読書

オーストラリアにおける鉱山労働者の珪肺への補償:Kippen "The social and political meaning of the silent epidemic of miners' phthisis, Bendigo 1860–1960"(1995)

Sandra Kippen, "The social and political meaning of the silent epidemic of miners' phthisis, Bendigo 1860–1960," Social Science & Medicine, 41(4), 1995, pp. 491–499. オーストラリアのヴィクトリア州ベンディゴの金山では、1860年代から1960年代…

医療活動を「副業」としてはじめた公家:米澤洋子「室町・戦国期の山科家の医療と「家薬」の形成」(2013)

米澤洋子「室町・戦国期の山科家の医療と「家薬」の形成――「三位法眼家傳秘方」をめぐって」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、82–129頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文…

細菌学に基づく公衆衛生から社会的な道具としての医学へ:Löwy & Zylberman "Medicine as a social instrument"(2000)

Ilana Löwy & Patrick Zylberman, "Medicine as a social instrument: Rockefeller foundation, 1913-45," Studies in History and Philosophy of Science Part C: Studies in History and Philosophy of Biological and Biomedical Sciences, 31(3), 2000, …

社会集団を「重層」的に「複合」的に捉える:久留島浩「「身分的周縁」から武士身分を問う」(2000)

久留島浩氏の論考から、医師に関する事例に言及したところを中心にまとめました。 久留島浩「「身分的周縁」から武士身分を問う」久留島浩ら(編)『シリーズ近世の身分的周縁 6 身分を問い直す』吉川弘文館、2000年、49–72頁。身分を問い直す (シリーズ近世…

歴史家と他分野の研究者との協働可能性:Albury "Broadening the Vision of the History of Medicine"(2005)

W. R. Albury, "Broadening the Vision of the History of Medicine," Health and History, 7(1), 2005, pp. 2–16. 自然科学系の研究者とは違って、歴史家は研究を一人でおこなうことが多い。しかし、歴史家も色んな分野の人びとと協働して研究をおこなって…

革新主義時代のアメリカにおける公衆衛生:Tomes "Germ Theory, Public Health Education, and the Moralization of Behavior in the Antituberculosis Campaign"(2001)

とあるアメリカの医学史・公衆衛生史のリーディングスより、20世紀初頭の細菌学と公衆衛生の関連について論じた文献を読みました。明日の研究会の予習も少し兼ねて(研究会詳細はコチラ)。 Nancy Tomes, "Germ Theory, Public Health Education, and the Mo…

国家目標という観点から読み直す明治6年政変と内務省設立:勝田政治「征韓論政変と大久保政権」(2012)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、『講座 明治維新』より明治6年政変(征韓論政変)に関する文献を読みました。 勝田政治「2 征韓論政変と大久保政権」明治維新学会(編)『講座 明治維新 4 近代国家の形成』有志舎、2012年、56–90頁。講座 明治…

細菌学理論によって消された階層の違い:平体由美「アメリカ南部公衆衛生行政の展開」(2009)

今週末に開催されるアメリカ政治研究会の予習として、報告者・平体由美さんの過去の論文を読みました。なお、研究会詳細はコチラ。 平体由美「アメリカ南部公衆衛生行政の展開――ロックフェラー衛生委員会と20世紀初頭の鉤虫病コントロール」『アメリカ史研究…

江戸時代の人参にみるグローバルヒストリー:西垣昌欣「江戸長崎屋の機能」(2002)

江戸時代における朝鮮人参をめぐる諸政策について調べていたので、関連する部分をメモしました。著者はあまり強調していませんが、江戸時代における人参をめぐる東アジアのネットワークはとても興味深く感じました。 西垣昌欣「江戸長崎屋の機能――文化期にお…

対馬藩と人参貿易:田代和生『近世日朝通交貿易史の研究』(1981)

