直方谷尾美術館

 福岡県の筑豊地方では、直方谷尾美術館・嘉麻市立織田廣喜美術館・田川市美術館という3つの公立美術館を拠点として、文化交流を促進する 「筑豊美術館ネットワーク(ちくネット)」という団体があるようです。先日、帰省した際にはその中から田川市美術館を訪問しましたが、今回は直方谷尾美術館に行ってきました。

・直方谷尾美術館(直方市美術館)

HP:http://yumenity.jp/tanio/index.html
住所:福岡県直方市殿町10-35
最寄り駅:JR直方駅

 谷尾美術館の建物はもともと奥野医院という皮膚科の病院でした。奥野医院は1913(大正2)年に竣工し、1940(昭和15)年の火災によって焼失しましたが、翌年に再建され、1990(平成2)年まで病院として開業していました。閉院に伴い、その建物を明治屋産業株式会社の谷尾鉄也氏が購入し、「谷尾美術館」としてオープンしましたが、2000(平成12)年の谷尾氏逝去に伴い、翌年から直方市美術館(直方谷尾美術館)となったそうです。建物は西洋古典様式とモダニズムを融合した様式のようで、経済産業省の認定する近代化産業遺産の一つにも数えられており、2013(平成25)年には国が登録する登録有形文化財(建造物)に指定されたそうです。
 その常設展では、画家・山喜多二郎太(1897–1965;福岡県鞍手郡出身)の《雨の日》など、地元出身の画家による絵画・陶芸が多数展示されていました。キャプションにも出身地が書かれており、地元の方に絵画を身近に感じてもらうよう工夫しているようです。
 また、企画展「子どものための美術館 9 未来への道」(会期:2014年1月4日〜年3月2日)がちょうどこの週末からはじまったようです。この企画は、昨年の5月から地元の小中学生15人が「子どもスタッフ」として準備してきたもので、子どもたちが書いた「未来新聞」、家族や友人に夢についてのインタビューなどによって構成されていました。中でも面白かったのが、谷尾美術館が所蔵する作品に子どもたちがつけたキャプションです。その際、五感に即した記述がなされ、たとえば澁澤卿(1949–2012)の《甚雨青紅》には、「雨が降っているから寒い」、「人もいないので神社のガラガラする音は聞こえません」、「水溜りに、イボカエルがいそうです」などと書かれていました。
 さて、色々と館内を観賞していると、なにやら奥からモノを叩く音が。みてみると、この企画展に関連して「グループJAMA展’14 JAMAのメンバーによるワークショップ」が開催されていたようです。JAMAとは福岡教育大学OBによる地元密着型の美術・教育グループだそうで、小中学生を対象に木彫り体験をおこなっていたようでした。