読書

『本草綱目』を準備した宋代の医学発展:島居一康「『本草綱目』に見る中国医療の到達点」(2013)

島居一康「『本草綱目』に見る中国医療の到達点」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、25–44頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版発売日…

キリスト教禁制後の日本人知識人と南蛮系宇宙論:平岡隆二「『南蛮運気論』の流布と受容」(2013)

本日、とうとうゲットしました!各所で話題沸騰中の、平岡さんの新刊『南蛮系宇宙論の原典的研究』を!ぱらぱらとみてみたのですが、これはもう素晴らしいの一言につきますね。日本側の史料だけでなく、欧州の史料も渉猟し、キリシタン時代の宇宙論を総合的…

公家に独占されていた医学知識の伝播:細川涼一「鎌倉幕府の医師」(2013)

細川涼一「鎌倉幕府の医師」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、25–44頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版発売日: 2013/04/01メディア…

医療行為・医療施設における藤原氏のヘゲモニー:増渕徹「平安中後期における貴族と医師」(2013)

増渕徹「平安中後期における貴族と医師」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、3–24頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版発売日: 2013/04…

中央から地方へと変わる百姓撫育の担い手:有富純也「百姓撫育と律令国家」(2003)

有富純也「百姓撫育と律令国家――儒教的イデオロギー政策を中心に」『史学雑誌』112(7)、2003年、1195-1216頁。 のち、有富純也「第一章 百姓撫育と律令国家――儒教的イデオロギー政策を中心に」『日本古代国家と支配理念』(東京大学出版会、2009年)として所…

明治初年における官費での救助率の地域差:大杉由香「本源的蓄積期における公的扶助と私的経済」(1994)

大杉由香「本源的蓄積期における公的扶助と私的経済――岡山・山梨・秋田を中心に」『社会経済史学』60(3)、1994年、349–378、451頁。 幕末から日清戦争までの時期に注目し、官費による公的扶助と隣保扶助などの私的救済がどのような関係にあったかを岡山・山…

民衆救済から医官教育の場へ:町泉寿郎「江戸医学館における臨床教育」(2013)

最新の『日本医史学雑誌』(本号の目次はコチラ)から、町先生の医学館に関する論考をまとめました。医学館の目的の変化など、個人的にも気になっていた部分に言及してあり、非常に勉強になりました。 町泉寿郎「江戸医学館における臨床教育」『日本医史学雑…

城下町における救済の形態:エーラス「身分社会の貧民救済」(2010)

近世日本史における貧民救済に関する研究は吉田伸之氏や北原糸子氏のものが有名ですが、このトピックは日本の研究者のみならず海外の研究者をも惹きつけているようです。今日は、マーレン・エーラス氏が日本の研究書に寄稿された論文をまとめました。ちなみ…

グローバルヒストリーにおける歴史の共同性・統合性への警鐘:岡本充弘「歴史にグローバルなアプローチはあるか?」(2013)

昨日岡本氏による新著をネットで購入したのですが、さきほど早くも届いたので一つの章をまとめてみます。国際会議での議論・報告をまとめるという体裁をとっていますので、他の章より比較的読みやすく、かつ、著者のスタンスが簡明に示されています。 岡本充…

医学・美術・身体の融合と美術館:高山宏「身体という「驚異の部屋」」(2009)

数年前に森美術館で開催された「医学と芸術」展(2009年11月28日〜2010年2月28日)の展覧会カタログをたまたま古本屋でゲットしたので、こちらのカタログに寄稿されている高山宏氏の論考を一本まとめてみました。非常に面白そうな展覧会だったのですが、タイ…

科学研究のもつ歴史への関心/時間への無関心:Daston "The Sciences of the Archive" (2012)

明日に迫ったOsirisの読書会に向けて、担当箇所のレジュメを作成しました。なお、読書会はドタ参も歓迎ですので、お時間ある方はどうぞ。詳細はコチラ(オンライン参加もできます)。 Lorraine Daston, "The Sciences of the Archive," Osiris, 27(1), 2012,…

