k_日本史

目次:「<特集>近代日本における医療の社会史」『Historia Scientiarum』22(2)、2012年12月

昨年12月31日に発行されていた日本科学史学会の欧文誌『Historia Scientiarum』(Vol. 22, No. 2, 2012)をやっと手に入れました。本号では鈴木晃仁先生をスペシャルエディターに迎え、「近代日本における医療の社会史」という特集が組まれています。日本か…

日本と外国を結びつけようとする宣教医療:田中智子「明治初年の神戸と宣教医ベリー」(2003)

田中智子「明治初年の神戸と宣教医ベリー――医療をめぐる地域の力学」『キリスト教社会問題研究』52、2003年、31–57頁。 http://doors.doshisha.ac.jp/webopac/catdbl.do ※ 無料閲覧・DL可能 ※ のち、田中智子「第一章 神戸における近代医療の揺籃とJ・C・…

「平成の大津波被害と博物館――被災資料の再生をめざして」(於:岩手県立博物館)

昨日、岩手県立博物館で開催中のテーマ展「平成の大津波被害と博物館――被災資料の再生をめざして」を見学して来ました。館の方にブログでもなんでもどしどしアピールしてねと言われたので、早速その紹介を。笑 テーマ展「平成の大津波被害と博物館――被災資料…

善政としての「撫育」と中国儒教思想:有富純也「律令国家の〈福祉〉政策」(2008)

修論では江戸時代の公的な医療・福祉政策について検討したのですが、古代・中世のその政策についてはほとんど触れることが出来ませんでした。ということで勉強のため、律令国家の福祉政策を概観した研究を読みました。修論用メモ(既に提出したのですが、一…

民俗写真家のみた基層文化と近代化:菊地暁「距離感(センス オブ ディスタンス)」(2004)

坂野徹『フィールドワークの戦後史』で取り上げられていた写真家・芳賀日出男について勉強するため、彼の半生について記した文献を読みました。以下のまとめは、坂野本を受けて、九学会連合および宮本常一との関連部分を中心にまとめています。なお、坂野本…

人類学者によるメディアの活用:飯田卓「昭和30年代の海外学術エクスペディション」(2007)

飯田卓「昭和30年代の海外学術エクスペディション――「日本の人類学」の戦後とマスメディア」『国立民族学博物館研究報告』31(2)、2007年、227–285頁。 http://ir.minpaku.ac.jp/dspace/handle/10502/3327 ※ 無料閲覧・DL可能 昭和30年代(1955–1964年)とい…

現地ニーズにあわせた「攻撃型」伝道:石井紀子「アメリカ女性医療宣教師の中国と日本伝道」(2005)

石井紀子「アメリカ女性医療宣教師の中国と日本伝道――メアリ・アナ・ホルブルックの場合(1881年〜1907年)」『日本研究』(国際日本文化研究センター)30、2005年、167–191頁。 http://shikon.nichibun.ac.jp/dspace/handle/123456789/1743 ※ 無料閲覧・DL…

来世での救いとキリスト教:五野井隆史「十六世紀、日本人とキリスト教の出会い」(2011)

16世紀の人びとの「救い」に対する強い関心を手がかりに、初期キリシタン時代の宣教師と日本人の出会いについて論じた文献を読みました。 五野井隆史「十六世紀、日本人とキリスト教の出会い――日本人が救いを求めていた時代」『サピエンチア : 英知大学論叢…

調査地被害と「日本(人)」の再定義:坂野徹『フィールドワークの戦後史』(2011)#2

坂野先生による『フィールドワークの戦後史』の後半です。今回は第2章・第3章・終章をまとめます。前半のまとめはコチラ。 坂野徹「第2章 能登調査と「調査地被害」」、「第3章 奄美調査と「本土」復帰」、「終章 九学会連合のその後」『フィールドワークの…

要旨:藤本大士「秋田藩領および幕領の鉱山における医療環境」〔修士論文〕(2013)

明日は修論の口頭試問がおこなわれます。口頭試問は学内の方だけでなく、全ての方が参加できると思いますので、もしよろしければご参加ください。とくに、来年以降に修論を出す方は、うちの研究室での口頭試問の雰囲気などを知ることができるので参考になる…

