Science Museum(英国科学博物館)

 イギリス滞在二日目です。今日は科学博物館の見学に行ってきました。

Science Museum(英国科学博物館)

HP:http://www.sciencemuseum.org.uk/
住所:Exhibition Road, South Kensington, London, SW7 2DD
最寄り駅:South Kensington Sta.(Circle Line/District Line/Piccadilly Line)

 平日にもかかわらず、多くの観覧者であふれかえるイギリスの科学博物館。観覧者の多くは児童で、彼ら/彼女らの話し声を聞く限りは、イギリス国内からでなく、世界中の国々からこの博物館にやって来ているようでした。もちろん、家族で来ている人、あるいはカップルで来ている人も多い反面、僕ぐらいの20代の人はそれほど多くなかった印象です。
 さて、科学博物館はおよそ26のテーマ展示をおこなっています。それらは物理・化学・数学・医学・技術などに関する展示ですが、生物あるいは地学などの「自然史」に関する展示は基本的にはおこなっておらず、それらの展示は隣にある自然史博物館が担っているようです。膨大なコレクションに基づいた貴重な展示品の数々、工夫あるジオラマ・模型、そして実際に手にとって体験できる「ハンズ・オン」型の展示がバランスよく配置され、多くの人びとを惹きつけているようでした。
 博物館のなかで最もにぎわっていたのが、おそらく4階の「ローンチ・パッド」というコーナーです。このコーナーは子どもたちが自分で体験し、楽しみながら科学教育をおこなえる場となっています。電力、磁力、音、力などをテーマにしたおもちゃを実際に子どもたちが手にとって遊んだり、それに対し常駐のスタッフが適宜説明してあげたりしていました。その他に人気であったのは、1階の「宇宙を探検する」というコーナーで、宇宙食や宇宙に関する模型が多く展示されており、子どもだけでなく大人も楽しんでいる様子でした。博物館の1階は比較的新しいものをモチーフにしたものが多く、一番奥には最新の科学技術に関する紹介もおこなわれていました。逆に、一番上の5・6階にあるウェルカム医学史博物館という展示では、医学史(と少しの獣医学)に関する古代から現代までのコレクションと模型が数多く並べられていました。正直、ここにはあまり人が多くありませんでしたが、その内容は非常に充実しており、この館にしてはシニアな方の観覧者が多く、みんな時間をかけてじっくり展示をみている様子でした。

 以上が科学博物館の概要でしたが、次に、日本の博物館と異なる点についてみていきたいと思います。英国の科学博物館の特徴として、まず、平日にもかかわらず多くのイベントが実施されていた点があげられるでしょう。たとえば、僕が訪れた日には無料の科学教室が一日に4、5回開催されており、さらにはとある有名な科学者による有料の講演会もおこなわれていたようです。なお、この科学教室に僕も参加してみましたが、会場は多くの子どもたちで一杯でした。その内容はニュートンの三つの運動の法則を紹介しながら、ローラー付きイスを使ったり、プリングルスの箱でつくった簡易ロケットを使ったりしながら、その法則について確認するというものでした。ただ、その内容自体は日本の多くの科学教室と同じものだったと思います。
 このような無料の展示・体験だけでなく、有料のものも多く提供されているのがこの科学博物館のまた別の特徴としてあげられます。実際、観覧者にはそういった有料の展示・体験の利用が促されており、たとえば、基本的に入場料は無料ですが、入場する際には5ポンド(約750円)のガイドブックの購入がおすすめされます。このガイドブックは全ページカラーで100ページぐらいの小冊子です。その後、展示コーナーに入ると、左手にはジェームズ・ワットの展示、右手にはショップ、そしてその真ん中にチケットカウンターなるものがあります。そこでは、たとえば、小さなカプセルに入って360°回転できる飛行体験(12ポンド)、月面着陸をモチーフに座席が揺れたり、風が吹いたりする4D映画「アポロの伝説」(6ポンド)などのチケットが販売されているのでした。僕は実際に4D映画を観賞してみましたが、正直、これは北九州市にあるテーマパーク「スペースワールド」のスターシェイカーというアトラクションの方が楽しかったと感じました。いや、スペースワールドアミューズメントパークであり、科学博物館は教育施設なので、そもそも比較対象が間違っているかもしれません(笑)。ただ、逆に考えれば、スペースワールドがもっと科学博物館っぽくなったり、日本の科博がこういったアトラクションを導入すれば、もっと人が増えるのではないでしょうか!?ちなみに、4D映画の対象年齢は4〜16歳でした。
 以上のような展示・体験の案内やチケットの半券には、「当館は寄付によって賄われています」、「チケット購入により当館をご支援いただきありがとうございます」などと書かれており、科学博物館の充実したコンテンツがこういった寄付のもとに成り立っていることを知ってもらおうとしていることがわかります。博物館学の分野では、1980年代以降のイギリスで、博物館の経営に関する改革が積極的に進められ、国公立の博物館も効率的で効果的な経営が目指されるようになっていることが知られています。そのため、いくら国立の博物館といってもこのように収益を得るような活動を積極的におこなっているのでした。そういった取り組みの一つとして、たとえば、有料の授業を科学博物館が提供していることがあげられます。たまたま僕が行ったときには、ニュートンに扮したスタッフが数十人の生徒たちに対して授業をおこなっていました。これは事前に予約が必要なものであり、その料金は生徒一人当たり3ポンドのようです。近い将来、日本の国公立の博物館においても、収益を得るために同様の工夫が進められていくことになるのかもしれません。

参考


科学教室の様子


ニュートンによる授業の様子