更生意欲のない者の発見とそれへの不信感:植野真澄「「白衣募金者」とは誰か」(2005)

戦傷病者とその家族の労苦を伝えることを目的とした資料館「しょうけい館」に行って来ました。興味深い展示品が多く、非常に素晴らしい資料館でありました。ということで、そちらで学芸員をされている植田真澄さんの論文を簡単にまとめてみました。 植野真澄…

近代中国ナショナリズムと女性の理想像:陳姃湲「民国初期の新しい女性像「賢妻良母」」(2006)

陳姃湲「第5章 民国初期の新しい女性像「賢妻良母」――1915年〜1919年」『東アジアの良妻賢母論――創られた伝統』勁草書房、2006年、170–191頁。東アジアの良妻賢母論―創られた伝統 (双書ジェンダー分析)作者: 陳〓@49A8@湲,陳〓湲出版社/メーカー: 勁草書房発…

日本と外国を結びつけようとする宣教医療:田中智子「明治初年の神戸と宣教医ベリー」(2003)

田中智子「明治初年の神戸と宣教医ベリー――医療をめぐる地域の力学」『キリスト教社会問題研究』52、2003年、31–57頁。 http://doors.doshisha.ac.jp/webopac/catdbl.do ※ 無料閲覧・DL可能 ※ のち、田中智子「第一章 神戸における近代医療の揺籃とJ・C・…

華僑救済のための西洋医学と中国医学の共存:帆刈浩之「十九世紀末における香港華東医院の「近代化」への対応」(2003)

帆刈浩之「十九世紀末における香港華東医院の「近代化」への対応」孫文研究会(編)『辛亥革命の多元構造』汲古書院、2003年、218–236頁。辛亥革命の多元構造―辛亥革命90周年国際学術討論会(神戸) (孫中山記念会研究叢書)作者: 孫文研究会出版社/メーカー: …

善政としての「撫育」と中国儒教思想:有富純也「律令国家の〈福祉〉政策」(2008)

修論では江戸時代の公的な医療・福祉政策について検討したのですが、古代・中世のその政策についてはほとんど触れることが出来ませんでした。ということで勉強のため、律令国家の福祉政策を概観した研究を読みました。修論用メモ(既に提出したのですが、一…

中世スコラ学と近代的原子論の連続性:平井浩「ルネサンスの種子の理論」(2002)

去る2月7日、駒場科学史講演会としてヒロ・ヒライ氏による「ルネサンスの生命と物質――20年の海外研究生活から(日本学術振興会賞記念講演)」という講演がおこなわれました。氏の長きにわたる海外研究生活と絡めつつ、博士論文の主題である「種子の理論」、…

民俗写真家のみた基層文化と近代化:菊地暁「距離感(センス オブ ディスタンス)」(2004)

坂野徹『フィールドワークの戦後史』で取り上げられていた写真家・芳賀日出男について勉強するため、彼の半生について記した文献を読みました。以下のまとめは、坂野本を受けて、九学会連合および宮本常一との関連部分を中心にまとめています。なお、坂野本…

人類学者によるメディアの活用:飯田卓「昭和30年代の海外学術エクスペディション」(2007)

飯田卓「昭和30年代の海外学術エクスペディション――「日本の人類学」の戦後とマスメディア」『国立民族学博物館研究報告』31(2)、2007年、227–285頁。 http://ir.minpaku.ac.jp/dspace/handle/10502/3327 ※ 無料閲覧・DL可能 昭和30年代(1955–1964年)とい…

現地ニーズにあわせた「攻撃型」伝道:石井紀子「アメリカ女性医療宣教師の中国と日本伝道」(2005)

石井紀子「アメリカ女性医療宣教師の中国と日本伝道――メアリ・アナ・ホルブルックの場合(1881年〜1907年)」『日本研究』(国際日本文化研究センター)30、2005年、167–191頁。 http://shikon.nichibun.ac.jp/dspace/handle/123456789/1743 ※ 無料閲覧・DL…