「辺境」の調査者と被調査者:坂野徹『フィールドワークの戦後史』(2011)#1

ここ数年にわたってフィールドサイエンスに関する調査を進めていた坂野先生ですが、昨年末ついに本書『フィールドワークの戦後史』が出版されました!本書はとくに、戦後すぐに学会の枠を超えて組織された九学会連合と、そこでの民俗学者・宮本常一の活動を…

医療史アーカイブズ構築への提案:廣川和花「近代日本の疾病史資料の保存と公開にむけて」(2012)

歴史研究者にとって史資料をいかに保存し、活用していくかという問題は避けては通れません。多くの研究者は自ら資料のアーカイビングに関わっていますが、医学史や科学史といった研究領域においてはそれらに比べるとあまり活発に進められていないようです。…

文献リスト:藤本大士「秋田藩領および幕領の鉱山における医療環境」〔修士論文〕(2013)

今日は修士論文の締め切り日だったのですが、研究室の同期とともに、無事に提出することができました(正確には昨日提出したのですが・・・)。締め切り直前は色々と大変でしたが、研究室の皆さまの大きなサポートのおかげで、なんとか乗り切ることができました…

地域・国家のなかの青年組織:ウォーターズ「地域史・国家史・世界史の架け橋としての青年会」(2005)

ニール・ウォーターズ「地域史・国家史・世界史の架け橋としての青年会」河西英通・浪川健治・ウィリアム・スティール(編)『ローカルヒストリーからグローバルヒストリーへ――多文化の歴史学と地域史』岩田書院、2005年、151–163頁。ローカルヒストリーから…

近代における民間恤救施設の再規定:庄司拓也「明治前期における地域的救済組織の存続過程」(2002)

近世期に設立された民間の救済団体が、明治期になってどのように自らを規定し直していくかについて論じた文献を読みました。そこには、明治新政府の思惑との対立だけでなく、団体内部のメンバーとの衝突があったのです。素晴らしい着眼であり、紹介されてい…

健康をめぐる病理学と医療経済学:鈴木晃仁「健康調査の歴史」(2009)

近代日本における公権力と医療を主題にした論文を読みました。修論用メモです。 鈴木晃仁「健康調査の歴史」近現代資料刊行会(編)『近代都市環境研究資料叢書 2 近代都市の衛生環境(東京編) 別冊(解説編)』近現代資料刊行会、2009年、71-99頁。近代都…

近世後期の医療統制と海防問題:張基善「仙台藩における諸医師とその把握・動員」(2007)

今日もまた修論の主題に関連した論文のまとめです。今回は仙台藩を事例として、藩の医療政策について論じた文献を。 張基善「仙台藩における諸医師とその把握・動員」『歴史』109、2007年、79-108頁。 仙台藩は領内の医師に対して積極的な管理政策をおこなっ…

医学知識に対する幕府の理念と村落における受容の実態:横田冬彦「近世村落社会における<知>の問題」(1998)

近世初期の幕府と地域社会における医療について論じた文献をまとめました。修論用メモとして、以下では著者が公儀による医療をどのように捉えていたかについて中心に記録してあります。 横田冬彦「近世村落社会における<知>の問題」『ヒストリア』159、199…

藩による医療統制と公儀機能の限定性:海原亮「藩領における医療の展開」(2007)

海原亮「第四章 藩領における医療の展開――越前国府中を例として」『近世医療の社会史――知識・技術・情報』吉川弘文館、2007年、138-191頁。近世医療の社会史―知識・技術・情報作者: 海原亮出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2007/09メディア: 単行本 クリ…

施薬・薬師信仰という身体と精神を通じた支配:岩下哲典『権力者と江戸のくすり』(1998)

施薬事業および薬師信仰に着目して、江戸時代の公儀による支配を論じた文献を読みました。平易な文章でありながらも、政治と宗教との関連についてスリリングな洞察を導いており、非常に刺激的な文献でした。修論用メモ。 岩下哲典『権力者と江戸のくすり――人…

統治者・被統治者の闘争モデルと合意モデル:深谷克己「民間社会と百姓成立」(2009)

