2013-01-01から1年間の記事一覧

藩による自然資源の利用と地域住民:町田哲「近世後期における徳島藩の御林と請負」(2013)

とある研究会の参考文献として、近世日本の環境史・地域史に関する文献を読みました。 町田哲「近世後期における徳島藩の御林と請負――那賀川中流域を事例に」『鳴門史学』26、2013年、49–83頁。 昨今の環境史的アプローチの広がりもあり、近世日本史研究では…

幕末における庶民から為政者への情報提供:守友隆「幕末期の国内政治情報と北部九州」(2010)

とある研究会の参考文献として、近世日本の政治史に関する文献を読みました。 守友隆「幕末期の国内政治情報と北部九州――筑前国黒崎桜屋・豊前国小倉村屋の「注進」行為について」『交通史研究』72、2010年、25–53頁。 近世期に庶民がおこなっていた情報活動…

18世紀初頭における唐船対策の転換点:松尾晋一「幕府対外政策における「唐人」「唐船」問題の推移」(2010)

とある研究会の参考文献として、近世日本の対外政策に関する文献を読みました。 松尾晋一「第7章 幕府対外政策における「唐人」「唐船」問題の推移――「宥和」政策から「強硬」政策への転換過程とその論理」『江戸幕府の対外政策と沿岸警備』校倉書房、2010年…

「医疾令」という医療制度下における古代日本の医療水準:丸山裕美子『日本古代の医療制度』(1998)

丸山裕美子「終章 『医心方』の世界へ――天平9年の典薬寮勘文と太政官符」『日本古代の医療制度』名著刊行会、1998年。日本古代の医療制度 (歴史学叢書)作者: 丸山裕美子出版社/メーカー: 名著刊行会発売日: 1998/05/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商…

宮城資料ネット被災資料レスキューおよび亘理町立郷土資料館など巡検

2013/12/02追記 本資料調査の報告が『宮城資料ネット・ニュース』に掲載されました。この場を借りて、調査のご支援をいただいた佐藤賢一先生(電気通信大学)に御礼申し上げます。 藤本大士「科学史を専攻する大学院生からみた被災資料レスキュー」『宮城資…

慶長16年の地震による被害範囲と諸藩の復興事業:蝦名裕一「慶長奥州地震津波の歴史学的分析」(2013)

著者より抜刷をいただきました。ありがとうございます。以下、まとめを。 蝦名裕一「慶長奥州地震津波の歴史学的分析」『宮城考古学』15、2013年、1–17頁。 本論文は、「慶長三陸地震」として知られている慶長16(1611)年の地震について、後年の編纂物など…

牛痘法前後における村の疱瘡対策の変化:東昇「近世肥後国天草における疱瘡対策」(2009)

東昇「近世肥後国天草における疱瘡対策――山小屋と他国養生」『京都府立大学学術報告(人文)』61、2009年、143–160年。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110008138630 ※ 上記リンクより無料閲覧・DL可能 これまで疱瘡に注目した歴史研究は、1849(嘉永2)年に牛痘…

疱瘡患者に対する宗教・医療行為:佐藤文子「近世都市生活における疱瘡神まつり」(2000)

佐藤文子「近世都市生活における疱瘡神まつり――「田中兼頼日記」を素材として」『史窓』57、2000年、119–130頁。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000413826 ※ 上記リンクより無料閲覧・DL可能 宝暦4–5(1754–1755)年に京都で疱瘡が流行した。一ノ宮下鴨神社の…

江戸時代の佐渡における医療環境:田中圭一『病いの世相史』(2003)

田中圭一『病いの世相史――江戸の医療事情』ちくま新書、2003年。病いの世相史―江戸の医療事情作者: 田中圭一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2003/11メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る 本書の著者は、佐渡金銀山の歴史など、主として新潟を…

蝦夷地への感染症襲来とアイヌ医療文化の取り込み:ウォーカー『蝦夷地の征服 1590-1800』(2007)

ブレット・ウォーカー「第七章 蝦夷地の伝染病・医療と変わりゆく生態系」『蝦夷地の征服 1590-1800――日本の領土拡張にみる生態学と文化』秋月俊幸訳、北海道大学出版会、2007年、227–261頁。蝦夷地の征服1590‐1800―日本の領土拡張にみる生態学と文化作者: …