田代和生「第13章 人参の国内販売」『近世日朝通交貿易史の研究』創文社、1981年、383–399頁。近世日朝通交貿易史の研究作者: 田代和生出版社/メーカー: 創文社発売日: 2002/11メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログを見る 江戸時代における日…

死体の保存・処理のような博物館の役割:梅棹忠夫『メディアとしての博物館』(1987)

「博物館・図書館情報メディア論」(学芸員資格科目)の参考文献としてあげられていた文献を読みました。30年も前に、博物館をメディア=「情報伝達装置」と捉える視点が提示されていたのですね。 梅棹忠夫『メディアとしての博物館』平凡社、1987年。メディ…

長野における朝鮮人参栽培開始時期をめぐって:斎藤洋一「信濃国佐久地方への朝鮮人参栽培の導入」(1995)

斎藤洋一「信濃国佐久地方への朝鮮人参栽培の導入」大石慎三郎(編)『近世日本の文化と社会』雄山閣出版、1995年、127–153頁。近世日本の文化と社会作者: 大石慎三郎出版社/メーカー: 雄山閣出版発売日: 1995/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件)…

復古主義と進歩主義をつなぐ有司専制批判:猪飼隆明「近代化と士族」(2012)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、『講座 明治維新』より明治初期の士族反乱について新たな見方を提示している文献を読みました。 猪飼隆明「3 近代化と士族――士族反乱の歴史的位置」明治維新学会(編)『講座 明治維新 4 近代国家の形成』有志…

豪農・知識人にみる幕末・明治期における公論の連続性:宮地正人「風説留から見た幕末社会の特質」(1999)

宮地正人「第三章 風説留から見た幕末社会の特質――「公論」世界の端緒的成立風説」『幕末維新期の社会的政治史研究』岩波書店、1999年、121–154頁。幕末維新期の社会的政治史研究作者: 宮地正人出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1999/03/26メディア: 単行本…

豪農と国学者・藩士の間の情報ネットワーク:岩田みゆき「幕末の対外情報と在地社会」(2010)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、『講座 明治維新』より幕末期の民衆による積極的な情報収集活動について論じた文献を読みました。 岩田みゆき「2 幕末の対外情報と在地社会」明治維新学会(編)『講座 明治維新 1 世界史のなかの明治維新』有…

主体的に情報を集める民衆:高部淑子「日本近世史研究における情報」(2002)

10年前に書かれた、近世日本史における「情報」研究のサーベイ論文を読みました。この間、本論文で紹介された論文がかなり書籍化されており、研究の進展がうかがえます。 高部淑子「日本近世史研究における情報」『歴史評論』630、2002年、28-39頁。 日本近…

乳児保護についての医学知識と保護施設:南直人「母乳が政治性を帯びるとき」(2013)

南直人「母乳が政治性を帯びるとき――世紀転換期ドイツにおける乳児保護の実態と言説」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、259–283頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研…

森鴎外における近代的知と民俗的知の一体性:野村幸一郎「錯乱と祟りの間」(2013)

野村幸一郎「錯乱と祟りの間――森鴎外『蛇』の問題圏」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、228–258頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版…

農村における漢方医学と西洋医学の共存:高久嶺之介「明治前期の村と衛生・病気」(2013)

高久嶺之介「明治前期の村と衛生・病気――京都府乙訓郡上植野村を対象に」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、201–227頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メ…

本家・分家間の医療政策の対立と「御救」:野口朋隆「近世中後期、小城藩主の資質・役割と「生命維持」」(2013)

野口朋隆「近世中後期、小城藩主の資質・役割と「生命維持」」『歴史評論』754、2013年、48–61頁。 佐賀藩の支藩である小城藩は、近世中後期に藩財政の危機に直面していた。そのような窮状を打開するために、小城藩は山内と呼ばれる地域を中心に藩政改革を推…

リストをつくることの認知的効果:Müller-Wille & Charmantier "Lists as Research Technologies"(2013)