修論用メモとして、深谷克己氏が提起した「百姓成立」という概念について、氏がそのエッセンスをまとめている論考を読みました。 深谷克己「序 民間社会と百姓成立」『深谷克己近世史論集 1 民間社会と百姓成立』校倉書房、2009年、11-19頁。深谷克己近世史…

孤児救済に対する公と私の働き:庄司拓也「天保の飢饉下の秋田感恩講による孤児救済」(2000)

修論用メモおよび明日の歴史科学協議会大会(テーマ「伝統社会における貧民救済」)のための勉強もかねて、江戸時代に私的におこなわれた孤児救済について論じた文献を読みました。ちなみに、大会については下記ページ参照。 http://www.maroon.dti.ne.jp/re…

享保改革と医薬政策の展開:大石学「日本近世国家の薬草政策」(1992)

今回も修論用のメモとして、公儀による医療政策について扱った文献を読みました。 大石学「日本近世国家の薬草政策――享保改革期を中心に」『歴史学研究』639、1992年、11-23頁。 幕藩制権力は自らの支配を安定・維持させるため、「公儀」としてさまざまな機…

ノーベル賞推薦状にみる日本医学界の動向と科学観:岡本拓司「戦前期日本の医学界とノーベル生理学・医学賞」(2002)

ここ数日ノーベル賞をめぐって世間が賑わっておりますが、今回は戦前の日本におけるノーベル生理学・医学賞に関して検討した文献を読みました。ノーベル賞をめぐる書籍は一般書から専門書まで数多くありますが、岡本先生による一連のノーベル賞研究は基礎文…

教育・統治・医療の場としての郷校:工藤航平「地域史からの「郷学」の再評価(2008)

工藤航平「地域史からの「郷学」の再評価――明治三年前橋藩領川島分界の川島書堂創設を事例に」『文書館紀要』21、2008年、77-105頁。 郷校は近世から近代初期にかけての教育機関の一つであるが、これは藩校とも寺子屋とも異なる教育機能を有していた。先行研…

文献表:藤本大士「近世後期の秋田藩における医療政策――公的医療の位置づけをめぐって」洋学史学会月例会(2012年10月7日、於:電気通信大学)

藤本大士「近世後期の秋田藩における医療政策――公的医療の位置づけをめぐって」洋学史学会月例会、電気通信大学、2012年10月7日。 昨日、洋学史学会月例会で発表させていただきました。内容は近世後期の秋田藩の鉱山における医療環境の整備について、秋田藩…

江戸における蘭方医の隆盛と近郊農村医療の変遷:長田直子「近世後期における患者の医師選択」(2004)

本日の洋学史学会月例会の予習もかねて、長田さんの優れた研究論文を読みました。ロイ・ポーター以降、海外では患者の視点からみた医学史研究が数多く提出されましたが、日本の医学史研究では残念ながらそういった視点にたった研究はまだ多くありません。そ…

漢方医の修行と幕末期医師の多様なライフコース:長田直子「幕末期在村における医師養成の実態」(2002)

明日(日付変わって今日)、「近世後期の秋田藩における医療政策」という題目で、洋学史学会月例会で発表させていただくのですが、近世日本の医療史を専攻する長田直子さんもご発表されます。そこで、長田さんが幕末期の医師養成の実態について論じた研究論…

公儀による医師統制の方法:上野周子「紀州藩の医療政策と地域社会」(2007)

上野周子「紀州藩の医療政策と地域社会」『三重大史学』7、2007年、1-20頁。 1980年以降、医療の社会史研究は飛躍的に進展した。とりわけ、在村レベルの蘭方医や地域における民衆への医療の実態がかなりの程度明らかにされた。一方、領主権力が医師に対して…

江戸時代の医学教育施設:山崎佐『各藩医学教育の展望』(1955)

江戸時代の医学教育史に関する基礎的な文献をチェックしました。限定刷であるため、図書館などでの所蔵は多くないかもしれませんが、医学教育の歴史を調べる上では最低限目を通しておくべき著書です。 山崎佐『各藩医学教育の展望』東京:国土社、1955年。各…