来世での救いとキリスト教:五野井隆史「十六世紀、日本人とキリスト教の出会い」(2011)

16世紀の人びとの「救い」に対する強い関心を手がかりに、初期キリシタン時代の宣教師と日本人の出会いについて論じた文献を読みました。 五野井隆史「十六世紀、日本人とキリスト教の出会い――日本人が救いを求めていた時代」『サピエンチア : 英知大学論叢…

調査地被害と「日本(人)」の再定義:坂野徹『フィールドワークの戦後史』(2011)#2

坂野先生による『フィールドワークの戦後史』の後半です。今回は第2章・第3章・終章をまとめます。前半のまとめはコチラ。 坂野徹「第2章 能登調査と「調査地被害」」、「第3章 奄美調査と「本土」復帰」、「終章 九学会連合のその後」『フィールドワークの…

「辺境」の調査者と被調査者:坂野徹『フィールドワークの戦後史』(2011)#1

ここ数年にわたってフィールドサイエンスに関する調査を進めていた坂野先生ですが、昨年末ついに本書『フィールドワークの戦後史』が出版されました!本書はとくに、戦後すぐに学会の枠を超えて組織された九学会連合と、そこでの民俗学者・宮本常一の活動を…

ゴールドラッシュと水供給:森下直紀「サンフランシスコ市における水道事業公営化への史的展開」(2011)

森下直紀「サンフランシスコ市における水道事業公営化への史的展開」『Core ethics:コア・エシックス』7、2011年、285–298頁。 http://www.r-gscefs.jp/?p=1382 ※ 無料閲覧・DL可能 18世紀の中頃から19世紀の初頭のアメリカでは水道史における一つの大きな…

帝国と宣教医療:Kakar "Leprosy in British India, 1860–1940"(1996)

前回エントリ(コチラ)に引き続き今回も宣教医療に関する文献を。宣教医療という研究テーマへの注目を促した重要な研究の一つです。 Sanjiv Kakar, "Leprosy in British India, 1860–1940: Colonial politics and missionary medicine," Medical History, 4…

西洋医学受容をめぐる宣教師と地方政府の役割:秦惟人「近代寧波における医療伝道について」(2005)

前回のエントリ(コチラ)では、科学史(医学史)とグローバル・ヒストリーとの関係を論じるにあたって、「コンタクト・ゾーン」への着眼が重要であると指摘されていることを学びました。そして、まさにその「コンタクト・ゾーン」の一つである中国の開港都…

科学知識の「循環」とグローバル・ヒストリー:Roberts "Situating Science in Global History" (2009)

月曜日に迫ったIsis Focus読書会に向けて、科学史とグローバル・ヒストリー(以下、GH)に関する文献を読みました。著者は科学史家ですが科学史だけでなくGHの特徴を端的に捉え、科学史のGHへの接続に向けて示唆に富んだ問題提起をしています。 なお、読書会…

医療史アーカイブズ構築への提案:廣川和花「近代日本の疾病史資料の保存と公開にむけて」(2012)

歴史研究者にとって史資料をいかに保存し、活用していくかという問題は避けては通れません。多くの研究者は自ら資料のアーカイビングに関わっていますが、医学史や科学史といった研究領域においてはそれらに比べるとあまり活発に進められていないようです。…

地域・国家のなかの青年組織:ウォーターズ「地域史・国家史・世界史の架け橋としての青年会」(2005)

ニール・ウォーターズ「地域史・国家史・世界史の架け橋としての青年会」河西英通・浪川健治・ウィリアム・スティール(編)『ローカルヒストリーからグローバルヒストリーへ――多文化の歴史学と地域史』岩田書院、2005年、151–163頁。ローカルヒストリーから…

医療技術による「身体」の再定義:Schlich "The Technological Fix and the Modern Body"(2010)

授業のアサインメントとして、20世紀に外科学が与えた社会的・文化的インパクトを概観した文献を読みました。 Thomas Schlich "The Technological Fix and the Modern Body: Surgery as a Paradigmatic Case," Ivan Crozier, ed., A Cultural History of the…