k_医学史

20世紀における生と死の社会史:Nicolson ”Death and Birth”(2010)

前回授業のアサインメントとして読んだ文献は、18世紀から19世紀にかけての生・死の世俗化・科学化という主題について論じたものでしたが、今回のものは20世紀における死と生に関する言説をまとめた文献を読みました。20世紀における生と死についてまとめた…

享保改革と医薬政策の展開:大石学「日本近世国家の薬草政策」(1992)

今回も修論用のメモとして、公儀による医療政策について扱った文献を読みました。 大石学「日本近世国家の薬草政策――享保改革期を中心に」『歴史学研究』639、1992年、11-23頁。 幕藩制権力は自らの支配を安定・維持させるため、「公儀」としてさまざまな機…

19世紀における生と死の科学化と世俗化:Laqueur and Cody "Birth and death under the sign of Thomas Malthus"(2010)

とある授業のアサインメントとして、最近注目の『身体の文化史』シリーズから「生と死」の科学化・世俗化について取り扱った文献を読みました。本論考は医学史ではオーソドックスな「生と死」という主題を扱っていますが、そのことを宗教・文化から科学・政…

ノーベル賞推薦状にみる日本医学界の動向と科学観:岡本拓司「戦前期日本の医学界とノーベル生理学・医学賞」(2002)

ここ数日ノーベル賞をめぐって世間が賑わっておりますが、今回は戦前の日本におけるノーベル生理学・医学賞に関して検討した文献を読みました。ノーベル賞をめぐる書籍は一般書から専門書まで数多くありますが、岡本先生による一連のノーベル賞研究は基礎文…

目次:『日本医史学雑誌』58(3)、2012年9月

本日、『日本医史学雑誌』の最新号(58(3)、通巻1547号)が届きました。本号も原著論文7本、書評3本と盛りだくさんの内容になっております。また、今井正浩「<ひろば>ガレノスと古代ギリシア・ローマ医学史研究の現在」はこの道の研究者にとっては必読であ…

教育・統治・医療の場としての郷校:工藤航平「地域史からの「郷学」の再評価(2008)

工藤航平「地域史からの「郷学」の再評価――明治三年前橋藩領川島分界の川島書堂創設を事例に」『文書館紀要』21、2008年、77-105頁。 郷校は近世から近代初期にかけての教育機関の一つであるが、これは藩校とも寺子屋とも異なる教育機能を有していた。先行研…

文献表:藤本大士「近世後期の秋田藩における医療政策――公的医療の位置づけをめぐって」洋学史学会月例会(2012年10月7日、於:電気通信大学)

藤本大士「近世後期の秋田藩における医療政策――公的医療の位置づけをめぐって」洋学史学会月例会、電気通信大学、2012年10月7日。 昨日、洋学史学会月例会で発表させていただきました。内容は近世後期の秋田藩の鉱山における医療環境の整備について、秋田藩…

江戸における蘭方医の隆盛と近郊農村医療の変遷:長田直子「近世後期における患者の医師選択」(2004)

本日の洋学史学会月例会の予習もかねて、長田さんの優れた研究論文を読みました。ロイ・ポーター以降、海外では患者の視点からみた医学史研究が数多く提出されましたが、日本の医学史研究では残念ながらそういった視点にたった研究はまだ多くありません。そ…

漢方医の修行と幕末期医師の多様なライフコース:長田直子「幕末期在村における医師養成の実態」(2002)

明日(日付変わって今日)、「近世後期の秋田藩における医療政策」という題目で、洋学史学会月例会で発表させていただくのですが、近世日本の医療史を専攻する長田直子さんもご発表されます。そこで、長田さんが幕末期の医師養成の実態について論じた研究論…

公儀による医師統制の方法:上野周子「紀州藩の医療政策と地域社会」(2007)

上野周子「紀州藩の医療政策と地域社会」『三重大史学』7、2007年、1-20頁。 1980年以降、医療の社会史研究は飛躍的に進展した。とりわけ、在村レベルの蘭方医や地域における民衆への医療の実態がかなりの程度明らかにされた。一方、領主権力が医師に対して…

江戸時代の医学教育施設:山崎佐『各藩医学教育の展望』(1955)

