k_日本史

医の学統と公儀による統制:海原亮「江戸時代の医学教育」(2012)

江戸時代の医学教育に関する海原亮氏の優れた文献を読みました。このトピックは、かつて山崎佐『各藩医学教育の展望』(国土社、1955年、限定刷)において、先駆的かつ概略的な研究が提示されましたが、その後に続く研究成果はほとんど出ていないというのが…

近世後期における鉱山病対策:内藤正中「石見銀山の鉱山病対策」(1989)

内藤正中「石見銀山の鉱山病対策――宮太柱の『済生卑言』」『日本海地域史研究』9、1989年、263-284頁。 江戸時代の鉱山における労働環境は悲惨であった。鉱山内に立ちこめる有毒ガスによって、身体を壊さざるを得なかった鉱山労働者たちは、採掘をはじめてか…

第3回秋田県鉱山サミット「秋田県の鉱山に見る歴史」(秋田県鉱山資料館等連絡協議会・日本鉱業史研究会共催 於:秋田大学鉱業博物館)

秋田に史料調査に来ているのですが、秋田県の鉱山関係者(関連施設職員や技術者、歴史研究者、地域団体など)による市民向けの講演会が、秋田大学鉱業博物館で行われていたため一部聴講してきました。講演会は50名ほどの方が参加され大盛況でしたが、以下で…

寛政改革と藩校:加藤民夫「明徳館の学統をめぐる諸問題」(2002)

秋田藩の藩校・明徳館についてまとめた文献を読みました。修論用メモです。 加藤民夫「明徳館の学統をめぐる諸問題――秋田藩学館制度の一側面」『秋大史学』48、2002年、1-14頁。 江戸時代、藩は藩校を設立することによって藩士の教育をおこなおうとした。鈴…

近世の在村における医師のライフコース:速水融「人々の多彩な生涯」(2002)

10月に速水融『歴史人口学の世界』(岩波書店、1997年)が岩波現代文庫で復刊されるそうですね。速水氏は日本に歴史人口学を導入し、近世日本の社会史研究の水準を飛躍的に上げた方ですが、同時にその分析手法は医療の社会史研究にも大きな洞察を与えていま…

医師統制と郷校の役割をあわせもつ施設:下山佳那子「幕末期における郷校の設立」(2011)

「回顧と展望」『史学雑誌』(2012年6月号)にも紹介されていた江戸時代の医療の社会史に関する研究文献を読みました。近世日本の医療施設について考察するとき、それと藩との関係ばかりに注目するのではなく、民衆がどれほど設立にコミットしたかについての…

医療の正統性と幕府・学統・市場:海原亮「近世都市の「医療」環境と広小路空間」(2005)

江戸時代の医療の社会史を研究する上で、基礎的な文献である海原氏の論考を読みました。特に、公的医療との関連を意識してまとめました。修論用メモ。 海原亮「近世都市の「医療」環境と広小路空間」吉田伸之・長島弘明・伊藤毅(編)『江戸の広場』東京大学…

幕府の貧窮民対策としての社会事業:南和男「養生所の成立と実態」(1969)

小石川養生所に関する先駆的かつ基礎的な先行研究を読みました。こちらも修論用メモ。 南和男「第五章 養生所の成立と実態」『江戸の社会構造』塙書房、1969年、294-341頁。江戸の社会構造 (塙選書67)作者: 南和男出版社/メーカー: 塙書房発売日: 1969/08/24…

江戸期における医療教育施設と臨床施設の間の闘争:岩渕佑里子「寛政〜天保期の養生所政策と幕府医学館」(2000)

今回も修論のために幕府による公的な医療施設の歴史についての研究論文を読みました。 岩渕佑里子「寛政〜天保期の養生所政策と幕府医学館」『論集きんせい』22、2000年、40-61頁。 小石川養生所といえば、江戸時代に無料で貧民に医療を提供した施設として、…

名君がつくられるとき:加藤民夫「佐竹義和時代の文教政策」(2005)

修論執筆のため、秋田藩の藩政史に関する文献を読みました。 加藤民夫「佐竹義和時代の文教政策――『御亀鑑』の記事を柱として」『秋田県公文書館研究紀要』11、2005年、1-19頁。 http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1134102834158/files/kiyou11.pdf …

メディアと精神科医の協働:佐藤雅浩「世紀転換期日本における精神医学的知識の通俗化過程」(2012)

明治〜昭和期の精神医学の社会史を専門とする佐藤雅浩さんの最新論文が出版されていましたので読みました。 佐藤雅浩「世紀転換期日本における精神医学的知識の通俗化過程――新聞メディアにおける精神疾患報道を対象として」『年報 科学・技術・社会』21、201…

家の存続と捨て子:沢山美果子「「乳」からみた近世大坂の捨て子の養育」(2011)

8/4に開催される生物学史研究会「いのちの歴史学に向けて――胎児・赤子・捨て子のいのちの近世と現代」の準備として、発表者の沢山美果子さんの論文を読みました。なお、研究会の詳細については下記リンクをご参照ください。 http://researchmap.jp/evm22nbue…

飢饉・疫病の発生と医療への期待:菊池勇夫「飢饉と疫病」(1994)

菊池勇夫『飢饉の社会史』(1994)の飢饉と医療の関係について論じた章を読みました。本書は江戸時代の飢饉が領主・民衆へと与えたインパクトと反応に注目し、「飢饉の社会史」という主題をはじめて検討した文献ですが、医療史とも関係が深い「第七章 飢饉と…

男性による介護から女性による介護へ:柳谷慶子「介護役割とジェンダー」(2010)

女性史研究の立場から、介護の歴史的な位置づけを検討している柳谷慶子さんの論文を読みました。『近世の女性相続と介護』(吉川弘文館、2007年)では主として近世日本における介護の実態について検討されていましたが、本論では近代日本における介護役割に…

朝鮮医学の知識・もの・ひとの受容:田代和生「近世前期朝鮮医薬の受容と対馬藩」(1995)

とある授業のアサインメントとして、近世前期の日本における朝鮮医学の受容について書かれた論文を読みました。(都合により、授業には出れていないのですが 笑) 個人的には、倭館(朝鮮・釜山)の朝鮮人医師に、対馬藩の医師が医学稽古を受けに行っていた…

日本医史学会・月例会(2011年11月26日、於:順天堂大学)

土曜日に行われた日本医史学会・月例会(2011年11月26日、於:順天堂大学)にはじめて参加してきました。簡単に発表メモをまとめておきたいと思います。 ・松村紀明「江戸期在村医の医療活動――岡山県邑久郡中島家文書の鍼灸記録から」 帝京平成大学の松村氏…