佐賀医学史研究会 エクスカーション(2013年9月16日)

前日のエクスカーションは洋学史学会が主催するものでしたが、この日は佐賀医学史研究会主催のエクスカーションに参加してきました。今回、訪れた資料館・史跡は以下の通りです。 ・三浦梅園資料館(大分県国東市安岐町) HP ・富貴寺大堂(大分県豊後高田市…

洋学史学会・佐賀大会 エクスカーション(2013年9月15日)

洋学史学会・佐賀大会のエクスカーションとして、以下の資料館を見学して参りました。 ・松浦史料博物館(長崎県平戸市) HP ・平戸オランダ商館(長崎県平戸市) HP ・佐賀県立九州陶磁文化館(佐賀県有田町) HP ・佐野常民記念館(佐賀県佐賀市) HP 学会…

情報化・目録化の整備による博物館へのアクセス保証:水嶋英治「歴史博物館の存在証明」(2007)

AC修了論文用参考文献のメモです。 水嶋英治「歴史博物館の存在証明――欧米に学ぶ管理運営・保存哲学」『歴史評論』683、2007年、19–31頁。 本論文では、今後の博物館やアーカイブズのあるべき姿として、それへのアクセシビリティを保証することに重きが置か…

歴史資料を現代の政策に役立てる?:Johnson & Williams "Using Archives to Inform Contemporary Policy Debates"(2011)

AC修了論文用参考文献のメモです。 Valerie Johnson and Caroline Williams, "Using Archives to Inform Contemporary Policy Debates: History into Policy?" Journal of the Society of Archivists, 32(1), 2011, pp. 287-303. http://www.tandfonline.com…

医学図書館の患者への公開とEBMという考えの浸透:諏訪部直子「医学情報専門家としての医学図書館員の新しい役割」(2005)

AC修了論文用参考文献のメモです。 諏訪部直子「医学情報専門家としての医学図書館員の新しい役割」『情報の科学と技術』55(9)、2005年、369–374頁。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110002829880 ※ 無料閲覧・DL可能 かつての医学図書館は医療専門家に対してのみ…

1960年代アメリカにおける医学史アーカイブズの状況:Blake "Medical Records and History"(1964)

AC修了論文用参考文献のメモです。 John B. Blake "Medical Records and History," American Archivist, 27(2), 1964, pp. 229-235. http://archivists.metapress.com/content/d54gn70748865222/ ※ 無料閲覧・DL可能 本論文は、1963年10月3日に開催された、…

地域の情報センターと生涯学習施設としての公文書館:井上麻依子「市民に向けた文書館普及活動の提案(2007)

アーカイブズ・カレッジの修了論文を執筆していくにあたって、過去の受講生による修了論文で、それがのちに学術誌に掲載されているものを読んでいます。本論文は2005(平成17)年度の修了論文を元にして書かれたものだそうです。こちらも、AC修了論文用参考…

美術館アーカイブズにおける展覧会記録と作品記録の保存・整理:川口雅子「美術館アーカイブズが守るべき記録とは何か」(2012)

アーカイブズ・カレッジ受講のまっただ中ですが、そろそろ修了論文を執筆していかないといけないので、過去の受講生による修了論文で、それがのちに学術誌に掲載されているものを読んでいます。本論文は、国立西洋美術館・情報資料室の川口さんによるもので…

医学史におけるオーラル・ヒストリー研究のサーヴェイ:Tomes "Oral history and the history of medicine"(1991)

Nancy Tomes, "Oral history and the history of medicine," The Journal of American history, 78(2), 1991, pp. 607-617. 医学史という分野におけるオーラル・ヒストリー(以下、OH)は、Peter Olchという先駆者により1960年代より研究が進められてきた。…

科学史におけるオーラル・ヒストリー研究のサーヴェイ:Doel "Oral History of American Science"(2003)

Ronald E. Doel, "Oral History of American Science: A Forty-year Review," History of Science, 41, 2003, pp. 349-378. http://adsabs.harvard.edu/full/2003HisSc..41..349D ※ 上記リンクから無料閲覧・DL可能 科学史という分野では、1950年代後半より…