江戸時代の医学教育史に関する基礎的な文献をチェックしました。限定刷であるため、図書館などでの所蔵は多くないかもしれませんが、医学教育の歴史を調べる上では最低限目を通しておくべき著書です。 山崎佐『各藩医学教育の展望』東京:国土社、1955年。各…

医の学統と公儀による統制:海原亮「江戸時代の医学教育」(2012)

江戸時代の医学教育に関する海原亮氏の優れた文献を読みました。このトピックは、かつて山崎佐『各藩医学教育の展望』(国土社、1955年、限定刷)において、先駆的かつ概略的な研究が提示されましたが、その後に続く研究成果はほとんど出ていないというのが…

女性高等教育の是非と医学言説の交錯(2):横山美和「19世紀後半アメリカにおける「女性」の構築と科学言説」(2007)

明日は駒場で生物学史研究会「ジェンダーと科学史」(http://goo.gl/BZSI6)が開催されますが、予習もかねて、報告者の横山美和さんの論考を読みました。 横山美和「19世紀後半アメリカにおける「女性」の構築と科学言説――E.クラークの女子高等教育論を中心…

近世後期における鉱山病対策:内藤正中「石見銀山の鉱山病対策」(1989)

内藤正中「石見銀山の鉱山病対策――宮太柱の『済生卑言』」『日本海地域史研究』9、1989年、263-284頁。 江戸時代の鉱山における労働環境は悲惨であった。鉱山内に立ちこめる有毒ガスによって、身体を壊さざるを得なかった鉱山労働者たちは、採掘をはじめてか…

近世の在村における医師のライフコース:速水融「人々の多彩な生涯」(2002)

10月に速水融『歴史人口学の世界』(岩波書店、1997年)が岩波現代文庫で復刊されるそうですね。速水氏は日本に歴史人口学を導入し、近世日本の社会史研究の水準を飛躍的に上げた方ですが、同時にその分析手法は医療の社会史研究にも大きな洞察を与えていま…

医師統制と郷校の役割をあわせもつ施設:下山佳那子「幕末期における郷校の設立」(2011)

「回顧と展望」『史学雑誌』(2012年6月号)にも紹介されていた江戸時代の医療の社会史に関する研究文献を読みました。近世日本の医療施設について考察するとき、それと藩との関係ばかりに注目するのではなく、民衆がどれほど設立にコミットしたかについての…

医療の正統性と幕府・学統・市場:海原亮「近世都市の「医療」環境と広小路空間」(2005)

江戸時代の医療の社会史を研究する上で、基礎的な文献である海原氏の論考を読みました。特に、公的医療との関連を意識してまとめました。修論用メモ。 海原亮「近世都市の「医療」環境と広小路空間」吉田伸之・長島弘明・伊藤毅(編)『江戸の広場』東京大学…

幕府の貧窮民対策としての社会事業:南和男「養生所の成立と実態」(1969)

小石川養生所に関する先駆的かつ基礎的な先行研究を読みました。こちらも修論用メモ。 南和男「第五章 養生所の成立と実態」『江戸の社会構造』塙書房、1969年、294-341頁。江戸の社会構造 (塙選書67)作者: 南和男出版社/メーカー: 塙書房発売日: 1969/08/24…

江戸期における医療教育施設と臨床施設の間の闘争:岩渕佑里子「寛政〜天保期の養生所政策と幕府医学館」(2000)

今回も修論のために幕府による公的な医療施設の歴史についての研究論文を読みました。 岩渕佑里子「寛政〜天保期の養生所政策と幕府医学館」『論集きんせい』22、2000年、40-61頁。 小石川養生所といえば、江戸時代に無料で貧民に医療を提供した施設として、…

3つの知の様式とその変位:Pickstone "Ways of knowing: an Introduction" (2000)

今年初めにおこなっていたJohn Pcikstone, Ways of Knowing (2000)の読書会のレジュメとして、その序論をまとめていましたが、ブログで紹介するのを忘れていたので、今更ながらアップしておきます。 John V. Pickstone, "1 Ways of knowing: an Introduction…

仁政イデオロギーと病気観の変遷:若尾政希「安藤昌益の病気論」(1992)

