実際に言説分析を使った論文を読まなくては、やっぱり…

患者記録から描かれる医学史:Risse & Warner "Reconstructing Clinical Activities" (1995)

Guenter B. Risse, John Harley Warner, "Reconstructing Clinical Activities: Patient Records in Medical History," Social History of Medicine, 5(2), 1995: 183-205. 医学史研究において、ケース・ヒストリーと呼ばれるタイプの史料群がある。16世紀以…

言説分析について(1):友枝敏雄「言説分析と社会学」(2006)

とある授業のアサインメントとして、「言説分析」の方法論についての文献を読みました。なお、今回の授業では、こういった学説史的な勉強を目的とするのではなく、その方法論を実際に使えるようになることを目的としています。ということで、今後、実際に言…

医学における苦痛への関心:Pernick "The calculus of suffering in 19th-century surgery" (1983)

Martin S. Pernick, "The calculus of suffering in 19th-century surgery," Hastings Center Report, 13, 1983: 26-36. Reprinted in Judith Walzer Leavitt and Ronald L. Numbers, eds., Sickness and Health in America: Readings in the History of Med…

医学の様式、科学・技術の様式:Jewson ”The disappearance of the sick-man from medical cosmology” (1976) & Pickstone ”Commentary” (2009)

医学史における重要論考の一つである歴史社会学者ジューソンの論文を読みました。医学史に社会学的な視点を導入することで、17〜18世紀における医学的世界観を見事に記述しています。それぞれの時代における、医学のパトロン、医療者・患者の位置づけ、医学…

宗教改革と医学というメタファー:那須敬「病としての異端」(2002)

那須敬「病としての異端――17世紀内戦期イングランドにおける神学と医学」石塚久郎、 鈴木晃仁編『身体医文化論:感覚と欲望』慶應義塾大学出版会 、2002年、67–90頁。身体医文化論―感覚と欲望作者: 石塚久郎,鈴木晃仁出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発…

ヴィクトリア・リー「梶雅範論文へのコメント」金森修(編)『昭和前期の科学思想史』合評会(2012年4月14日 於:東京大学本郷キャンパス)

前回のエントリでも書きましたが、先日の金森修(編)『昭和前期の科学思想史』の合評会(金森修編著『昭和前期の科学思想史』(勁草書房、2011年)合評会 - les livres lus au clair de la lune)におけるリーさんのコメントと梶先生のリプライをまとめまし…

藤本大士「<愼蒼健論文へのコメント>昭和漢方の内と外――漢方医学史および植民地科学史の観点から」金森修(編)『昭和前期の科学思想史』合評会(2012年4月14日 於:東京大学本郷キャンパス)

14日(土)に金森修(編)『昭和前期の科学思想史』(勁草書房、2011年)の合評会が行われました。(金森修編著『昭和前期の科学思想史』(勁草書房、2011年)合評会 - les livres lus au clair de la lune) そして、今回、同書所収の愼蒼健先生の論文「第…

科学思想とイデオロギーの関係:坂野徹「日本人起源論と皇国史観」(2011)

坂野徹「第三章 日本人起源論と皇国史観──科学と神話のあいだ」金森修(編著)『昭和前期の科学思想史』勁草書房、2011年、243-310頁。昭和前期の科学思想史作者: 金森修出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2011/10/11メディア: 単行本 クリック: 29回この商…

植民地支配のための昭和漢方:愼蒼健「日本漢方医学における自画像の形成と展開」(2011)

今週末にせまった『昭和前期の科学思想史』合評会のため、僕が担当する愼蒼健先生の論文を要約しました。なお、合評会詳細については、下記エントリをご覧ください。金森修編著『昭和前期の科学思想史』(勁草書房、2011年)合評会 - les livres lus au clai…

医療機器の製作者と利用者:月澤美代子「明治初頭日本における医療技術の移入・受容過程」(2009)

今日の研究会で科学機器(医療機器)に関する雑誌の特集を読んだため、日本における医療機器について書かれたものを読んでみました。 月澤美代子「明治初頭日本における医療技術の移入・受容過程――外科器具「イクラセウル」と「焼灼電気器」を中心に」『日本…

植民地科学における非公式ネットワーク: Harrison "Science and the British Empire" (2005)

Mark Harrison, "Science and the British Empire," Isis, 96(1), 2005: 56-63. ※無料閲覧可:Isis, Vol. 96, No. 1, March 2005 本論考は、ここ数十年多くの注目を浴びている「植民地科学」研究について、大英帝国における科学活動の事例を中心に、これまで…

西洋、日本への対抗としての医学思想:愼蒼健「覇道に抗する王道としての医学」(1999)

今月14日(土)に開催される『昭和前期の科学思想史』合評会に向けて、僕がコメントする愼蒼健先生の関連論文を読みました。なお、合評会詳細はオーガナイザーの奥村大介さんの下記ブログまで。 2012-02-01 - les livres lus au clair de la lune まだまだ申…

医療機器が呼び起こす身体感覚:Arnold & Söderqvist "Medical Instruments in Museums" (2011)

研究室の学生を中心として行っているIsis Focus読書会ですが、研究会用に医療機器に関する論文のサマリーをつくりました。なお、研究会の詳細については、下記リンクをご覧下さい。どなたでも参加を歓迎しますので、興味がある方はお気軽にご連絡ください。 …

付記:研究会における手話通訳派遣の手順などについて

3月24日に行われた生物学史研究会「近代における医療・福祉・障害者」の追記として、今回の研究会を通じて手話通訳について知り得たことを簡単にメモしておきたいと思います。今後、運営側として学会や研究会で手話通訳を依頼する際にお役立て下さい。 研究…

生物学史研究会「近代における医療・福祉・障害者――日本・イギリスを事例として」(2012年3月24日 於:東京大学駒場キャンパス)

本研究会の抄録が『生物学史研究』87号(2012年9月発行)に「<小特集>近代における医療・福祉・障害者(2012年3月生物学史研究会報告)」として所収されました。そちらもあわせてご覧頂けると幸いです。詳細は下記URLまで。(2012/11/12追記) http://www.…

2012 IOS-IASA Joint Workshop of Young Sociologists(2012年3月19・20日、於 台湾高等研究所)

3月19〜20日に台湾高等研究所で開催された「第3回若手社会学者のための国際共同ワークショップ」に参加させていただきましたので、簡単に活動報告をしたいと思います。来年以降の応募者・参加者の方などの参考になれば幸いです。 参加に至るまで 今回のワー…

Fujimoto, Hiro "The medicalization of disability in early modern Japan: the social and intellectual contexts of Chinese and Japanese medicine" (2012) [Woking Paper]

Fujimoto, Hiro "The medicalization of disability in early modern Japan: the social and intellectual contexts of Chinese and Japanese medicine," 2012 IOS-IASA Joint Workshop of Young Sociologists, March 19, 2012. (Conference Paper) 【加筆・…

生物学史研究会「中川保雄『<増補>放射線被曝の歴史』合評会――放射線被曝の歴史をどう読み書くか」(2012年2月11日 於:東京大学駒場キャンパス)

土曜日に行われた生物学史研究会「中川保雄『<増補>放射線被曝の歴史』合評会――放射線被曝の歴史をどう読み書くか」(2012年2月11日 於:東京大学駒場キャンパス)は、約25名の参加者が集まり、大盛況となりました。参加者は科学史業界以外の方も多くみら…