筑豊石炭鉱業組合・直方会議所や多数の炭坑画:直方市石炭記念館

 実家に帰省しているので、筑豊炭田にまつわる博物館・美術館に行ってきました。その第一弾は、福岡県直方市にある「直方市石炭記念館」です。

直方市石炭記念館

HP:http://www.yumenity.jp/sekitan/sekitan.html
住所:福岡県直方市大字直方692-4
最寄り駅:JR直方駅より徒歩15分
目録:HP左側の「展示資料」に収蔵品リストがあります

 日本の近代化の象徴とされる八幡製鉄所に、石炭というエネルギーの点から貢献していたのが筑豊炭田でした。その炭鉱は筑豊地域に多く所在し、直方市もまた鉱量が多い場所として有名でした。しかしながら昭和の終わりになると、筑豊炭田の多くは閉山となっていきます。そんな中、その歴史を後世に伝えるべく1971(昭和46)年につくられたのがこの直方市石炭記念館です。
 この記念館のメインとなる建物は1910(明治43)年に建立された「本館」です。そこには炭坑の救護隊に関する資料が多くあり、たとえば、九州炭鉱救護隊連盟の直方救護教習所の修了証や実際の救護隊たちの服装などが展示されています。その二階には、石炭を川で運搬するために使われた小舟(「川ひらた」という)の実物が展示されていたり、自信も鉱夫であった山近剛太郎がその運搬の様子を描いた絵も飾ってあります。その右隣にある「別館」には、実際の掘削・探鉱の機械がその一階に、炭坑関連の絵画が二階に展示されていました。なかでも注目は世界記憶遺産に登録された山本作兵衛の炭坑画、そして、作兵衛に先立って炭鉱絵を描いていたとされる井上為次郎(1898–1970)による炭坑画でしょう。今となっては、炭坑画といえば山本作兵衛のものが有名ですが、ここにはそれら以外にも多くの絵が飾られているのが印象的でした。なかでも個人的に気に入ったのは、 小野茂明による「志免炭鉱のボタ山」という作品でした。
 ちなみに、担当の職員さんより非常に丁寧に案内していただいたのですが、その際に他の炭鉱にまつわる博物館にははない当館独自の特徴が三つあげられていました。第一が日本最大級の石炭を展示している点で、その重量は約2トンとのことでした。第二が本館の裏にみえる救護訓練坑道です。これは1922(大正11)年につくられたもので、ここで救護隊たちが鉱山事故に適切に対応するため、日々練習をおこなっていたのでした。第三が本館の建物そのものです。元々、ここは筑豊石炭鉱業組合の直方会議所であり、この場所で炭鉱産業の重役たちが会議をおこなっていたそうです。大正初期にそこでとられた記念写真には、伊藤伝右衛門(大正鉱業)、不破熊雄(筑豊石炭鉱業組合)、白土善太郎(明治鉱業)、中根寿(貝島筑豊鉱山学校設立委員)などの姿がみえます。

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