若尾政希「安藤昌益の病気論――身体・社会・自然」『歴史学研究』639、1992年、24-35頁。 近年、幕府・藩が果たした公共的な役割が注目を集めるようになり、むき出しの権力をふるうかつての権力者像に対して修正が迫られつつある。例えば、君主のもつ仁君に注…

メディアと精神科医の協働:佐藤雅浩「世紀転換期日本における精神医学的知識の通俗化過程」(2012)

明治〜昭和期の精神医学の社会史を専門とする佐藤雅浩さんの最新論文が出版されていましたので読みました。 佐藤雅浩「世紀転換期日本における精神医学的知識の通俗化過程――新聞メディアにおける精神疾患報道を対象として」『年報 科学・技術・社会』21、201…

労働者の病気と公共の安寧:アルレット・ファルジュ「労働現場の病いと医」(2011)〔1977〕

1980年代に出版された『アナール論文選』が、ここ数年「新版」として出版されています。今回は『アナール論文選 3 医と病い』(1984年)の中から、18世紀フランスの労働者の病気と国家・都市の公共性について論じたものを読みました。 ちなみに、2010年から…

女性高等教育の是非と医学言説の交錯:横山美和「19世紀後半アメリカにおける「月経」をめぐる論争の展開」(2012)

ジェンダーとの関連で科学史・医学史を論じた論文を読みました。なお、本論文の著者である横山さんには、近々、生物学史研究会で発表していただく予定です。こちらについては、詳細が決まり次第このブログでもご案内します。 開催が決定しました!詳細はコチ…

飢饉・疫病の発生と医療への期待:菊池勇夫「飢饉と疫病」(1994)

菊池勇夫『飢饉の社会史』(1994)の飢饉と医療の関係について論じた章を読みました。本書は江戸時代の飢饉が領主・民衆へと与えたインパクトと反応に注目し、「飢饉の社会史」という主題をはじめて検討した文献ですが、医療史とも関係が深い「第七章 飢饉と…

文献リスト:藤本大士「<研究動向>身体障害をめぐる医療の歴史研究」生物学史研究会・夏の学校(2012年6月24日、於:総合研究大学院大学)

【2013/4/6追記】 本報告をまとめたものが『生物学史研究』88号(2013年3月発行)に「<研究動向>身体障害をめぐる医療の歴史――医学史と障害学の対話」として所収されました。そちらもあわせてご覧頂けると幸いです。詳細は下記リンクを。 http://www.ns.ko…

要旨・文献リスト:藤本大士「近世後期の秋田院内銀山における医療環境」日本医史学会総会・学術大会(2012年6月16日、於:獨協医科大学)

先月おこなわれた日本医史学会での僕の発表要旨と文献表を掲載します。なお、以下に掲載する要旨は、『日本医史学雑誌』「第113回 日本医史学会 総会抄録号」58(2)、2012年、184頁に所収されているものと同じものです。また、参考文献は発表当日のレジュメに…

解剖学書における図像の役割: Kusukawa "The canon of the human body" (2012)

研究会用のレジュメとして、クスカワ『自然の書物を描く』の「第10章 人間の身体の正準」をまとめました。前章では『人体の構造に関する七つの本』より前に行われた議論が中心でしたが、本章はヴェサリウスの主著である『人体の構造に関する七つの本』を中心…

助産婦をめぐる国家と医師の思惑:Homei Aya ”Birth attendants in Meiji Japan” (2006)

Homei, Aya "Birth attendants in Meiji Japan: The rise of a medical birth model and the new division of labour," Social History of Medicine, 19(3), 2006: 407-424. 明治期における医療専門職の再編成はめまぐるしい。伝統的な漢方医は非正規の医療…

朝鮮医学の知識・もの・ひとの受容:田代和生「近世前期朝鮮医薬の受容と対馬藩」(1995)

とある授業のアサインメントとして、近世前期の日本における朝鮮医学の受容について書かれた論文を読みました。(都合により、授業には出れていないのですが 笑) 個人的には、倭館(朝鮮・釜山)の朝鮮人医師に、対馬藩の医師が医学稽古を受けに行っていた…