5月1日(水)に迫ったIsis Focus読書会に向けて、自分の担当箇所のレジュメをつくりました。今回の特集は「リストマニア」です。なお、読書会はどなたでも、(Google+を通じて)どこからでも参加可能ですので、参加希望の方は藤本にまでお気軽にご連絡くださ…

宣教師の手を離れた南蛮系宇宙論のゆくえ:平岡隆二『南蛮系宇宙論の原典的研究』(2013)#2

とうとう明日に迫った『南蛮系宇宙論の原典的研究』出版記念イベントに向けて、平岡さんの本の後半部をまとめました。なお、第6章のみ別エントリ(コチラ)でまとめていますので、以下では4・5章と結論部を要約しております。 ちなみに、このイベントの模様…

幕末京都の医療環境:有坂道子「幕末京都における医家と医療」(2013)

有坂道子「幕末京都における医家と医療」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、179–200頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版発売日: 2013…

激動の織豊時代と治療対象の変化:田端泰子「曲直瀬玄朔とその患者たち」(2013)

田端泰子「曲直瀬玄朔とその患者たち」京都橘大学女性歴史文化研究所(編)『医療の社会史――生・老・病・死』思文閣出版、2013年、130–169頁。医療の社会史―生・老・病・死作者: 京都橘女子大学女性歴史文化研究所出版社/メーカー: 思文閣出版発売日: 2013/0…

「霊的武器」としての西洋宇宙論:平岡隆二『南蛮系宇宙論の原典的研究』(2013)#1

週末のイベントに向けて、平岡さんの本の前半部をまとめました。 平岡隆二『南蛮系宇宙論の原典的研究』花書院、2013年、1–102頁。 『南蛮系宇宙論の原典的研究』特設ページ:購入はコチラから ※ 残り部数わずか!Amazonなどでは販売されていないので注意! …

寛政改革における仁政イデオロギーの変化:宣芝秀「「御救」から「御備」へ」(2012)

宣芝秀「「御救」から「御備」へ――松平定信「寛政の改革」にみられる社会安定策」『日本思想史研究』44、2012年、29-47頁。 松平定信による享保の改革では、諸藩に対する囲籾令や七分積金令にみられるように、幕府によって各藩での備蓄が大いに奨励されるこ…

第三の極としてのアメリカ人医療宣教師:長門谷洋治「近代日本における外人宣教医の研究」(1970)

幕末から明治期における医療宣教師たちの活動をまとめた文献を読みました。当時やって来た医療宣教師たちの略歴や個々人に関する先行研究の紹介など、非常に有益なサーベイ論文であり、このトピックに関心をもつ者にとって必読文献でしょう。 長門谷洋治「近…

議論政治の誕生による公議輿論という帰結、暴力による排斥という帰結:朴薫「一九世紀前半日本における「議論政治」の形成とその意味」(2010)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、『講座 明治維新』より日本および朝鮮における議論政治という政治文化について論じた文献を読みました。 朴薫「7 一九世紀前半日本における「議論政治」の形成とその意味」明治維新学会(編)『講座 明治維新 …

負担増に抗い、自立する全国諸藩:岸本覚「安政・文久期の政治改革と諸藩」(2011)

とある近代日本史ゼミのアサインメントとして、『講座 明治維新』より幕末の政治史を論じた文献を読みました。 岸本覚「3 安政・文久期の政治改革と諸藩」明治維新学会(編)『講座 明治維新 2 幕末政治と社会変動』有志舎、2011年、85–115頁。講座 明治維…

とあるアメリカ人医療宣教師たちの履歴:佐伯理一郎「幕末及明治に於けるアメリカ醫師の活動に就いて」(1950)

佐伯理一郎「幕末及明治に於けるアメリカ醫師の活動に就いて」『基督教研究』24(1)、1950年、69–76頁。 http://jairo.nii.ac.jp/0027/00021615/en ※ 無料閲覧・DL可 幕末から明治初年に日本にやってきたアメリカ人医療宣教師たちの履歴を紹介したもの。昭和2…