鉱石をめぐるグローバル・ヒストリー:竹田和夫(編)『歴史のなかの金・銀・銅』(2013)

寄稿者の一人である仲野義文氏(石見銀山資料館・館長)より御恵投いただきました。ありがとうございます。以下、簡単に紹介を。 竹田和夫(編)『歴史のなかの金・銀・銅――鉱山文化の所産』勉誠出版、2013年。歴史のなかの金・銀・銅 -鉱山文化の所産- (ア…

中国地方の歴史を広く知ってもらうために:公益社団法人中国地方総合研究センター(編)『「海」の交流』(2012)

寄稿者の一人である仲野義文氏(石見銀山資料館・館長)より御恵投いただきました。ありがとうございます。以下、簡単に紹介を。 公益社団法人中国地方総合研究センター(編)『「海」の交流――古代から近世までの瀬戸内海・日本海』中国地方総合研究センター…

オーラル・ヒストリーが明らかにする科学コミュニティのみえざるメンバーたち:Chowdhury "A Historian among Scientists"(2013)

8月23日(金)に迫ったIsis Focus読書会に向けて、自分の担当箇所のレジュメをつくりました。今回の特集は「科学、歴史、そして近代インド」です。なお、読書会はどなたでも、(Google+を通じて)どこからでも参加可能ですので、参加希望の方は藤本にまでお…

世界記憶遺産・山本作兵衛の記録画と筑豊炭坑の歴史:田川市石炭・歴史博物館

実家に帰省しているので、筑豊炭田にまつわる博物館・美術館に行ってきました。その第三弾は、福岡県田川市にある「田川市石炭・歴史博物館」です。 ・田川市石炭・歴史博物館 HP:http://www.joho.tagawa.fukuoka.jp/sekitan/ 住所:福岡県田川市大字伊田27…

千田梅二による筑豊炭坑の版画:田川市美術館

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実家に帰省しているので、筑豊炭田にまつわる博物館・美術館に行ってきました。その第二弾は、福岡県田川市にある「田川市美術館」です。 ・田川市美術館 HP:http://www.joho.tagawa.fukuoka.jp/bijyutu/ 住所:福岡県田川市新町11-56 最寄り駅:JR田川後藤…

筑豊石炭鉱業組合・直方会議所や多数の炭坑画:直方市石炭記念館

実家に帰省しているので、筑豊炭田にまつわる博物館・美術館に行ってきました。その第一弾は、福岡県直方市にある「直方市石炭記念館」です。 ・直方市石炭記念館 HP:http://www.yumenity.jp/sekitan/sekitan.html 住所:福岡県直方市大字直方692-4 最寄り…

漁業からみる帝国日本の内と外/生物学史研究会(2013年8月10日、於:東京大学駒場キャンパス)

「漁業からみる帝国日本の内と外」というテーマで生物学史研究会を開催いたしました。一参加者としてその報告のメモを。 漁業からみる帝国日本の内と外/生物学史研究会(2013年8月10日、於:東京大学駒場キャンパス) http://researchmap.jp/evzwufhaa-66/#…

帝国と植民地における順化への熱狂:Osborne "Acclimatizing the world"(2000)

今週末に迫った生物学史研究会「漁業からみる帝国日本の内と外」に向けて、関連する文献を読みました。なお、研究会はどなたでも無料で参加できますので、お気軽にお越し下さい。 ・8月10日(土)「漁業からみる帝国日本の内と外」生物学史研究会 Michael A.…

土地を所有しない身分集団・生業集団への注目:横田冬彦「生業論から見た日本近世史」(2008)

引き続き、とある勉強会で読んでいる近世日本の環境史に関する文献をまとめました。こちらも第一回目の勉強会のアサインメントです。なお、本論文では「環境史」と呼びうる事例(山村や漁村の生業に関する研究)が紹介されていますが、それほど「環境史」と…

人間史と自然史の相互作用への着目:水本邦彦『環境の日本史 4 人々の営みと近世の自然』(2013)

とある勉強会で、近世日本の環境史に関する文献を読んでいます。第一回目は、吉川弘文館から全五巻本として刊行された『環境の日本史』シリーズから、近世史に関連した第四巻の編者の総論などを読みました。 水本邦彦「人々の営みと近世の自然――総論」、「1 …