1960年代アメリカにおける医学史アーカイブズの状況:Blake "Medical Records and History"(1964)

 AC修了論文用参考文献のメモです。

John B. Blake "Medical Records and History," American Archivist, 27(2), 1964, pp. 229-235.
http://archivists.metapress.com/content/d54gn70748865222/
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 本論文は、1963年10月3日に開催された、米国アーキビスト協会・年次大会の「科学記録(Scientific Records)」というセッションにおける報告の一つである。報告者のはJohn B. Blakeは当時アメリカ国立医学図書館の医学史部門の主任であり、その報告内容は、アーキビストたちに対して、医学史が対象とする資料が非常に多様であることを説くことにあった。Blakeは医学の歴史をみていくときには、大きく三つのタイプの資料がそれに含まれるという。第一が政府による文書で、医療に関する政策や法律、訴訟のための公文書がこれに含まれる。第二が私的文書で、民間の病院や慈善団体などの文書がこれに含まれる。第三が個人文書で、医者といった医療に直接関わるものから、政治家や慈善家、そして患者などによる記録がこれに含まれる。
 今日的にみると、その区分などは非常にシンプルであるが、医学史の対象とする資料の多様性を繰り返し説くBlakeの姿からは、当時はまだこういったタイプの資料の存在(あるいはその価値)が、アーキビストの間にも十分に知られていなかったことを示していると思われる。1960年代のアメリカにおける医学史関連アーカイブズの状況を、うかがい知ることができる講演録である。