情報化・目録化の整備による博物館へのアクセス保証:水嶋英治「歴史博物館の存在証明」(2007)

 AC修了論文用参考文献のメモです。

水嶋英治「歴史博物館の存在証明――欧米に学ぶ管理運営・保存哲学」『歴史評論』683、2007年、19–31頁。

 本論文では、今後の博物館やアーカイブズのあるべき姿として、それへのアクセシビリティを保証することに重きが置かれるべきであると主張されている。というのも、指定管理者制度の導入により、昨今の日本の博物館(学)では普及活動ばかりが注目されるようになってしまっている。もちろん、著者は教育活動それ自体が悪いと言っているのではなく、お上の一方的な政策や理念を押しつけられ、博物館それ自体の理念や哲学を見失うべきではないと批判しているのである。
 著者が博物館学を学んだイギリス、フランス、チェコスロバキアなどヨーロッパの博物館では、博物館がもつべき理念や哲学が共有されていた。すなわち、博物館の「記録」すなわち目録化・情報化を推し進め、市民に文化へのアクセスを保証することである。たとえば、フランスでは1959年から現在まで文化財の総目録化を国家事業として進めているし、グランゼコールである国立文化財学院では目録づくりに関する分野が独立して存在している。そのような情報化を十分におこなうことで、博物館へのアクセス権を保証すべきであるにもかかわらず、日本ではそれらが未だ整備されていない。そのため、まずは博物館・アーカイブズの「記録」を市民がアクセスできるようにすべきだと主張するのであった。